ハーフナーの高さは攻守に渡って生きるはず。イラク戦終盤のパワープレーの際に見たかったが……。(C) Getty Images

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 ロシアワールドカップ・アジア最終予選のイラク戦は、終了間際に山口の劇的な決勝弾が飛び出してなんとか勝利した。本当に“なんとか”という内容の勝利だった。
 
 良く言えば、こういう厳しい戦いをモノにしたことは評価できる。どんな内容であれ、勝点3を手にしたことで、チームはまた前を向いていけるし、自分の経験から言っても、負けた時にはやはり周りの声というものを聞き入れ難くなる。まあ、勝ったことによって、「じゃあ、これからさらに内容を良くしていくにはどうする?」という話もしやすくなるものだからね。
 
 とはいえ、もちろん試合を見たファンもそうだろうし、これまでいろんな解説者たちが散々指摘してきたように、とにかくいろいろと突っ込みどころが多すぎる試合であったことは間違いない。攻撃にしろ、守備にしろ「ん?」というようなプレー、采配、そもそもの選手起用が目についた。アジア全体のレベルが上がっているという言い分も分かるけど、そこを言い訳にしていたら日本のレベルは上がらないからね。
 
 とにかく、僕が一番感じたのは危機感のなさだ。選手も監督もまだまだ尻に火がついている感じじゃない。
 
 それは例えば守備面に表われている。後半の同点ゴールを食らった場面だ。セットプレーから頭で決められたわけだけど、なんであんなところで簡単にファウルしてしまうの? 事前のスカウティングでイラクのセットプレーが強いというのは分かっていたはずだ。しかも前半にポスト直撃のヘディングシュートも食らっている。酒井高はもっと慎重に対応しなければいけなかった。
 
 この傾向は、最終予選が始まった時から続いているよね。UAE戦の2失点しかりだ。また酒井宏も3試合で早くもイエロー2枚で次は出場停止。ただでさえ、試合勘の足らない選手ばかりなんだから、こんな選手が今後ボロボロ出てきたら、試合にならんよ。
 日本は、心のどこかでこのクラスの相手には1、2戦目と同じようにやれば勝てると、高をくくっていたんじゃないかな。UAE戦も負けたとはいえ、チャンスの数では随分上回っていたわけだからね。
 
 だけど、このイラク戦はどうだろう? 最終的には山口の一発で押し切れたけど、試合を通じて日本はどうにもイラクの術中にハマったような戦い方をしていた。
 
 UAEもそうだけれど、イラクもそれほどチームとしてこなれた組織力を持っているわけじゃない。チャンスは一発のカウンターとセットプレー。そこに全精力を傾けてくる。だからこそ、そうした局面では最大限に警戒を高める必要がある。
 
 でも、監督の采配や起用法を見ていると、そんな意識が希薄だったと言わざるを得ない。それを象徴していたのが、あれだけボールが収まらなかった本田を終盤まで引っ張ってピッチに残した点だ。
 
 もちろん、代表での本田の決定力の高さは周知の事実だが、イラク戦は肝心なところで失って、攻撃のリズムが随分止まってしまったし、相手に逆襲を食らって勢いを与えてしまう場面もあった。縦に速く攻めようとしている分、奪われた時の後ろの負担も大きくなる。
 
 されど、そんな本田にばかり責任を問うことはできない。ACミランでは出場機会をもらえず、元々ゲーム勘を不安視されていた選手なんだから。チームを窮地に陥れていたのは、状態の良くない選手をピッチに残し続けた指揮官の責任と言えるよ。
 
 そして、試合終盤には逆に日本がパワープレーで高さを活かすような攻撃を仕掛けた。もうどっちが中東のチームか分からなくなった。それでも、僕はパワープレーを否定するつもりはない。冒頭で述べたように、どんな内容、どんなサッカーでも勝つことが大事なんだ。