関連画像

写真拡大

全ての納税者に適用される所得税の「基礎控除」について、「高所得者ほど減税の効果が大きい」などとして、政府が見直しを検討していることが報じられた。

産経新聞の報道によると、所得の低い納税者の負担を軽くし、所得の高い納税者に一定の負担を求める方向で、減税額を一定にする案や、所得制限を設ける案が検討されている。2017年度税制改正に向け、政府税調で議論して、11月にもまとめる提言に見直しの方向性も盛り込む方針だという。

所得税の基礎控除とはどのような仕組みなのか。「高所得者ほど得」なのだろうか。政府で検討されている案についてどう考えればいいのか。李顕史税理士に聞いた。

●「103万円の壁」に影響する可能性

「まず、基礎控除で高所得者がどの程度低所得者と比較して有利なのか考えてみましょう。

基礎控除は課税所得から38万円を一律で差し引き、支払う税金を減らすものです。日本では昔からあり、金額は消費税導入などにより多少の変動はあるものの1995年から38万円のままとなっています。

会社員で年収1000万円の人と、年収200万円の人を比べてみると、前者は約8万7000円、後者は約1万9000円の恩恵を受けます。つまり、その分所得税が減ることになります。

こうしてみると、確かに基礎控除は、高所得者の税額減少額が低所得者よりも大きいので、『高所得者ほど得』であると言えるでしょう」

李税理士はこのように述べる。基礎控除の制度を見直すことは、所得が少ない人にとって朗報なのだろうか。

「そう話は簡単ではありません。

基礎控除38万円が廃止になると、たとえば、パートで働く主婦にも影響します。今まで主婦の場合はパートで年間所得103万円まで働くことにより、社会保険料の支払義務もなく、全額が世帯収入になっていました。『103万円の壁』と言われてるものです。

基礎控除分の38万円がなくなると、上限が65万円(103万ー38万)となり『103万円の壁』が『65万円の壁』と呼ばれるようになるかもしれません。

年間所得103万円なら1ヶ月あたり約8万5000円で、65万円なら約6万5000円です。パート主婦が働くのを自ら制限する可能性もあり、日本経済全体をみれば、労働力確保が難しくなる可能性もあります。

一方で、基礎控除と同時に、配偶者控除の制度も見直しが検討されているようです。一律に高所得者が得だからという理由で税制変更するのではなく、経済全体をみて税制を判断することが良いと考えます。

ちなみに外国はどうかといえば、アメリカとイギリスは基礎控除があり、ドイツとフランスはないのが現状です」

【取材協力税理士】

李 顕史(り・けんじ)税理士

李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会副委員長。東京都大学等委託訓練講座講師。あらた監査法人金融部勤務等を経て、2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、経営者にとって、難しいと感じる数字を分かりやすく伝えることに定評がある。また銀行等にもアドバイスを行っている。2016年6月に「各種法人の?に答える 現場が知りたいマイナンバー実務対応」(清文社)を刊行。

事務所名   : 李総合会計事務所

事務所URL:http://lee-kaikei.jp/

(弁護士ドットコムニュース)