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●乳がんの4つのステージが意味すること
日本人女性の約12人に1人が生涯において患うといわれている「乳がん」。小林麻央さんをはじめ、著名人がブログなどで自身の経験を伝えてくれることで、乳がんの早期発見の大切さを実感している女性も多いはずだ。

今回は、胸部・乳腺外科の法村尚子医師に、乳がんのステージと治療法、乳房再建などについてお聞きした。将来自分がなったときにどんな治療を受ける可能性があるのか、理解を深めておこう。

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○乳がんのステージと生存率

乳がんのステージの分類は、しこりの大きさ、リンパ節への転移、他の臓器への転移などを総合的にみて診断します。ステージは0〜4期までですが、細かく分けると以下の8項目に分類されます。

0期: がんが乳管内にとどまっている。

1期: 2cm以下のしこりで、リンパ節への転移がない。

2A期: しこりの大きさが2cmを超えるが5cm以下。2cm以下でも、わきの下のリンパ節への転移がある。

2B期: しこりの大きさが5cmを超える、またはしこりが2〜5cmでわきの下のリンパ節への転移がある。

3A期: しこりの大きさが5cmを超え、わきの下のリンパ節に転移がある、もしくはしこりが5cm以下でもわきの下のリンパ節が動かない、または胸骨(胸の正中にある骨)の内側のリンパ節に転移がある。

3B期: しこりががっちりと動かない、皮膚にしこりが顔を出したり皮膚が崩れたりしている。炎症性乳がん。

3C期: わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移がある。または鎖骨のリンパ節に転移がある。

4期: 他の臓器に転移がある。

参考: 乳癌取扱い規約 第17版

発見時のステージ別の10年後の生存率は、0期では95.5%、1期では89.1%、2期では78.6%、3期では52.0〜58.7%、4期では25.5%と発見が遅くなるほど低くなります(日本乳癌学会「全国乳がん患者登録調査報告書29号」より)。早期発見ができれば、命が助かる可能性が高くなることが分かります。

○ステージ別の治療法

0〜4期のステージにおける主な治療法は次のとおりです。

0期: 手術±(※)放射線。ホルモン治療を行うこともあります。

1期: 手術±放射線。術後の再発予防のため、乳がんのタイプにより、抗がん剤治療、ホルモン治療、新しい治療法である分子標的薬を用いた薬物療法などを組み合わせて行います。

2期: 手術±放射線。基本的には1期と同じです。しこりが大きい場合は、手術の前に抗がん剤などを使い、しこりを小さくしてから手術を行うことがあります。しこりを小さくすることにより、乳房を残すことができる可能性が高くなります。

3期: 手術±放射線。放射線、抗がん剤治療をするケースがほとんどです。乳がんのタイプによっては、ホルモン治療や分子標的薬を用いた治療も行います。しこりが皮膚に広く及んでいるなど、状況によっては手術ができない場合もあります。手術の前に抗がん剤などで治療することで、手術ができる可能性や乳房を残すことができる可能性が高くなります。

4期: 抗がん剤治療、ホルモン治療、分子標的薬による治療が中心であり、手術の適応は限られます。

※症状によって行う場合と行わない場合があることを意味します

また、ステージだけでなく、乳がんのタイプによっても効果のある治療が異なります。それぞれに適した薬物療法(抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的薬による治療など)を選ぶ必要があります。

●乳房温存と乳房再建という選択肢
○乳房温存術のメリットとデメリット

乳がんの手術は、主に「乳房部分切除術(乳房温存術)」と「乳房切除術(全摘術)」です。乳房温存術によって乳房を残した場合の最大のメリットは、乳房を失わなくてもよいことでしょう。乳がんで手術が必要と言われたときに「乳房を残すことができる」と言われれば、よかったと思われることと思います。

ただし、「乳房温存術=きれいな形で乳房を残せる」というわけではなく、がんの大きさや場所、ひろがりによっては、乳房がひきつれたり、乳頭の向きが変わったりするなど、乳房が変形することもあります。また、乳房温存術の後には放射線療法を行う必要があり、約25日間放射線治療のために病院に通院しなければいけません。

乳房温存術と全摘術では、術後の運動機能面は変わりなく、どちらの手術でも術前と同じように動くことができます。また、どちらの手術を行っても、予後も変わりありません。ただし、とても乳房が大きい人が全摘術を行った場合は、バランスが悪く感じるかもしれませんね。それぞれの長所と短所を理解したうえで、どのような手術を選択するかを決めなくてはなりません。

○乳房再建の内容と費用

乳房を全摘した場合でも乳房再建は可能ですが、乳頭や乳輪は残し、皮膚は取り除かずに中の乳腺だけを取り除く「皮下乳腺全摘術」を行った方が、乳頭や乳輪、皮膚が残っている分、後の乳房再建がしやすくなります。乳房温存術を行っても、きれいな形の乳房を残すことが難しい場合は、無理に残すことにこだわるよりも、皮下乳腺全摘術を行い乳房再建をした方がきれいに仕上がります。

乳がんの手術と同時に乳房再建術を行う場合、乳がんの手術時にティッシュ・エキスパンダーという皮膚を伸ばす道具を挿入し、数カ月かけて胸の皮膚を伸ばしてからシリコンと差し替え、もしくは自家組織による乳房再建(自分の背中やお腹の筋肉を使った再建)を行います。また、同時に再建しない場合、乳がんの手術から何年経っていても乳房再建は可能です。

以前は自家組織による乳房再建のみ保険適用でしたが、2013年7月からシリコンによる乳房再建も保険適用になり、100万円程であった費用も30万円程になりました(健康保険3割負担の場合)。また、高額療養費制度を利用した場合、負担額は8万円程度となります(収入により負担額は変わります)。

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女性にとって乳がんは、決してひと事にしてはいけない病気だ。日々の忙しさなどから、つい検診を後回しにしてしまうこともあるが、多くの乳がんサバイバーの方々が言うように、乳がんは"早期発見"が鍵となる。治療の選択肢を広げ、根治の可能性を高めることができるからだ。

そして乳がんは、再発予防も含めて治療に長い年月がかかる。乳房再建術という選択肢が現実的にあるということを心に留めておくと、病気の受け止め方も変わってくるに違いない。

※写真と本文は関係ありません

○取材協力: 法村尚子(ノリムラ・ショウコ)

胸部・乳腺外科
2005年香川大学医学部医学科卒。現在、高松赤十字病院胸部・乳腺外科副部長。乳腺外科を中心に女性が安心して受けられる医療を提供。また、En女医会に所属し、ボランティア活動や各種メディアにて医療情報を発信している。
資格 乳腺専門医、外科専門医、がん治療認定医など

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。

(須藤妙子)