「最高でも引き分けやろなぁ」という現実的視点から、盤石の引き分けに持ち込んだ名将ハリルホジッチの真骨頂の巻。
「え!?何かご不満でも!?」

ロシアワールドカップを目指す日本代表が迎えた正念場。今予選、もっとも強いであろうオーストラリアと相手のホームで戦うにあたって、指揮官は何を考えていたのか。どこをゴールに設定していたのか。1-1のドローという結果に対してご不満をお持ちの方は、もしかしたらそもそもゴールの設定が違っていたのかもしれません。

この試合、ハッキリイッテコンナモンガジツリョク監督は「引き分けなら最高!」というゴールを設定していたのではないでしょうか。多くの日本のファンが「負けはダメだが、あわよくば勝ちたい」という中途半端な色気を持っていたのに対して、指揮官はそんなことサラサラ思っていなかった。「0-0」なら100点満点という皮算用で、この一戦に臨んでいた。

日本のスタメンはGKに西川、DFラインに槙野・森重・吉田・酒井高という並び。ダブルボランチに長谷部と山口蛍を入れ、前めには原口・香川・小林悠。そして1トップに本田△でした。違和感としてあるのは、離脱者続出でアキとなった左SBに「自己評価だけなら世界屈指のSB」である太田を起用せず、槙野を入れてきたこと。そして、このところの攻撃を組み立ててきた柏木を入れず、スタートから山口蛍としたこと。さらに1トップに岡崎でも浅野でもなく本田△を入れたこと。

「あーーーっ!ドン引きサッカーだ!!」

指揮官からの明確なメッセージ。「今日は勝てへんと思う」「いいとこ引き分け」「引き分けなら最高」というガッチリ守りを固める意志が、このスタメンには込められています。いろんな指揮官が追い詰められるとたどりつく「本田△1トップ」という構想や、随所に見られる守備的人選は、ガッチリ守ろうという意志にほかなりません。

ボールを取る、本田△に蹴っ飛ばす、ガマンして耐えている間にサイドから単独突破のゴリ押しがあがっていって何とかする。ボールを取る、本田△に蹴っ飛ばす、本田△と香川とふたりでワンツーしてうっかり抜けたらラッキー。人数をかけず、リスクを負わないことを優先し、点は取れたらもうけものくらいの気持ちでこの試合に臨んだのです。

そして、実際にもうけものゴールは生まれた。

前半5分、相手の縦パスを原口がカットすると、中央でフォローした長谷部は本田△に当てるパス。本田△が反転する間にタイミングよく原口がコレを追い越して、ガラ空きの左サイドへ進出。そこにポンといいパスが出て、わずか4手で相手GKと1対1のビッグチャンスに。いつもなら「上がりを待って」とか、もっちゃらもっちゃらしているものが「今日、基本的に4人しか攻めへんで」というドン引き布陣を指示されたことで選択肢が狭まり、結果的に判断がスピードアップしてしまった。まるで強豪国のショートカウンターみたいな動きで、原口元気が3戦連発となる先制弾!

↓完璧や!引き分けを決定付ける先制弾!


指揮官:「オッケー!!オッケー!!」
指揮官:「もう攻めへんで」
指揮官:「終わり、終わり、攻撃は終わりだ」
指揮官:「ダラダラ時間をやり過ごす」
指揮官:「1-1くらいで終われるんじゃないかな?」
指揮官:「1点やってもいいからなー!」
指揮官:「1点を上手に使って90分をやり過ごせ!」

守ってあげたい〜松任谷由実コレクション/α波オルゴール [ (オルゴール) ]

価格:1,355円
(2016/10/12 03:23時点)
感想(3件)



前線では献身的にプレスバックする本田△と香川の姿が。サイドでは身体をぶつけて相手の攻撃を食い止める槙野、酒井高の姿が。そこに原口や小林悠も絡んで、相手の出足を止めにいく。「相手にボールを持たせる」サッカーで、何も起こさせないように時間を削り取る日本。たまに訪れるセットプレーのピンチには、本田△も危険地帯での競り合いに加わってボールを跳ね返し、クリアボールにプレッシャーをかけるため全速力でまた駆けあがっていく。相手をへこまそうなんて色気は一切ありません。

