「資産5億円」スキルをお金に変える方法

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わずか10年で年収5000万、40代にして「資産5億円」。共働きで目標額を達成した背景には、ノートを巧みに使った取り組みがあった。それは――。

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●午堂さん&秋竹さんご夫婦

午堂登紀雄
1971年生まれ。米国公認会計士。不動産コンサルティングや事業開発を手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍する。
秋竹朋子
東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。聖徳大学大学院音楽文化研究科修了。ビジネスボイストレーニングスクール「ビジヴォ」代表として、「声」「話し方」を指導。

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■ビジネス化できるのに気付いていないことも

基本ルール(http://president.jp/articles/-/20321)を踏まえたうえで、いよいよ実践編に入っていこう。

実物ノートの一部分をビジュアル化した。こちらの図版を参考にしながら、まずやってほしいのは、お互いのスキルの棚卸しだ。自分やパートナーはどのようなスキルを持ち、それはお金を生む可能性があるものなのか、ノートに書きながら洗い出していくのだ。

POINT1:稼げるスキルをまずは書き出す
目安は100個。持っているスキルをひたすら書き出していく。その中からビジネスに発展しそうな「コアスキル」を見極める。本人が気づいていなくても、客観的に見て稼げるスキルが見つかる場合もある。
POINT2:予想される顧客層を羅列
あぶり出したコアスキルにお金を払ってくれるのはどのような層かを定めれば、自ずとその先のビジネスまで見えてくる。たとえば「ビジネスマン→人前で話すことが多い経営者→ボイトレが必要」など。
POINT3:新ビジネスに発展することも
キーワードを組み合わせて新ビジネスが生まれた実際の例。見過ごしてしまいそうな「子どもに教える」というスキルまで、掘り起こしておくことが重要だ。組み合わせ次第で、独自のものになることは少なくない。


スキルの棚卸しは自己申告だけでなく、夫婦で話しながらお互いに指摘していく形でやるといい。本当は人より優れたスキルを持っているのに、自分では気づかないケースもある。実際、秋竹さんも夫の指摘ではじめて自分のスキルがお金になることを知った。

「私は音大卒で、ボイストレーニングを日常的にやっていました。学校でみんなが習うことなので、声のスキルが特別なものだとは思いませんでした。夫に『それ、お金になるかも』と指摘されたときも、最初は半信半疑だったくらいです」(秋竹さん)

リストアップするスキルは、多いほどいい。実際にお金に結びつくスキルはごく一部だが、最初に100個出すつもりであげていかないと、隠れたスキルまであぶり出せない。

また、この作業は繰り返しやることが大切。少なくとも一度は2人でスキルの棚卸しをする機会を設けたほうがいいが、あとは普段の会話の中で拾っていくやり方でかまわない。

スキルの棚卸しができたら、次は収益化する方法を探っていく。

ステップは2つだ。まずはそれぞれのスキルについて、それを必要とするだろう顧客層をノートに書き出していく。次に、それぞれの層が抱える歌や声についてのニーズを明確化し、合致するビジネスを考えていく。顧客が「子ども」なら「音感教育(リトミック)」とつなげていくイメージだ。

自分の持つスキルはプロ級ではないので、どうせ誰も必要としていないと決めつけるのは早計だ。

「妻の声楽のスキルでは音楽ファンを顧客にするのはたしかに無理でしょう。しかし、彼女より一歩後ろを歩いている人たちなら、お金を払ってくれる可能性がある。その顧客とは誰なのかを見極めることが大切です」(午堂登紀雄さん)

ここまでは「スキル」→「ターゲット」→「ビジネス」と発想をつなげてきた。ただ、このように単線的な展開をするだけなら頭の中だけでやることも可能だ。せっかくノートを使うのだから、次のステップとして複数のスキルの組み合わせでビジネスアイデアを生むやり方にもチャレンジしたい。

具体的に説明しよう。秋竹さんには、「ピアノ」というコアスキルもある。そのスキルを活かして、19歳のころからピアノ教室を開き、子どもたちに教えていた。その話を聞いた午堂さんは、秋竹さんには「子どもに教えるスキル」があると分析。それをもう一つのコアスキルである「歌」と組み合わせて、「子ども向けリトミックのDVD教材」というアイデアを思いついた。2人はその企画をレコード会社に持ち込み、現在進行中だ。

このように複数のスキルを組み合わせて考えるときは、ノートを使って縦横無尽に線を引きながらやったほうがいい。可視化しながら考えたほうが頭の中が整理されて、いいアイデアが生まれやすいはずだ。

ちなみにスキルの組み合わせを夫婦間でやると、ビジネスの展開はさらに広がる。

「妻の歌とピアノを組み合わせると、リトミックビジネスが考えられます。ただ、リトミックスタジオを都心で構えると固定費が高く、軌道に乗せるのはきついことが予想されました。一方、私は不動産仲介が本業で、不動産に関する知識は豊富です。そこで2人の強みを組み合わせて、子どもの多い新興住宅地に、住居と教室と賃貸を兼ねた自社ビルを建てました。2016年中に引っ越しして、教室もオープンさせる予定です」(午堂登紀雄さん)

プロ級でなくてもいい。お金を払ってくれる顧客がいるかどうかが大切です。

 

(ジャーナリスト 村上 敬 小原孝博=撮影)