ゴッドスコーピオン氏

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 「魔術を使える社会の実現」。突拍子もない目標を掲げるのは、ベンチャー企業「Psychic VR Lab」で、VR作品の制作を行うゴッドスコーピオン氏だ。

「昔からオカルティズムに興味がありました。中学時代、ヨガをやっていたらキマり過ぎちゃって。世界の形という形が迫ってくるように見えて、次第にブラックアウトしてきて、『このままじゃ死ぬ』と思ったのですがなんとか抜け出しました」

 認知の更新の実現をしたいと思ったのが、魔術へ興味を持つきっかけに。が、ゴッドスコーピオン氏が携わるのは一見、魔術とは関係ないVRだ。

「僕はメディアアーティストでもあり、現代魔術師でもある。オカルトと呼ばれるものをVR技術で実現しています。現実世界にARを重ねるVRデバイス『ホロレンズ』。遠隔地にいる人間を目の前に出現させる『テレポーテーション』の実質化も出来始めている」

 VRが叶えてくれるオカルトは、テレポーテーションだけには収まらない。

「ヘッドマウントディスプレイを装着することで、その場にいる自分を、俯瞰で眺めることだってできる。これはもう幽体離脱ですよね」

 このように、ある意味でアーティステックな制作物のある一方で、ゴッドスコーピオン氏のVR技術はすでに私たちの生活圏にも着実に歩み寄っている。

「最近、制作しているのは伊勢丹とコラボしたVRFashionサービス『STYLY』。HMDを装着すると360度VR空間の中でファッションブランドの世界観の中で衣服を購入できる」

 では将来的に、よりVRが身近になっていくのはどの分野なのだろうか。

「例えば医療分野。手術のシミュレーションや研修にVR技術を活用することで、『経験の譲渡』ができるようになります。研修といえば、すでにJALがパイロットや整備士向けにVRを活用するツールを開発していますよね。『技術習得や教育にVR』が当たり前になっていくように感じています」

 数十年後、日常のあらゆる場面で魔術、つまりVRが欠かせなくなるという。だがその上で、VRが抱える課題もある。

「まず、何よりヘッドマウントディスプレイの煩雑さですよね。当然軽量化はしていくはずですが、さらりとメガネをかけるぐらいの簡単なモノになっていかなければいけないとは思います。また、『触覚』が欠落している部分も改善が必要です。仮想空間で、質感が伴いモノに触れる体験ができるようになれば、VRが活用される分野が爆発的に広がる。研究は進んでいるので早く実現されるといいですね」

 海外に比べてVR研究が進んでいるとは言えない日本。ゴッドスコーピオン氏の活躍が日本の未来を決める!?

【ゴッドスコーピオン氏】
魔術をテーマに作品制作を続けるメディアアーティスト。1990年生まれ。Psychic VR Lab、渋家所属。魔術、テクノロジー、時間軸、空間軸のフレームの変化をテーマに、ラボラトリー、チームと共に作品を製作。主な作品に2014年度文化庁若手クリエイター育成事業採択『Stricker』。VR空間ジョッキー『Spatial+Jockey』東京リチュアルバンギアブドゥル氏との共作でVRリチュアル作品『NOWHERE TEMPLE Beta』。小林健太、中里周子との展示『ISLAND IS ISLANDS』にて『ISLANDS』。chloma 2016-17 A/W Visual Art (VR)等。「京都国際舞台芸術祭2016」にエントリーする『ZOO』(演出・篠田千明)のVRディレクション予定

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