HiGH&LOW THE MOVIE |久保茂昭監督が語る制作秘話

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壮大なプロジェクト『HiGH&LOW』を具現化した男の想いとは?久保茂昭監督が語る制作秘話。

※インタヴューは2016年6月に実施

『HiGH&LOW THE MOVIE』のメガホンを握るのはEXILE、三代目J Soul Brothers、E-girlsなどのMVを2009年から手掛ける久保茂昭。HIRO率いるアーティスト集団は曲を作り、ライヴをやるだけではなく、誰も見たことのない新しいカルチャーを作るという領域に入っている。その壮大なプロジェクトである『HiGH&LOW』を具現化した監督の想いとは?

―『HiGH&LOW THE MOVIE』は、単なる映画ではなくて、映像で見るサントラのような側面があるように思います。映像を見ているだけで音楽が浮かんでくるし、音楽を聴いているだけで映像が浮かんでくるという不思議な仕掛けになっている。そんな『HiGH&LOW』ですが、久保監督はこのプロジェクトにどのようにして参加することになったのですか?

ある映画会社のプロデューサーから、こんな映画を撮りたいとHIROさんにプレゼンしてくれないかと言われて。それでHIROさんのもとを訪ねたんですが、逆に実はこういうプロジェクトを考えているから、監督にはこっちの方をガチでやって欲しいと提案されまして。その後、HITROさんから飲みの席に呼ばれて、具体的な話をされたんです。


インタヴューに答える久保茂昭監督

―HIROさんからの逆プレゼンでスタートしたんですね。そこからどんな風に話が進んでいったんでしょうか?

最初はキャラクター作りですね。自分を活かせるキャラクターを外から与えられるんじゃなくて、自分から発信する。そういう強さを見せていきたいということをHIROさんも言っていて。そこで、キャラクターから始まる物語を作ろうということになりました。それから、LDHのメンバーたちを活かせるようなキャラクターをどんどん作り上げていったんです。コイツはこういう服着るよな、こういう音楽聴くよな、だったらこういう敵対するグループがいるだろう、みたいな流れで、キャラクターを軸としながら街や世界観ができあがっていきました。

―そのキャラクター作りの方法をもっと具体的に教えてもらえますか?

例えば、TAKAHIROの場合は、実際に身体能力がすごく高いところとか、お喋りでいつも下ネタばっかり言ってるところとか(笑)。そういうリアルな要素が活きるキャラだったらいいよねという感じで。さらに、登坂(広臣)と兄弟だったりしたらヤバくね? みたいな具合です。あと、ガンちゃん(岩田剛典)を今までにないキャラクターで表現したいというのがありました。そこで、無口で冷徹なんだけど深さがあって、それでいて彼の本来の持ち味を掘り下げられる、今まで見たことのないキャラクターを設定したんです。鈴木(伸之)の場合は、身体がデカくて、熱い言葉が多いので、熱のある真っ直ぐなキャラクターにしたいとか。そんな風に、しっかりと人物の見えるキャラクターを作っていきたかったんです。


©2016「HiGH&LOW」製作委員会

―キャラクターを作っていくうえで、役者とも対話したんでしょうか?

もちろんいろいろと本人たちと話し合いながらキャラクターを作っていきました。登場人物の相関図をまとめて、こんな場所で、こんなバイクに乗ってて、こういうファッションで、こういう音楽聴いてて、という資料をすべてそろえて、それに基づいて話をしました。どういう音楽を聴いてるか、どんな女が好きか、そういうことを役者たち自身からもヒアリングして、キャラクターに反映させていきましたね。

―そういう作り方って普通はしないですよね?

そうですね。『HiGH&LOW』って、演じてる側が自分を掘り下げていけるプロジェクトだと思うし、それって新しいストリートな考え方かなと思うんです。ストリートで歌ったり、踊ったりすることで、自分のキャラクターを深めていく。そして、そこから自分のストーリーが広がっていく。そんな広がりを持ったプロジェクトが、『HiGH&LOW』なんだということをすごく感じました。

―『HiGH&LOW』を観ていて、登場人物が勝手に喋り出している印象を受けました。完全に作られたキャラクターではなく、本人と一緒に元々持っている要素を活かして作り上げたキャラクターだからこそ、自発的に動き出しているような。

そう言っていただけるとありがたいです。本当にキャラクターが自発的に動き出していったんです。セリフはこう言いたいとか、こう動きたいとか。各グループに対しても、演出はさほどしなかった。自分たちで勝手にグループになっていたんです。


©2016「HiGH&LOW」製作委員会

―本人とキャラクターのリンクもすごいですけど、音楽とのリンクもすごいですよね。その辺はどのように意識して撮られたんでしょうか?

技術的に言うと、演技に音をはめるんじゃなくて、音に演技をはめるという編集をしていきました。音を感じるカット割りとかカメラワークを駆使して、サビで一番気持ちいい瞬間が来る。そういうことを狙って作りましたね。それとは別に、『HiGH&LOW』はまずミュージックビデオからスタートしているので、役者たちが音楽を背負っている人間だという自負を持って演技に入っていけたということも、映像と音楽をリンクさせるという点では大きな意味があったかもしれません。

―しかし、音に演技をはめるってかなり大変な作業じゃないですか?