もし、前半29分のチャンスを決めて2-0としていれば、最終的に勝つ可能性もあったかもしれません。原口が左サイドを深くえぐって、本田△に折り返したこの場面。本田△のシュートは惜しくもGKにおさえられますが、もうちょっと違う方向に飛んでいれば、入ったかもしれなかった。惜しかった。かるーーい感じの「惜しかった」を覚える場面でした。

試合後に指揮官が「本田がもっとパフォーマンスが良ければこの試合勝てたと思います」と述べたのも、まさに「惜しかったなぁ」「勝ってもおかしくなかったなぁ」「勝点3取れそうだったなぁ」くらいの残念さによるものでしょう。日本の記者はマジモンで「くそーっ!勝てなかった!」と思っているので、「戦犯は……本田△なの?」「そんなに悪かったっけ?」「何かよくわからんなぁ」と戸惑ったかもしれませんが。

↓試合後の会見全体を見れば、だいぶホクホクしている感じが伝わってくる!

この発言が「戦犯は本田」みたいな記事になるとしたら、やっぱりスタート地点が違うと思います!

これは野球で言うと「坂本が1試合で3ホーマーしてたら勝ってたのに」みたいなニュアンスで受け取るべき発言!

前半を1-0リードでやり過ごすと、後半に入っても戦いかたやペースに変化はありません。思い通りの展開になっているのだから、何も変える必要がないのです。その想いは後半6分に原口のショルダータックルで残念ながら当然のPKを与えたあとも変わりません。もともと0-0のつもりが1-1になったとて、何も変わってなどいないのです。指揮官の判断が「現状維持」となるのも当然です。

↓たぶん、PKを与えたマイナスより、こんなアホみたいな体当たりがPKで済んだプラスを指揮官は喜んでいるはず!



指揮官:「1点使うの早かったなぁ」
指揮官:「85分くらいまでこのままいきたかった」
指揮官:「ま、もう半分過ぎてるし、いっか」
指揮官:「それに土壇場でやらかすよりは計算しやすい」
指揮官:「PK2本取るのは主審も嫌だろうし」
指揮官:「何となく、もうPKは取られない気がする」
指揮官:「逆に、何かあれば、日本がPKもらえるかも」
指揮官:「ナイスな1点の使い方だった」
指揮官:「このままいくぞー!」
指揮官:「1-1でいいからなー!」

さらに、状況は刻々と日本に有利になってきていました。前半からその姿を見せ、後半に入ると群れを成してきた現地の鳥。過去最大級の数でピッチに乱入してきた畜生は、悠然と芝生の上を歩き、低空を滑空しています。日本は跳ね返すだけなので、鳥がいてもやることはそんなに変わりませんが、オーストラリアにとってチラチラ目に入る鳥は決してありがたくはない。「ピッチがボコボコ」みたいな感じで「鳥がピョコピョコ」はやりづらいはずです。

↓大量の鳥がピョコピョコして、シュートを防いでくれるかもしれないという期待感!

指揮官:「映画とかであるやん?」
指揮官:「相手が放った銃弾で絶対絶命」
指揮官:「しかし、偶然飛び出した鳥に当たり…」
指揮官:「致命傷を免れる、鳥は死ぬ、みたいな」
指揮官:「それです」
指揮官:「鳥ーーー!頼むぞーーー!」
指揮官:「日本のゴールを死守してくれー!」
指揮官:「いっそ、鷹匠を雇うか」
指揮官:「日本のゴール前に何故かずっと鷹」
指揮官:「野生かもしれない鷹」
指揮官:「鷹で防いだらダメなんてルール、ないもんな?」
指揮官:「鷹は自然物、石ころと同じ」
指揮官:「それに、鷹ってわかんないと思うし」
指揮官:「今日の鳥だって、ハトかカモメかわかんないもん」

ひと目で見分ける287種野鳥ポケット図鑑 [ 久保田修 ]

価格:723円
(2016/10/12 03:25時点)
感想(28件)



