photo Kremlin.ru(CC BY 4.0)

写真拡大

 ロシアはシリア紛争での優位に勢いをつけて、外国に軍事基地の建設を積極的に進める方針を打ち出した。

 ソ連の時代から軍事基地としてシリアにもっていたタルトゥース港を常設軍事基地にすること以外に、ソ連の時代に保有していた外国の軍事基地の復活なども計画しているという。その建設計画にあがっているのは<エジプト、ソマリア、イエメン、エチオピア、ギネア、リビア、チュニジア、アンゴラ、そしてキューバとベトナムなど>である。(参照:『El Confidencial』)

 タルトゥース港は1977年からソ連の海軍が利用し始めた基地で、ロシアが地中海に面して所有している唯一の基地である。ロシアがシリア紛争でアサド政権を見捨てない理由の一つが、この軍事基地があるからである。地政学的にロシアがNATO軍の動きを監視する意味で重要な拠点である。

 次にエジプト、キューバ、ベトナムでの基地建設に関係した背景について触れて見よう。

◆「地中海を抑える拠点」としてのエジプト

 エジプトについては、ナセル大統領の政権時のエジプトはソ連にとって中東における最も重要な国となっていた。しかし、ナセル大統領が心臓発作で亡くなり、軍人サダトが大統領に就任すると、当初は親ソを維持していたが、次第に方向転換を図り、嘗ての敵であったイスラエルと和平協定を結ぶまでになった。その影響でエジプトから多くのソ連の軍人が退去せざりを得なくなり、その多くがシリアに移動したのである。この外交の転換には、エジプトの財政危機とイスラエルとの戦争への疲れ、そして米国からの資金と武器などの支援を受ける為の条件としてイスラエルとの和平合意が条件となっていたという背景があった。

 それ以後のエジプトは、ムバラク大統領の政権まで親米路線の外交を展開して行くのである。しかし、2011年にアラブの春が起きて、ムスリム同胞団に支援されたムルシーが大統領になると、米国はエジプトの民主化への動きに賛成して、オバマ政権はムルシー大統領を支援する路線を取った。そのため、ムルシー大統領を支えるムスリム同胞団の発展を望まないサウジアラビアなどが中心になって、シシ大統領を誕生させた。

◆オバマの対エジプト外交が虎の子を起こす

 これに対し、米国は民主的に選ばれたムルシー大統領を軍事クーデターによって失脚させたとして、シシ大統領への支援を控え、軍事支援金の借款を凍結し、ヘリコプターと戦闘機の引き渡しも一時的に中断した。シシ大統領とオバマ政権のぎくしゃくした関係が続いていたその隙間の2013年11月に、プーチン大統領はラブロフ外相とショイグ国防相をエジプトに送り、ナセル時代に存在していた両国の関係を復活させるべく、シシ大統領の説得に努めた。そして、2014年2月には、シシ大統領がロシアを訪問して兵器を購入したのである。2015年2月にはプーチン大統領がエジプトへの訪問を実現させた。ここに、エジプトとロシアの関係が復活したのである。それは裏を返して見れば、オバマ外交の大失敗であったといえる。

 そして、ロシアはこの関係を利用して<エジプトのシディ・バラニに軍事基地を建設する>交渉を現在進めているという。<2019年にはロシア空軍などが駐留して基地が機能する>ようになる予定だとしている。(参照:『HispanTV』)

 ロシアはシリアのタルトゥースそしてエジプトのシディ・バラニとの二つの基地をベースにして、地中海そして紅海に繋がる地域をコントロール下に置く計画なのである。

 もちろん、ここにも障壁はある。エジプトのロシアへの急接近を望まないサウジアラビアがエジプトへの原油の供給を中断したのである。(参照:『HispanTV』)