腎臓結石はジェットコースターで治す!(shutterstock.com)

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 「瓢箪から駒が出る」「嘘から出たまこと」と言う。軽いジョークのつもりが、真に受けると本当になることがある。

 今回は「腎臓結石の人はジェットコースターに乗れば乗るほど、結石が排出される可能性が高まる!」という驚愕の実験結果!

 ディズニー・ランドに行けば、いつも長蛇の列、人気ナンバーワンのビッグサンダー・マウンテン。腎臓結石に悩むM・ジョンソン氏(43)が立て続けに3回乗った。すると、乗る度に1個ずつ計3個の結石がスルッと出た。その生々しい証言を聞きつけたドクターが早速、現場に駆けつけて実験することに!・・・

 そのドクターこそ、ミシガン州立大学のデービッド・ウォーティンジャー教授。どんな実験をしたのだろう?

 まず3Dプリント技術を駆使して、腎臓を精巧に再現した透明なシリコン製の腎臓モデルを作製する。その腎臓モデルに尿と患者の体内から取り出した大きさが異なる3種類の結石(4.5立方ミリ、13.5立方ミリ、64.6立方ミリ)を詰める。

 腎臓モデルを入れたバックパックを腎臓の高さに保ちながら、ウォーティンジャー教授と同僚の2人がビッグサンダー・マウンテンに60回も乗り込んだ。

 1回の乗車時間は2分30秒。先頭座席と最後尾座席に乗り分け、振動と衝撃によって結石が腎臓から尿路に飛び出すかどうかを確認した。

 その結果、乗車中に結石が飛び出す様子を確認できた。結石の排出率は、先頭座席の場合は平均約17%、最後尾座席の場合は平均約64%。先頭座席よりも揺さぶりが激しい最後尾座席のほうが結石の排出率が高いことが分かった。詳しい数値は以下の通り。 64.6立方ミリの大きい結石でも、最後尾座席なら66.7%の高い排出率なのが見て取れる。

 4.5立方ミリの結石は、先頭座席(12.5%)、最後尾座席(66.7%)、
13.5立方ミリの結石は、先頭座席(12.5%)、最後尾座席(58.3%)、
64.6立方ミリの結石:先頭座席(25.0%)、最後尾座席(66.7%)

 ウォーティンジャー教授は、この驚くべき研究成果を米国整骨医学会誌『Journal of the American Osteopathic Association』(2016年10月号)に大々的に発表。世界がどよめいた。発表後、230回以上も同じ実験を繰り返したところ、ほぼ70%の高確率で結石が出ることを再確認したからだ。

 ウォーティンジャー教授は「結石に適度な振動や揺さぶりを与えると、腎臓から膀胱への通過が促される。ディズニー・ワールドだけでなく、どこの遊園地のジェットコースターでも結石が出たと証言する人が増えてきた。結石で悩んでいる人は、ジェットコースターに乗るべきだ。特に妊娠を計画している女性は、結石に伴う妊娠中の合併症を避けるために様々なサプリを飲むよりも、適度な強度のジェットコースターに乗る方がより効果が期待できる」と強く奨めている。

 ウォーティンジャー教授によると、ジェットコースター治療法は、結石が小さいほど効果があるので、結石が4立方ミリ以上の大きさになる前に排出できれば、手術や救急科の受診を避けられ、それほどの苦痛もなく排出できるという。

結石を粉々にしてスルッと出す体外衝撃波結石破砕術の威力!

 しかし、蛇の道は蛇だ。ジェットコースター治療法の有効性の真偽は揺れる。泌尿器専門家の見解は大きく割れている。

 ジョージア州の泌尿器科医師 ジョン・パッタラス氏は、急激な動きが結石の通過を助けるが、結石は腎臓の下部にあることが多く、結石が尿管を通過するには、集合管の真ん中まで上がらなければならないと反論する。

 ニューヨーク市の泌尿器科医師エリザベス・カバラー氏も、概念的には理解できるが、やや極端な療法に思われるので、患者に勧めることはまずない」と躊躇を隠せない。

 腎臓結石は、メタボリック症候群など、以下に列挙した複数の要因によって尿中にカルシウムが結晶化し、腎臓から膀胱に至る尿路に結石が沈着するために、尿路が詰まる疾患だ。結石が大きくなればなるほど、激しい排尿痛、血尿、腰痛、発熱などを伴う。

 腎臓結石の約60%は、原因不明の特発性結石症だ。食生活、ストレス、遺伝的体質はもちろんだが、 内分泌代謝異常、原発性副甲状腺機能亢進症、尿細管性アシドーシス、クッシング症候群、ミルクアルカリ症候群のほか、カルシウム代謝異常、シュウ酸代謝異常、尿酸代謝異常(痛風)、シスチン代謝異常(シスチン尿症)など様々な要因が複合化して発症するとされる。

 最近の治療では、体外から衝撃波を当て、結石を砂状に小さく破砕し、尿管から膀胱に排泄させる体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を行う。直径5mm以上の結石を破砕する外科治療だ。

 ただし、結石のある場所や固さに個人差があるので、痛みの強い場合や高度な水腎症の場合は、4立方ミリ以下でも破砕する。治療は、症状によって1回の治療で砕ききれない時は、数日から2〜3カ月かかる。治療中に強い鈍痛があれば、鎮痛剤を処方する。だが、お腹を切らずに治療でき、副作用や後遺症のリスクはほとんどない、それがESWLのメリットだろう。

 ちなみに東京腎泌尿器センター大和病院での治療実績 (1980年〜2010年)によれば、結石破術数28,894件、患者1人当たり平均破砕回数1.14回、治療費約90,000円(健康保険)となっている。

 米国では、毎年30万人以上が腎臓結石のために救急を受診する。救急コストはおよそ2160億円に上る。発症率は男性11%、女性6%。東京大学医学部泌尿器科科学教室のウェブサイトによると、日本人の発症率は、男性9%、女性3.8%だ。決して稀な疾患ではない。

ジェットコースター治療法がイグ・ノーベル賞を受賞!喘息も改善できる?

 1991年に創設され、人々を笑わせ、考えさせてくれる研究に与えられるノーベル賞のパロディー版と言えば、イグ・ノーベル賞だ。

 『ナショナル・ジオグラフィック』(2010年10月4日号)によると、オランダのアムステルダム大学のサイモン・リートフェルト教授の『ジェットコースターに乗ると喘息が改善する』臨床研究が、2010年のイグ・ノーベル賞の医学賞を受賞した。

 リートフェルト教授によれば、ジェットコースターに乗る前は、喘息患者でなくても、不安や恐怖のマイナス感情が強まるので、息苦しくなる。だが、乗り終った後は、興奮や高揚感などのプラス感情が強まるため、呼吸が楽になる。そのストレスレスのリラックス感が喘息を抑えていると説明している。

 さて、なぜ腎臓結石にジェットコースターが効くの?それは、腎臓結石に罹ってジェットコースターに乗ってみるしかない。しかし、ウォーティンジャー教授のノーベル賞並み(?)の実証実験を見る限り、世界中を絶叫させるジェットコースターが結石を蹴散らかしているのは事実なのだ。
(文=編集部)