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●世界中から半導体関連の洗浄技術者が集結
半導体ナノテクノロジー研究機関であるベルギーimec主催の「第13回半導体表面の超クリーン化プロセス国際会議(The 13th International Symposium on Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces:UCPSS2016)」が、去る9月12日〜14日、オランダ国境に近いベルギー クノック(Knokke)で開催され、ますます脆弱で複雑になる半導体デバイスの超微細構造や新材料の洗浄・乾燥に関して活発に議論が交わされた。

今回の国際会議は、街の中心にある公営カジノ「Grand Casino Knokke」(図1、2)内の多目的ホール(図3)にて開催された。

○世界中から約200名の洗浄研究者が結集

UCPSSは、米国電気化学会(Electrochemical Society:ECS)が隔年に米国で開催している半導体洗浄技術国際シンポジウム(International Symposium on Semiconductor Cleaning Science and Technology:SCST)と交互に欧州で隔年開催されているシンポジウムである。

第1回会議が1992年にベルギー ルーベンで開催されて以来、24年にわたり偶数年にベルギー国内各地で開催され、2016年で13回目を迎えた。今回の会議には世界中から212名の洗浄および関連技術の研究者や製造装置・材料メーカーの関係者が一堂に会し、活発な議論が行われた。会議は表1に示すような12セッションで構成され、オーラル講演44件(招待講演6件を含む)、ポスター発表25件(図4)の合計69件の発表が行われた。

●日本からの論文発表は7件
○日本からの発表は前回と同じ7件

UCPSS2016における国別発表件数(登壇者の所属組織の所在国で分類)は、いつもながら米国が15件でトップ、ベルギーが12件、フランス11件、ドイツ9件, 日本7件、韓国5件、台湾4件、中国とイタリアが各2件と続く。ほかに、オーストリアとシンガポールが各1件となっている。

日本は18件(2008年)、9件(2010年)と 件数を減らしてきたが、2012年以降7件に留まっている。今回、日本からの発表7件を表2に示す。日本人の発表としては、このほか海外企業(米国Lam Research)から「枚葉洗浄における帯電の制御」と題する報告が1件あった。

日本の半導体メーカーの中で、唯一、ソニーは毎回コンスタントに複数件発表しているが、以前は常連だった東芝が消えてしまったのは残念である。アカデミアでは、静岡大学が健闘しており、毎回発表している。以前、クリーン化分野で活躍していた東北大学もここ数年発表がない。スクリーンセミコンダクタソリューションズや栗田工業からの発表は、両社からそれぞれimecへの出向社員によるもので、実質的には、imec主導の研究である。東京エレクトロンは、米国法人からは発表があったが、日本からは発表がなかった。世界半導体洗浄装置業界で、日本勢は高いマーケットシェアを誇っているにもかかわらず、実質的には独自の発表がまったくないというのはさびしい限りだ。

●最多発表者はimec
○発表最多のimecは世界中と協業

研究機関別発表件数(登壇者の所属組織で分類)では、地元のimecがいつもながらトップで11件だったが、今回はSTMicroelectronicsが9件(フランス7件、イタリア2件)と奮闘、米国に本拠を置くEntegrisが世界規模の活躍で5件(台湾3件、ドイツ2件、米国1件)発表したことは特筆に値する。Samsung Electronics(韓国)とGLOBALFOUNDRIES(米国)が各3件、静岡大学、ソニー、スクリーン、中国SMIC、米Lam Research、グルノーブル・アルプス大学(仏)が各2件と続いた。

imecが筆頭著者となっている発表の共著者には、ルーベンカトリック大学、ブリュッセル自由大学(ともにベルギー)はじめ, ベルギー、フランス、ポルトガル、ハンガリー、韓国、各国の大学、スクリーン(日本)、Entegris(米国、ドイツ)、Park Systems(韓国)、Nanotools(ドイツ)、BASF(ドイツ)、SUSS MicroTec(米国、ドイツ)など装置材料メーカーの名が入っている。一方、Entegris(ドイツ、米国)、スクリーン、栗田工業が筆頭著者となっている発表にもimecが共著者となっており、imecが世界規模で、研究協業している姿が浮かび上がる。

フランスからの発表のうち、CEA-Leti (原子力・代替エネルギー庁電子技術情報研究所)とSTMicroとの共著発表が3件、STMicroとグルノーブルアルプス大学との共著が3件、同大学とCEA-Letiとの共著が1件あり、これら3組織の協力体制がうかがえる。CEA-Letiには従来よりSTMicroの技術者が多数滞在しており、さしずめSTMicroの研究所の役割を果たしている。

○入門講座でも非シリコン基板洗浄が中心テーマ

9月12日〜14日の3日間にわたる本会議の前日11日午後に、チュートリアル(入門講座)が開催された。まず、長年にわたりUCPSSオーガナイザーを務めているimecの洗浄技術研究のプリンシパル・サイエンティストであるMertens氏(図5)が、先端半導体洗浄全般についてレビューした。「洗浄はいまやサブナノメーター・オーダーの超精密微細技術であり、それぞれのプロセスで最適な表面を提供するためには マイクロエレクトロニクス、化学、電気化学、物理、流体力学、精密機械工学などを総動員して学際的協力が必要である」ことを強調した。

次に、SiGe表面の洗浄とパッシベーっション(表面保護)について米アリゾナ大学のAnthony Muscat教授が講議した後、III-V族半導体表面の洗浄と表面準備についてimecのDennis van Dorp氏が講議した。今後、MOSデバイスの高速化のために、基板(チャネル領域)に、シリコンよりもキャリア移動度の大きいSiGeやIII-V族(InGaAsやInSbなど)材料が採用されるようになるため、それに備えるための講義だった。チュートリアルの最後には、imecのQuoc Tan Le氏による「BEOL相互配線工程の残渣除去と表面準備」に関する講義が行われた。

洗浄技術は、新しいデバイス構造や材料やプロセスを熟知しなければ最適化できない。その意味で、洗浄自術の研究動向を知ることにより、現在の半導体製造の問題点や次世代プロセス・デバイス技術の動向を把握できる。後日、改めてUCPSS2016で発表された論文のなかから、そのような主要論文を紹介しよう。

(服部毅)