日中戦争に備えて米国は日本の核武装容認も

 日本は中国に死者3000万人の被害をもたらす核ミサイルを10年以内に開発することができる。一方、中国は日本に対して3400万人の死者を出す核攻撃をかけることが可能だ――。

 まるで恐怖をあおるサイエンスフィクションのような物騒な推定が米国防総省委託の研究報告で明らかにされた。

米国同盟国の間で徐々に高まっている核武装論

 米国・ワシントンのインターネット新聞「ワシントン・フリー・ビーコン」は10月7日、「ペンタゴン(米国防総省)が将来の日本の核兵器と対中戦争について研究」という見出しの記事を掲載した。

 この報道をスクープしたのは、米国の軍事戦略を専門とするビル・ガーツ記者である。ガーツ記者は、国防総省の「相対評価局(ONA)」が今年6月にワシントンで開催した「核作戦とその意味」と題する研究集会の報告書の主な内容を伝えていた。

 ONAは国防長官に直結する研究調査機関で、米国にとって10年以上の単位で長期的な脅威となりうる諸外国の軍事動向や、同盟国を含めた米国側陣営に対する脅威への対応策について研究することを主任務としている。

 同新聞の報道によると、ONAがこの種の研究に取り組んだ背景には以下のような要因がある。

(1)米国は同盟諸国に対して「拡大核抑止」(核の傘)を誓約してきた。しかし、オバマ大統領が「核なき世界」や「核先制不使用」政策を掲げることで、その制約への信頼が失われている。その結果、同盟国の間で核武装論が徐々に高まりつつある。

(2)オバマ政権が米国の核戦力を進化・改良させないのに対し、中国やロシアは核戦力の近代化を進めており、米側の抑止力が相対的に弱くなった。

(3)北朝鮮が核武装を完了させ、イランも10年後には核兵器開発が確実だとみられるようになった。

 こうした諸要因が、米国の核兵器による戦力や抑止力のあり方を根本から再検討するという作業につながったというわけだ。

日本が核兵器開発に着手するきっかけとは

 この研究結果は、ONAが委託した民主党系の民間防衛シンクタンク「長期展望戦略グループ」によって報告書としてまとめられた。同報告書によると、日本の目の前には核武装という選択肢があるという。その主な理由は、「中国や北朝鮮による日本への核攻撃や核威嚇に対する米国の核安全保障が弱くなり、やがて、中国や北朝鮮を抑止するには不十分になると、日本は恐れている」からだ。

 そして、以下のような事態が契機になって日本が核兵器開発に着手する可能性があるという。

・韓国の核兵器開発
・イランの核武装
・中国あるいはロシアによる核兵器の使用

 同報告書は、上記のような事態が起きれば米国の核政策に大きな変化が起きて、緊密な同盟関係にある日本の核武装に対して寛容な姿勢へシフトする可能性がある、と述べる。

 同報告書はその上で、日本の核武装の可能性について以下のように記述していた。

・日本政府は一度決定を下せば、現在の原子力技術や宇宙開発技術、巡航ミサイル、潜水艦の技術を基に、10年以内に核兵器を完成させることが可能である。

・同研究集会に参加したONAの専門家たちは、日本は自国で開発した核兵器を実際に地上や宇宙ロケット、潜水艦などに配備するだろうと予測していた。

・安倍政権も認めているように、日本の現行憲法は核兵器保有を禁じてはいない。米国としてもこの点を重視する必要がある。

中国の核攻撃で日本は国家絶滅の危機に

 さらに同報告書は、日本と中国が尖閣諸島の領有権をめぐって争い、場合によっては日中戦争へと発展する危険性があることを指摘する。その上で、日中両国の将来の核戦力の威力についても次のように触れていた。

・日中間で全面戦争が起きた場合、日本は地上配備、あるいは潜水艦発射の核ミサイルにより中国に最大で死者3000万人の被害をもたらす破壊能力を保持するにいたる。

・中国側は現状でも日本に核攻撃をかけて死者3400万人の被害を与える能力がある。この死者は日本の総人口の27%であり、日本は国家絶滅の危機に瀕することとなる。

 同報告書は、こうした調査、研究の結果を踏まえて、米国政府が日本への拡大核抑止の保証を従来通りに堅持することが最も賢明で合理的な政策だという結論を示唆していた。

 現在、米国では世界の唯一の超大国、そして日本の同盟国という立場から、この種の仮定に基づく安全保障研究が大胆に行われている。起こしてはならない最悪の想定のシナリオを事前に研究しているのである。たとえ仮定のまた仮定でもこの種の軍事シナリオがタブー視されている日本とは対照的に米国は現実を見据えているというわけだ。

筆者:古森 義久