9月、近鉄奈良線で発生した車掌の線路飛び降り事件。電車遅延で乗客に詰め寄られた車掌が服を脱いで線路に降り、高架から飛び降りたこの事件は日本中で話題になりました。激しく責められた車掌に同情の声が挙がる一方、責めたクレーマー客には非難が集中、この事件は半月経った現在も日本の接客業界に暗い影を落としています。「お客様は神様です」を曲解して、筋違いもはなはだしい言いがかりをつけてくるクレーマーはどこの世界にも存在しますが、無料メルマガ『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』では、そんな悪質なクレーマーを撲滅する方法と、効果的な「撃退法」を紹介しています。

お客様は神様か?

先日のヤフーニュースに、9月21日に発生した、近鉄の車掌が、クレーム対応中に逃げ出し、線路を走して飛び降りてケガをしたという事件の続報が、週刊朝日の記事を受ける形で載りました。

● 近鉄車掌飛び降りで浮かぶ「お客様は神様か?」問題〈週刊朝日〉

事件の概要を要約してお伝えしますと、近畿日本鉄道の奈良線・東花園駅で、26歳の車掌が電車の遅延をめぐり、ホームで複数の乗客に詰め寄られた。車掌は、逆上して線路に飛び降り、制服の上着と制帽を脱ぎ捨てて線路上を走る。そして、なんと、地上約8メートルの、駅の高架から地面に飛び降りた。というものでした。

J-CASTニュースによると、少なくとも6〜7人の乗客に囲まれ、「ほんで、どう責任とんねん!」「バス手配しろ」などと問い詰められ、それでも10分ほど丁寧に対応していた車掌は、「もうこんな仕事やってられるかー!」「死なせてくれ」と突然叫び、制帽や制服などを脱いで、線路にかなぐり捨てホームの中央付近から線路に飛び降り、Tシャツ姿でホームの端まで走ると、線路を横断して、高架の柵を乗り越え、約7.5メートル下に飛び降りたんだそうです。

事件直後の車掌は、上半身を揺さぶるようにして、「もう嫌やねん、嫌やねん。毎日どうなってもいいねん」と、「うなっていた」との報道もありました。

実はこの事件、発生した翌日の9月22日朝、テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』に出演した高木美保さんの発言も、話題になりました。

コメンテーターの高木美保さんは、「ストレスがたまって飛び降りたとしたらどう思うか」と聞かれると、「いやダメですよねえ」「私もそういう現場いましたけど、みんなこう冷静にってなるように、会社でも練習している」と、車掌に否定的な意見を述べたんだそうです。

これを受け、ネットでは、「ズレてる」「心底がっかりした」と、Twitterを中心に炎上。しかし、炎上するということは、世間では、車掌の気持ちがわかる、この車掌は悪くないと思われている証拠ですね。

さらに、事件当初、近鉄は、「お客さま対応中の車掌が不適切な行動を引き起こしたことは大変遺憾」このように謝罪し、「社内規定にのっとって、車掌の処分を検討する」と公表していました。ところが、「処分をいったん白紙に戻すことを要望する署名活動」が始まり、なんと10月1日時点で5万5,000件を超える賛同者が集まっているんだそうです。

わたしが以前メルマガの第183号、第187号、そして第188号で著書をご紹介した高萩徳宗さんは、小田急の鉄道職員でした。著書には、鉄道マン時代に、客から受けた暴力、暴言、クレームの数々が描かれています。そのため、今回の件が「関西だから起きた」とか、「最近のクレームは激しくなった」ということではありません。

わたし自身も、「もうこんな仕事やってられるかー!」「死なせてくれ」、この車掌と同じような心境になったことがあり、鉄道会社にのみ、当てはまることでもないのです。

わたしは、今回の件について、他業種であっても教訓にできる、2通りの方法があると思います。

会社の対応を変えること自分の対応を変えること

まずは、1.の会社の対応を変えることですが、何度もこのメルマガでお伝えしているとおり、クレームは、絶対になくなりません。しかし、「クレーマー」は撲滅できます。

クレーマーを撲滅する方法はただ一つ、会社や組織が一丸となって、「徹底的にクレーマーを拒絶する意思を見せる」、これだけです。

客の代わりはたくさんいても、スタッフの代わりはいません。また、スタッフを大切にできない会社に、客を大切にできるわけがありません。よって、スタッフを傷つけたり、スタッフを疲弊させる可能性がある客は、「客」ではないことを徹底して理解します。そして、会社や組織が、全力を挙げて「拒絶」するのです。

