苦しんだ末に奪った決勝点。そのピッチに北京世代の主軸の姿はなかった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 ロシア・ワールドカップのアジア最終予選、第3戦のイラク戦。後半ロスタイムの山口の決勝ゴールによって日本は2対1で勝ち、勝点3を手にした。
 
 多くの新聞メディアが報じていたように、結果によってはハリルホジッチ監督の進退問題が浮上しかねなかったのだとしたら、窮地を救った山口は大きな仕事をした。指揮官にとっても最高のゴールと言える。あのゴールが決まっていなかったら、ホームで2戦未勝利という状況を招いていたのだから。考えたくもないが、そうなれば深刻な事態だったと言えるだろう。
 
 印象的だったのは、山口のゴールが決まった瞬間だ。あのシーンはいろんなことが凝縮されていたように感じた。
 
 ひとつ目の光景は、日本のベンチの選手たちが飛び出して、ピッチの選手たちと喜びを爆発させていたことだ。ハリルホジッチ監督はスタッフや選手たちと抱き合い、選手以上に喜んでいた。劇的なエンディングだったとはいえ、あれほど喜ぶのは、日本のチームを指揮してから初めてだったんじゃないかな。日本がかなり苦しい状況だったことを物語っていた。
 
 あのような劇的なゴールが生まれ、劣勢のなかで勝利を掴んだりすると、それまでのネガティブな流れが一変し、チームに大きな変化をもたらすこともできるし、なにより自信回復につながるものだ。それらを繰り返してチームは本当に強くなるもの。そう考えると、これまでの日本代表とは違ったチームに生まれ変われる“きっかけ”を掴めた試合になった。
 
 その意味でも山口のゴールは非常に価値がある。最終予選で苦戦が続き、波に乗れなかった日本にホームゲームで大きな勝点3を手繰り寄せてくれたのだから。この日のMVPは、もちろん山口だ。後に振り返った時に、最終予選でのターニングポイントになったゴールと言われるかもしれないね。
 
 あのゴールが決まった瞬間で印象的だったもうひとつの光景は、これまでずっと主力として活躍してきた、本田、香川、長友、岡崎の4人が揃ってベンチにいたことだ。
 イラク戦では、コンディションを考慮して香川、長友はベンチスタートとなったようだが、本田と岡崎はスタメンで出場し、終盤でピッチを退いた。そして最後にピッチでチームを引っ張っていたのは、北京五輪世代の選手たちではなく、山口をはじめとしたロンドン五輪世代の面々だったということ。
 
 明らかに景色が変わったと僕は感じた。しかしそれは、さほど大袈裟なものではない。チームや選手はそのような変化を繰り返していくのだから。主力選手の彼らだってつねにコンディションが万全な状態ではない。実績で考えれば、彼らの上をいく選手はまだ見当たらない。所属クラブで出場できていないというハンデを背負った現状では、百戦錬磨の彼らだってコンディションをベストな状態に持っていくのは簡単なことではない。
 
 今回のイラク戦で、指揮官は大胆な選択をした。これまでトップ下を任されていた香川をスタメンから外したことは、大きな決断だったはず。一方で、香川を外すという選択を選べたのも、清武というカードがあったからという見方もできる。
 
 もっとも清武も所属クラブのセビージャで出場できていない状況だ。チームにいち早く合流できた理由もあるのだろうが、指揮官の目には香川よりもコンディションが良く見えたのだろう。
 
 選手起用に関して、なにより重視すべきは、実績よりコンディションであることには賛成だ。この日のイラク戦の出来を見ても、原口と清武のコンディションの良さが目を引いた。特に原口のシャープさは群を抜いていた。誰よりも推進力を感じたし、先制点という結果も残した。