金正恩氏

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北朝鮮にとって「手ごわい相手」と言える米国の要人が相次ぎ訪韓した。とくに2人の「女傑」の動向は、金正恩党委員長を神経質にさせている。

ひとりは8〜11日に滞在し、洪容杓(ホン・ヨンピョ)統一相や尹炳世(ユン・ビョンセ)外相らと会談したパワー国連大使だ。尹氏らとの会談で主要な議題となったのはもちろん、国連安全保障理事会での対北制裁決議案である。

政治犯収容所の恐怖

安保理には中国とロシアという制裁慎重派の常任理事国がおり、制裁決議をどれだけ強力なものに出来るかは、ひとえにパワー氏の交渉力にかかっている。

そしてもうひとりが、ヒラリー・クリントン氏の外交ブレーンと言われ、同氏が大統領になれば政権の要職に就くと見られているウェンディ・シャーマン元国務次官だ。10日に韓国入りし、やはり尹外相らと会談している。

現オバマ政権は、北朝鮮に核武装を許した「戦略的忍耐」の失敗を批判されている。それに替わる新政権は、北朝鮮に対し強い姿勢で臨む可能性が高いが、シャーマン氏はその「さじ加減」を握ることになるだろう。

ちなみにシャーマン氏は5月、米ワシントンDCで行われた朝鮮半島関連セミナーの昼食会で「北朝鮮で内部崩壊またはクーデターが起こる可能性を想定するのは不可欠であり、韓国と米国、中国、日本が速やかに協議を行うべきだ」と述べた。

(参考記事:同窓会を襲った「血の粛清」…北朝鮮の「フルンゼ軍事大学留学組」事件

このことから察するに、シャーマン氏は新たな対北戦略を考案する上で、金正恩体制の変更(あるいは打倒)を究極的な目標に据えるものと思われる。

さらにもうひとり、国務省のロバート・キング北朝鮮人権担当特使も10日に韓国入りした。同氏の使命は言うまでもなく、北朝鮮に人権侵害を止めさせることであるが、この問題ではパワー大使もまた、国連で金正恩体制を追及する急先鋒となり、重要な役割を担ってきた。パワー氏は韓国滞在中、脱北者たちとも交流を持ち、北朝鮮の政治犯収容所の恐ろしさについてもSNSで情報発信を行っている。

米国要人たちのこのような動きが予感させるのは、今後の米国の対北戦略の中で、核・ミサイル問題と人権問題のリンクが太くなっていくであろうということだ。

米政界の一部では北朝鮮に対する先制攻撃さえ論議され始めているが、いかに米軍の力が強かろうとも、核兵器を除去するためだけに軍事行動を起こすことはできない。韓国と日本という同盟国のリスクが大きすぎるためだ。

しかし、そこに人権問題が加われば、大義名分は立つ。「北朝鮮ではいまも大勢の人々が国家による虐待に苦しんでいる。早く救わねばならない」との理屈だ。悪い例ではあるが、イラク戦争においてもこうした論法が持ち出された。

いずれにしても、北朝鮮は核兵器を絶対に放棄しないと言っているし、体制が恐怖政治を支えにしている以上、人権侵害を止めることもない。

また米国としても、いったん人権問題に触れた以上、状況が改善されてもいないうちに「北朝鮮の人々が死ぬのは仕方ない」と言って、途中で投げ出すこともできない。

だから、米国の対北戦略の中で核・ミサイル問題と人権問題が交差すれば、「解決策は体制変更しかない」との結論に到達する蓋然性は非常に高いのである。