たとえばこのケースでは、鉄道会社が、

職員やほかの客に、暴行を行った客は、その時点から、一切旅客とは認めない客ではないという意思表示として、即座に運賃(定期券であれば差額分)の払い戻しを行うさらに、駅やその周辺からの退去を求める

このように、「あなたは客ではない」ということを、明確に意思表示するのです。駅員が、「自分もしくは他の客への暴行」を確認した時点で、私人逮捕できれば、さらに効果が増すと思います。

もちろん、駅員に非がないことを証明するため、ボイスレコーダーでの録音や、監視カメラでの撮影でフォローします。一般の店舗でも、ボイスレコーダーや防犯カメラは、万引きや強盗対策だけでなく、クレーマー対策として、導入しておくのがおススメです。

2.の 自分の対応を変えることについて。怒っている客は、ただ、怒りをぶつけたいだけなので、どんなに一生懸命対応しても、納得したり感謝されることはありません。怒っている相手にも日頃のストレスや、行き場のない怒りが、あるんだなぁと考え、発散できていないことを、憐れんでください。

理不尽な申し出や怒りに対しては、たまたま自分に矛先が向いてしまったと、すっぱりあきらめて、適当に対応しましょう。

1.の対応ができていて、相手の怒りをさらにあおるような態度さえしなければ、ボイスレコーダーや監視カメラで守られます。逆に、仕事なんだからなんとかなだめないととか、怒りを鎮めてもらうのが自分の職務だとか考えると、どんどんストレスが溜まってしまいます。この車掌さんのように、自分でも思わぬ行動をとってしまうと、命の危険性だってあるわけです。

なお、わたしは、自分が行っているクレーム対応を、会社や組織が肯定せず、反対に、客側にまわることを、「後ろから撃たれる」と言っています。もし、自分の行動が正しいにもかかわらず、会社や組織に「後ろから撃たれ」て、暴力を肯定するような態度をとられた場合は、使用者の安全配慮義務違反です。労働基準監督署や、ご自宅近所の役所、または、会社・事業所の、監督官庁へ相談してください。

なお、この相談の際も、明確な証拠は役に立ちます。ボイスレコーダーは、スマホアプリでもいいですが、業務時間中にスマホを持てない場合は、ソニー製でも6,000円弱で買えます。電話対応で、すべての会話が録音されている場合を除き、クレーム対応が発生する可能性のある仕事なら、仕事中はつけっぱなしにしておけば、少しは安心できますね。何もなければ、その日の音声データは消去すればいいだけです。また、個人商店などを営業されている場合は、最長160時間録画できる防犯カメラが、4,000円弱で買えます。

何度も理不尽な要求を繰り返すクレーマーに対しては、防犯カメラの画像や音声データを理由に、店内に入れない。店内に入れてしまった場合でも、即座に退去を求めましょう。

「恐れ入りますが、お客さまの過去の言動によって、円滑な商取引がいたしかねますので、このまま速やかにお引き取りください」

このように、「あなたの言動が理由」で「円滑な取引ができない」から、「出て行ってほしい」ことを伝えます。それでも出ていかない場合や、暴言を繰り返す場合は、不退去や、威力業務妨害に当たることを伝えて、躊躇せずに警察を呼びましょう。

仕事は大切ですが、たかが仕事です。自分の心の健康より、ましてや命よりも大切な仕事なんて、絶対にありません。もし、同じような件で悩んでいる、読者の方がいらっしゃったら、ご遠慮なくメールをください。わたしでよければお話を伺います。そして、ケガをされた近鉄奈良線の車掌さんの、一日も早い快復を、心からお祈りしております。

image by: Wikimedia Commons

 

『幸せを呼ぶ! クレーム対応術』

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出典元:まぐまぐニュース!