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アマゾン ウェブ サービス ジャパンとセールスフォース・ドットコムは10月12日、クラウドサービスの提供における協力体制を強化し、PaaS領域における共同展開を進めると発表した。

具体的には、リファレンスアーキテクチャを開発する両社エンジニアの混成チームによって運営される「クラウドデザインセンター(CDC)」を設置するほか、先進事例をベストプラクティスとして、両社のパートナーエコシステムに展開。さらに、AWSをプラットフォームとするHerokuを軸とした営業協力や、共同マーケティングを実施するという。

セールスフォース・ドットコム マーケティング本部プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代茂樹氏は、今回の協業について以下のように語った。

「フォレスターリサーチの調べによると、2020年のクラウドコンピューティング市場は2360億ドルに達し、クラウドはIT業界において一番の成長分野となっている。なかでも、今後はPaaSがより重要な分野になってくる。SaaSを提供するセールスフォース・ドットコムと、IaaSを提供するアマゾンウェブサービスジャパンが、PaaSの領域において新たな価値を提供するのが、今回の協業となる。その背景には、セールスフォース・ドットコムがHeroku Enterpriseのサービスや、新たに発表した人工知能のSalesforce Einstein(セールスフォース アインシュタイン)をAWSの上で提供していることなどがある。また、相互のソリューションを利用する顧客が増加しているという実態もある。こうしたことをわかりやすい形でメッセージとして発信できるようになる。セールスフォース・ドットコムがフロントに立ち、AWSがデータに対する冗長性を提供するといった環境を実現でき、この組み合わせが、顧客にとって理想的の形を提供できることにつながる」

また、セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 アライアンス本部 本部長の手島主税氏は、「今回の提携強化は日本だけのものだが、パートナービジネスが先行している日本においては適したものだという背景もある。米国本社も今回の提携強化をポジティブにとらえている。グローバルでも今回の発表に合わせて、提携強化が図られるだろう。今回の発表はあくまでも序章である」と語った。

クラウドデザインセンター(CDC)は2016年10月13日から活動を始める。両社から5人ずつ、合計10人体制でスタート、アーキテクティング支援、リファレンスアーキテクチャーの作成と共有、パートナーソリューションの拡充に取り組む。

アマゾンウェブサービスジャパン パートナーアライアンス本部 本部長の今野芳弘氏は「両社のエキスパートエンジニアの混成チームにより、サービスを提供する。AWSはテスト環境の使用料の提供、国内外の事例の蓄積を行うとともに、これらを活用した提案も行っていく。さらに、両社のエンジニアにより、パートナー支援を強化することができる」と述べた。

ベストプラクティスのパートナーエコシステムへの展開では、AWSのAPNコンサルティングパートナーおよびAPNテクノロジーパートナーと、セールスフォース・ドットコムのコンサルティングパートナー、ISV/OEMパートナー、リセラー、定着化支援パートナー、システムインテグレーターに対し、IaaS、PaaS、SaaS製品のスキルナレッジを提供。

「パートナー同士の新たな接点を創出するとともに、双方の製品を活用するための高いスキルを持ったパートナーを通じて、顧客のビジョンの実現を支援していくことになる」(セールスフォース・ドットコム アライアンス本部本部長の手島主税常務執行役員)とした。

また、どちらかの環境は知っているといったパートナーに対し、それぞれの製品、サービスを紹介するだけでなく、セミナーなどのスキル向上に向けた支援も行っていく。両社のサービスを提供するパートナーや顧客に対して、技術面からも、サービス面からも支援していくことになる」(セールスフォース・ドットコム マーケティング本部プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代茂樹氏)とした。

なお、今回の提携に伴って、新たなパートナー制度や認定制度は作らず、既存のパートナープログラムを活用することになるという。

営業およびマーケティングにおける協力に関しては、Heroku Enterpriseを軸に展開する一方、IoTやビッグデータなどのシステム案件によっては、AWSとの組み合わせでセールスフォース・ドットコムの数々のソリューションも提供していくことになる。

「さらに、日本ではクラウドのメリットが訴求しきれていないこと、AWSとセールスフォース・ドットコムの連携メリットが訴求しきれていないことから、共同マーケティングを通じて訴求。顧客の開発スピードの向上、競争力強化につなげたい」(アマゾンウェブサービスジャパン パートナーアライアンス本部の今野芳弘本部長)とした。

会見では、両社のサービスを活用している事例として、酪農クラウドモデルに取り組んでいるデザミスを紹介。セールスフォース・ドットコムを活用したSaaSによる家畜の行動特性と飼育情報の活用、両社のサービスを組み合わせたPaaSによる家畜のマスター情報の管理、AWSのサービスを活用したIaaSによる家畜の生体・機器情報の活用によって、酪農分野におけるクラウド導入を実現。これらを約3カ月間で構築したという。

手島氏は、「クラウド活用は業務アプリケーションからIoTなどのニーズにも広がっており、その中で正しくクラウドを理解して活用してもらいたいと考えている。また、BtoBとBtoCを統合したサービスモデルをいち早く実現したい、これを具現化するパートナーを紹介してほしいという声もある。さらに、顧客が独自性を持った付加価値を提供したい場合に、独自性を持ったアプリをいち早く開発できるPaaSを活用することで、ユーザーエクスペリエンスを拡大したいという声もあがっている。顧客に対して、クラウドサービスを多面的に活用してもらうには、我々自身の接点を強化することで大切である。今回の協業によって、特徴がある異なるクラウド技術をつなぐアーキテクトの強化、両社のパートナーが連携した新たなクラウドエコシステムの拡大、IaaSとSaaSをつなぐテクノロジーの推進を行う」などと述べた。

また、今野氏は「AWSは、今年10年目を迎えるが、ここにきて、基幹システムをAWSに置き換えたい、IoTによる先進的な活用をしたいという要望が増加している。また、パートナーからも自社に合致した提案が欲しいという要望がある。そして、クラウドを活用して、もっとスピードを上げたい、ビジネスの拡大に活用したいという声が上がっている。さらには、日本リージョンだけで利用したいといった要望もある。こうした課題を解決できる協業になる」と位置づけた。

AWSとセールスフォース・ドットコムの両社の歩み寄りは、一気に進んでいる。また、「今回の提携は、序章にすぎない」と発言していることからも、今後の提携強化がさらに進展することが明確になっている。

日本で先行した提携となったことも特筆されるものであり、両社の提携の成功事例がグローバルに波及していくという仕組みにも注目しておきたい。

(大河原克行)