リオ五輪卓球女子団体準決勝「日本×ドイツ」最終戦最終ゲーム。「エッジボール」で銀メダル以上を決めて喜ぶドイツ選手と、茫然と立ち尽くす福原愛選手 Photo:日刊スポーツ/アフロ

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卓球女子団体準決勝「日本×ドイツ」最終戦。その幕切れは、リオ五輪でもっとも印象深いシーンのひとつだろう。フルセットの最終ゲーム、3-7という劣勢から、6ポイント連取で9-7と逆転した福原愛選手。しかし、そこから3連続ポイントを取られ、9-10、そして最後は“まさか”のエッジボールで敗退した。ラケットを放り投げて喜ぶドイツ選手と、茫然と立ちすくむ福原選手の姿をご記憶の方も多いはずだ。あのとき、何が起こっていたのか? そして、痛恨の敗北から3位決定戦で強敵シンガポールを打ち破って銅メダルを獲得する背後には、どんな監督のアプローチがあったのか? 日本女子卓球監督・村上恭和氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド社 田中 泰 構成/前田浩弥)

銀メダルは「戦略」と「勢い」でとれる。
銅メダルは「本当の実力」がないととれない

――リオ五輪卓球女子団体戦での銅メダル獲得、おめでとうございます。

村上恭和さん(以下、村上) ありがとうございます。

――監督はかねて、「リオ五輪では銀メダル以上が当然」とおっしゃってきた。前回のロンドン五輪で銀メダルを獲得していたとはいえ、かなり強気な発言です。その真意はどこにあったのですか?

村上 いえ、強気というわけではありませんでした。少し遡って、ご説明しましょう。

 僕が代表監督に就任したのは北京五輪の後。すぐに発表した大戦略は「ロンドン五輪では、第2シードを取る」というものでした。第2シードにこだわったのは、圧倒的強者であり、確実に第1シードを取る中国とトーナメントで「別の山」になるためです。中国と決勝まで当たりたくないですからね。

 シード順位は、五輪直前の各国上位3人の世界ランキングを集計して、上位順に割り振られます。だから、当初世界ランキング3〜4位だった日本を、ロンドン五輪直前に2位になるように、選手たちの国際大会の日程を組んだり、大会に万全の体調で臨めるように組織強化をはかるなど、あらゆる手立てを講じたわけです。

 そして、選手たちも頑張ってくれて、なんとか第2シードを獲得。とはいえ、当時の戦力を冷静に分析すれば、日本の実力は4位くらいだったと思っています。

――「実力4位のチームが、戦略でつかんだ銀メダル」というわけですね。

村上 はい。ところが今回のリオ五輪は違いました。

 実は、ロンドン五輪のとき、すでに中国以外の上位国は選手の高齢化が進んでいました。4年後を考えれば、そのままジワジワと力を失うか、あるいは世代交代によって力を失うか、どちらにしても弱くなるのは明らかだったのです。

 実際にロンドン五輪からリオ五輪の4年間、日本はずっと世界ランキング2位をキープし続けました。3〜4位をうろうろしていたころとは、明らかに実力が違う。彼女たちは強くなっていたわけです。そのため、僕だけでなく、世界中の卓球関係者が「日本は2位確実だ」という見方をしていましたね。

――なるほど。単に強気な発言をしていたわけではなく、実際に高い勝算があったということなんですね。

村上 はい、ただ「第2シード」というのは諸刃の剣なんです。

――諸刃の剣? どういうことですか?

 ロンドン五輪のときは、「第2シード」を取って、あれよあれのうちに勝ち進み、パパッと決勝に進んで、銀メダル以上を確定してしまった。いわば、銀メダルは「戦略」と「勢い」で取れるんです。

 しかし、銅メダルは「本当の実力」がないと取れない。というのは、第2シードを取れば、準決勝まで行ける確率は高まりますが、ここで実力的に拮抗しているチームに負けると、精神的なダメージを受けているなかで、銅メダルをかけて3位決定戦を戦わなければならない。負けたらメダルなし。天と地の差なわけです。これ、ものすごくしんどいですよ。精神的に。

 一方、第2シードでないチームは、準決勝で中国に負けて3位決定戦に回るわけです。これは、それほどダメージは受けない。むしろ、「準決勝で中国に負けて、3位決定戦で勝つ」という明確な戦略を立てることができるから、有利ですらあるわけです。その意味で、第2シードというのは諸刃の剣なんです。

――なるほど。リオ五輪では、準決勝でドイツに敗戦。奇しくも、「第2シード」の“裏目”が出た形になったわけですね?

村上 そうですね。

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