日本がようやく動いたのは、小林悠が負傷によって座り込んだあとの後半37分。サイドを走りまわり、惜しいヘッドも放つなど存在感を見せた小林悠に代えて、日本は清武を投入します。清武は先日の試合で見せた中央に入る形ではなく、小林悠の代わりに右サイドに入る格好。何も変えたくなかったけれど、アクシデントの影響により仕方なく変えた、という交替です。

もうこの時点で指揮官の心は完全にクローズモードへ。疲れから日本の動きも鈍り、相手も圧力を強めてきたことで、だんだんサイドからクロスが上がってくるようにもなっていましたし、そろそろ守備固めを考えてもいい頃合いです。そこで選んだカードは本田△に代えての浅野。「基本4枚で攻めることにしていたが、ここからは1枚で攻めることにする」「攻めるというか、相手を攻撃一辺倒にさせないための嫌がらせである」「ひとりで走って抜けられたら、点を狙ってもよい」という守りのためのFW投入です。

そして、最後のカードは原口に代えての丸山。原口の位置にそのままDFの丸山を入れる采配などは、ハッキリとしたわかりやすいメッセージでした。もう点を取ることは考えていないという意志、クロスを上げられる前に止めろという意志が、迷いなく伝わってきます。そして、日本は守りきった。指揮官はミッションを完遂した。「最高で引き分けだろうな」と思っていた試合を、その通りやり切ったのですから、これ以上の結果はないのです。

↓ムカついていたら怒鳴りに行くタイプの人間が、慰めと労いをかけにくるのだから、本人的には大満足なのです!

指揮官:「あれ?落ち込んでる?」
指揮官:「え?落ち込んでる?」
指揮官:「うそぉぉぉぉぉぉん」
指揮官:「落ち込むなよぉぉぉ」
指揮官:「オーストラリアと引き分けだぞ?」
指揮官:「イイ結果じゃん!」
指揮官:「よくやってくれた」
指揮官:「今日の活躍には満足している」
指揮官:「何で落ち込んでるの?」
指揮官:「はぁ、勝点3取れそうだった、から」
指揮官:「いやー、それは欲かきすぎだよぉ」
指揮官:「オーストラリアと引き分けだよ?」
指揮官:「イイ結果じゃん!」

【中古】 選手たちよくやった! /星野仙一(著者) 【中古】afb

価格:108円
(2016/10/12 03:31時点)
感想(0件)



今日の試合を経て、確信したことがあります。

これまでの幾多の指揮官…ジーコ監督であったり、オシム監督であったり、ザッケローニ監督であったりは、「日本は強いはず」と思って指揮していた。経済的な規模や、充実していくプロサッカーリーグ、試合に駆けつける大観衆などを踏まえれば、そう思っても不思議はないですし、それは「愛」から生まれる期待でもあったと思います。

しかし、ハトナノカカモメナノカ監督は「日本は弱いはず」と思って指揮をしているようです。それは正しい現状認識かもしれないし、現実的な戦略がイイ結果を招くかもしれません。ただ、「アジアの盟主」を自負する日本のファン・メディアとは、根本の部分で違う方向を見ているものでもあります。

僕らは慣れなくてはいけない。「アジアの盟主として最終予選を勝ち抜き、世界に挑みかかる日本」ではなく、「アジアを勝ち抜けたらミッションはほぼ終わりで、あとはオマケのラッキーデー」という日本のスタンスに。布陣も、交代の遅さも、その内容も、「弱いはず」をスタート地点に据えれば、何ひとつ不思議なものはありませんでした。むしろ、的確だった。

これからも、どこかスッキリしないような試合はあるかもしれませんが、そのときは「日本は弱いはず」という原点に戻ってください。強い強いと思っているから、不満もわいてくるのです。相手のホームで、オーストラリアと1-1ドローなんて、最高じゃないですか。大本番ではどうせ弱い前提のサッカーをすることになるのですから、ずっと弱い前提でやったほうが一貫性もあるというもの。大本番までいければ、この日のような経験がきっと生きてくるはずです!


日本のホームで0-0で引き分ければ、アウェーゴール数で日本の勝ちです!