もちろん時間の制約があって、カットしなきゃいけない場面もありました。演技中心だったら間を持たせるシーンでも、音楽を感じさせるために、ここで山を作ってこのセリフはカットしようとか。

―音楽だけでなく、もちろん映像にこだわり抜いていることもすごく伝わってきます。ロケーションや小道具なんかも徹底してますね。

例えば、山王商店街なんかも、ハーレーが似合う場所じゃなきゃダメだったんです。だから、イメージに近い商店街を探して、そこの日本語の看板を全部英語に置き換えたりして。そのうえで、この近くにきっと米軍基地があって、そこから音楽やカルチャーが街に流れてきて、だからハーレーに自然に乗るような男たちになっている、そういういうところで生きてきたと思って欲しい、ということを役者に伝えました。また、MIGHTY WARRIORSのコンテナ街は、200メートルくらいにわたって全部グラフィティを描いたんです。音楽でのし上がるという夢を背負っている人間たちが生きている空間がここなんだと。雨宮兄弟のバイクなんかは、ジたこともないすげぇ強い兄弟が乗ってるんだから、見たこともないバイクにしたいよねイ箸いΥ兇犬如▲リジナルで製作しています。登場人物がリアルにその場に存在して欲しいという想いがあったので、セットや小道具は予算の許す限り作らせてもらいました。


©2016「HiGH&LOW」製作委員会

―ディテールに神が宿るとはいいますけど、そこまでやってるとは! そこまで作り込むと、これって現実に起きてるんじゃないか、みたいな鳥肌の立つような瞬間もあったんじゃないですか?

ずっと曲を聴いて、キャラ作りをして、衣装を合わせて、空間を作り上げてきましたから。どのグループも、その場にそろった瞬間は鳥肌ものでしたね。RUDE BOYS でいえば、窪田(正孝)くんが高い所に立って空気を感じてるシーン見た時に、イ△◆▲筌戮─RUDE BOYS できたイ澆燭い覆海箸魎兇犬燭蝓そういう感覚になれるのも、このプロジェクトならではだと思います。

―監督はタイトルの『HiGH&LOW』という言葉をどう解釈しますか?

セリフの中でそれを言わせようかどうか迷っていたんですけど、『HiGH&LOW』って、単に勝ち負けとか上下ということじゃなくて、勝負することに意味があるということだと思うんです。上でも下でもなくて、それを見極めるために勝負することの大事さがあるんじゃないでしょうか。

―LDHが生み出すものを、カメラを通して客観的に眺めてきて感じるものが監督の中にはあるんじゃないでしょうか? これだけ時代を揺るがしているファクター、パワーというものが。

やっぱり普通には理解しがたいチャレンジをしてきているにもかかわらず、理解を得ているのがLDHの人たちだなと思います。音楽から出てくる理解しがたい可能性を目に見える形で表現している。HIROさんを中心としたそういう流れが、『HiGH&LOW』のような音楽表現を通して新しい次元に到達するんじゃないかと感じています。本当はそんな流れを客観的に見て楽しんでいたかったんですけど、実際は中に入って四苦八苦している(笑)。でも可能性を広げていける人たちと運良く出会えてしまったからには、全力で作品を作っていきたいと思っています。

―理解されにくくても、新しい実験を形にして、新しい世代にバトンを渡していかないといけないですからね。そうやって、音楽の可能性をもっと広げていかないと音楽に対して失礼なんじゃないかなと思うんです。

音楽って特に理解しがたいじゃないですか、自分が好きなもの以外は受け入れられにくい。だけど、HIROさんは、見たことないものを見せたい、驚かせたいという強い気持ちで動いていて、それがどんどん大きくなってきている。人を楽しませることに対して妥協がないんです。映画のこともすごく勉強しているし。噂では映画を8倍速で観ているとか、3倍速で2つの映画を同時に観ているなんて話も聞きます(笑)

―それはすごいですね(笑)。ところで、映画の後にはライヴツアーも控えていますが?

ドラマと映画で作り上げてきたキャラクターたちがライヴをすることで、さらに触発を繰り返す。そして、このプロジェクトはずっと回り続ける。10年後、どうなっているか楽しみです。実は、『HiGH&LOW』って、シーズン1とシーズン2があって映画があるんですけど、そのストーリーって本当はシーズン1の中の5話くらいでやろうとしてたことだったんです。でも、全員参加という体制やキャラクターの作り込みによって、それじゃ語りきれないということになった。それで、シーズン2を作ったんだけど、それでも語りきれないから映画にした。普通だったら実現できないし、客観的に見てもすごいことだと思います。キャラを掘り下げていくためにドラマの話数が増えて、映画まで実現できるんですから。こうなると、もう僕のライフワークになってしまいます(笑)。この規模のエンタテインメントが今、日本で繰り広げられている。そのことをもっと多くの人に知って欲しいですね。

ローリングストーン日本版スペシャルエディション
「完全保存版『HiGH&LOW』の世界」~EXILE TRIBEの飽くなき挑戦~ 掲載 

SHIGEAKI KUBO
久保茂昭 1973年、東京都生まれ。EXILE、三代目JSoul Brothers、E-girls をはじめ、安室奈美恵、倖田來未、YUI などのMV を多数手がける映像ディレクター。VMAJ においてデ間最優秀ビデオ賞イ2010年「ふたつの唇」、 12年「Rising Sun」、13年「24karats TRIBE OF GOLD」、14年「EXILE PRIDE 〜こんな世界を愛するため〜」、 15年「Eeny,meeny,miny,moe!」で受賞。邦楽に関しては5 連続受賞となり、異例の快挙となる。今作が、劇映画初監督である。