来年1月から公務員や主婦などに対象が拡大する個人型DC(確定拠出年金)。愛称は「イデコ」 (c)朝日新聞社

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 来年1月から利用者が拡大される個人型確定拠出年金(個人型DC)が注目されている。『本気で家計を変えたいあなたへ』(日本経済新聞出版社)の著者でファイナンシャルプランナー(FP)の前野彩さんを訪ね、指南してもらった。

「個人型確定拠出年金(個人型DC)という制度があるのですが、来年1月から利用対象者が大幅に拡大するので要注目です。新たに加入できるようになるのは、公務員と専業主婦、企業年金(年金の3階建て部分)がある会社員。個人型DCは年金という名前の制度ではありますが、国の口座にお金を入れるわけではなく、60歳まで自分名義の財産として管理するものです。加入者には、掛け金に対する非課税と運用時の非課税、さらに受取時の税制優遇があり、この節税メリットが非常に大きいんです」(前野さん)

 日本の年金制度は、わかりやすく言えば3階建て構造だ。1階部分は全国民が加入する国民年金、2階は会社員と公務員が入る厚生年金、そして会社独自に上乗せする企業年金が3階に相当し、各自が職業に応じて加入している。一方、個人型DCは入るも入らないも自由だ。かつて「自己責任」を連発した自民党首相がいたが、個人型DCは毎月一定限度額までコツコツ積み立てる、いわば4階部分の“自己責任年金”と言える。国の年金制度自体が怪しいだけに、いかにも頭のいい役人が考えそうな仕組みだが、上手に使えば税金が安くなる。

 個人型DCの基本的な運用先は、定期預金と保険、投資信託の三つ。シンプルに運用先を絞ることもできれば、組み合わせることもできる。「元本確保」が安心の定期預金、高い運用益を期待する新興国株中心の投信など、それぞれ商品によってリスクとリターンの度合いが異なる点が特徴。銀行や証券会社、保険会社が商品ラインアップをそろえており、そこから選べるわけだ。

「居酒屋でメニューを選ぶようなイメージと言えばわかりやすいでしょうか。一つひとつ選びたい人は自分で好きな商品を組み合わせることができます。それが面倒な人は、内容の変更はできないものの、定額飲み放題コースのような商品もあります。このお任せコースにあたるのが『バランス型』という商品です。各金融機関のホームページ上にある商品説明には必ず目を通しましょう」(同)

 いずれにしても、個人型DCでは加入者が商品を選び、運用することになるのだが、ここで一つ目のメリットがある。通常の投資では、運用益から約20%もの税金が引かれてしまうが、個人型DCの運用に関してはそれがない。さらに月々の掛け金も非課税扱いとなっているのだ。

 例えば会社員の場合。掛け金は毎月2.3万円、年間で計27.6万円まで積み立てができるのだが、減税額は課税所得によって異なってくる。

 新入社員など最も所得税率が低い「課税所得195万円以下」であれば、掛け金の約15%分の税金が安くなる。金額にすると4万1600円分トクをする計算だ(住民税・復興特別所得税含む)。安くなる割合は課税所得、つまり収入が高い人ほど30%(8万3900円分)、33%(9万2400円分)と高くなる。もっとも、所得分布からみれば、20%と30%の割合で余得にあずかる人が多そうだ。

 仮に運用先に定期預金を選べば、預金金利はご承知のとおり、スズメの涙ほどしかない。だが金利による運用益が期待できずとも、この掛け金の非課税額だけで十分な恩恵が期待できるのも大きな特徴だ。

 さらに、60歳になってから受け取る際にも優遇措置が用意されている。受け取り方は主に二通り。一時金としてまとめてもらうのであれば「退職所得控除」を、一般的な年金のようなスタイルで受け取るならば「公的年金等控除」を受けることができる。

「運用益に税金がかからないという点では、NISA(少額投資非課税制度)も同じです。ただNISAの場合は基本的に5年間という運用のゴールがあり、短い。そのため運用損が発生してもやむを得ず終えなければなりません。さらに、個人型DCは60歳までと運用期間が長いうえに、60歳のときに運用損が出ていた場合は、最長70歳まで受取時期の変更が可能です」(同)

 一方で、いくつか注意も必要だ。今回拡大する加入対象者の中でも気をつけたいのは専業主婦だ。

 個人型DCの口座開設をすると、毎月「口座管理手数料」が発生する。このコストは、安い場合で年間2千円、高い場合で7千円ほどだといい、これがくせ者なのだ。

 先述のとおり、個人型DCの長所には「掛け金の非課税」があるのだが、これはあくまで納税者が受けられるメリット。そのため、納税のない専業主婦は受けることができない。つまり専業主婦が加入する場合は、口座管理手数料でかかるコスト以上の運用益をあげられる商品を選ばないと、手数料を引かれてしまえばマイナスになってしまう可能性もあるのだ。

 また、積立金は60歳まで引き出すことも借りることもできない。口座管理手数料が一見安くても、運用する投信の手数料の両方を確認し、かかるコストは全体で把握し、比べたほうが賢明だ。

 まもなく拡大する個人型DC。政活費に手を付けた富山市議、県議の皆さんも、老後は自身のお金で備えましょう。

週刊朝日 2016年10月14日号より抜粋