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近年、ビジネスシーンで「デザイン思考」というフレーズが多く見られる。これは、デザイナーの思考法を取り入れ、ブレインストーミングによるニーズの洗い出し、プロトタイプの開発、ユーザーを交えたフィールドワークといった3つのフェーズを柔軟に行き来して、新規性のあるモノ・コトを作っていく手法を指す。

世界的なデザインエージェンシー・IDEOがフレームワーク化したこともあって、日本企業の中にも取り入れているところは増えてきている。しかしながら、大きなうねりになっているとは言えず、「自社では/自分の業界では耳にしない」という人もいるかと思われる。

多くの企業とタッグを組んで新規事業の創出に取りくんでいるクリエイティブエージェンシー・ロフトワークが、これまでに「ユーザー・ニーズ主導」で進めたプロジェクトの実例について、棚橋弘季氏と渡部晋也氏からお話いただいた。

――棚橋さんにとって印象的だった事例は何かありますか?

棚橋:オリンパスの「OPC Hack & Make Project」ですね。OLYMPUS AIR(2015年3月発売)というオープンプラットフォームカメラのプロトタイプ開発の段階から、どういうニーズがあるのか、何ができるのか、といったことを一緒に考えました。

OLYMPUS AIRはスマートフォンと連携して使うオープンプラットフォームカメラで、スマートフォン開発のAPIや筐体の3Dデータを公開して、クリエイターやエンジニアが使い方を「HACK」できるようになっています。「考える」フェーズではオリンパスの方々とワークショップを行ったほか、発売前にプロトタイプを公開してしまって、クリエイターなどユーザーとなりそうな方を集めたり、テスターを募集してどのような「HACK」が生まれるのか、一緒になって考え実験していきました。

カメラや写真の新しい使われ方をメーカーの中だけで完結させるのではなくて、オープンなコミュニティと一緒に作っていきましょうという世界観ですね。この取り組みは、これまでのメーカーの常識からすると考えられないことでした。OPC Hack & Make Projectは、オープンイノベーション活動として2015年度のグッドデザイン賞ベスト100を受賞しました。

――メーカーの製品開発というと内々で進めるイメージが強くあったので、企画段階から協業したり、ユーザーと交流したりするオープンな取り組み方は新鮮に映ります。

棚橋:そうかもしれません。実際、僕たちのお付き合いのあるお客様でもはじめは抵抗感を示されることが多かったです。オリンパスの方々からもはじめは「開発段階の情報は外に出せない」、「普通のカメラとして売れば、それでいいじゃないか」という声が聞かれました。オープンな取り組みを「一緒にやっていく」ところに行き着くまでは意識のハードルがたくさんあって、それを少しずつ乗り越えていくのにはやはり苦労しました。

例えば、ワークショップをやっても最初は疑心暗鬼というか、カタい雰囲気です。「何でこんなことをしなくちゃならないか分からないけれど、集められたから来てやっています」という状態だったのかもしれません。それが、いろいろなワークショップやイベントを何度か開催しているうちに、取り組みへの意義も理解していただき、そこからは積極的にいっしょにプロジェクトを作っていく仲間という形がつくれました。

(杉浦志保)