華々しく開幕した男子のプロバスケ『Bリーグ』に続き、10月7日には女子の『Wリーグ』が開幕を迎える。今年の夏、リオ五輪で20年ぶりに決勝トーナメント進出を果たし、見る者の心を惹きつけた女子の戦いにも、ぜひ注目してほしい。

  日本が国際大会でベラルーシ、ブラジル、フランスといったFIBA(国際バスケットボール連盟)ランキングで10位以内の国々を相手に(日本は14位)、予選ラウンドで3勝を挙げたことは過去になかった。準々決勝では五輪5連覇を達成したアメリカの前に屈したものの、リオ五輪は今まで以上に運動量と速さを誇るトランジション(攻防の切り替えしが速い)ゲームで相手を根負けさせ、正確な速攻とスリーポイントの威力を発揮したことで、日本の戦い方が確立できた大会だった。

 だが、リオではベスト8の壁を一気に越えて、その先を狙うチャンスがあったことも事実。だからこそ余計に、世界上位国との差も明確に見えた。日本は司令塔の吉田亜沙美とエースの渡嘉敷来夢(ともにJX-ENEOS)を軸に戦ったが、金星をつかみそこねたオーストラリア戦がまさにそうだったように、ベンチメンバーが限られていたことで終盤にはスタミナ面で息切れしてしまったのだ。さらなる壁を乗り越えるためにも、これから始まるWリーグで選手層の底上げを図ることが最重要課題となる。

 リーグの展望に目を移せば、吉田、渡嘉敷、間宮佑圭(ゆか)という日本代表の主力を擁し、9連覇を目指すJX-ENEOSの一強時代が続いている。この絶対的女王に対抗するチームが出ないことには、課題である選手層の底上げは難しい。JX-ENEOSにしても、インサイドにボールを集めるスタイルが主体では、世界に出れば通用せず、新たな戦い方の構築と若い人材を育てることも必要だ。この状況に対してJX-ENEOSの新ヘッドコーチ(HC)であり、日本代表でもコーチとしてオフェンス強化に努めたトム・ホーバスはこのように抱負を語る。

「私たちのチームはWリーグではサイズがあるチームですが、サイズがないチームは速さでいろいろなことを仕掛けてきます。私は昨シーズンまでJX-ENEOSのコーチとして分析を担当していて、私たちがやられて嫌だったことを、高さのある世界のチームに対して行ないました。Wリーグではその逆で、日本がやったことを他のチームはどんどん私たちに仕掛けてくるでしょう。そして、私たちのチームはWNBA選手がいるのだから優勝を目指すのは当たり前で、ファンダメンタル(基本)を徹底して、中と外が連携するバスケットを作り上げていきたい。お互いにやり合えば、日本のレベルはもっと上がるのではないでしょうか」

 また一強にはさせまいと、今季にとくに意欲を見せているのが、HC就任2年目のチーム作りを迎えたシャンソン化粧品とトヨタ自動車だ。

「ケガ人が戻ってくるので、新しく強いバスケを見せたい」と燃えるシャンソン化粧品のチョン・ヘイルHCや、「今はケガ人がいるが、今年はかなりバランスの取れたチームになった」と手応えを語るトヨタ自動車のドナルド・ベックHCは、着実にチーム作りを進めている。クセ者指揮官たちが虎視眈々と狙う打倒JX-ENEOSに向けて、ぜひともリーグを見応えあるものとしてほしい。

 そんな女子バスケ界が追い風にある中で非常に残念なのは、Wリーグからの宣伝や発信力が乏しいことだ。オリンピックでの活躍を機に新しいファン層を取り込める時でありながらも主立った告知はない。また今シーズンからはインターネットでの動画配信『WJBLチャンネル』が廃止され、テレビ中継の予定も発表されていない。

 こうした状況に「オリンピックでいい成績を残しても、何も変わらない」と訴える選手もいる。元日本代表でキャプテンを務めた大神雄子(トヨタ自動車)だ。

 先日開催されたWリーグの開幕会見の席にて「選手は一生懸命にやることが使命で、リーグと協会がコミュニケーションを取ることが、オリンピック後の盛り上がりにつながる」と述べた上で、囲み取材の場で持論を展開した。大神は以前、日本協会がFIBAから統治能力を指摘されて制裁を受けていた時、改革を任された川淵三郎氏(現JBAエグゼクティブアドバイザー)が開いた女子代表との意見交換の場でも同様の意見を述べている。

 大神の主張は主に「移籍や選手登録制度の見直し、競技力向上のために外国人選手導入、審判の向上、選手とリーグと協会がコミュニケーションを取る必要性」についてだ。大きな括りで言えば、Wリーグが国際化から外れたところにいるという指摘であり、自身が海外や国際舞台で感じたものがあるからこそ発信できる意見だった。

 選手登録に関して言えば、以前のWリーグは5月末の早い時期に締め切られていた。大神自身、2年前に中国リーグとの契約を検討していた矢先に、中国リーグのアジア人枠が撤廃されてしまったことがある。結局、そのシーズンはWリーグの選手登録には間に合わず、プレーする場所を失った。

 世界各国リーグの移籍市場はWNBA終了後の夏以降に大きく動く可能性があり、日本の体制は世界の流れには合わず、国内限定の物差しで作ったルールである。この事例は大神の訴えもあって、昨シーズンからは登録の締め切りを5月末と8月末の二段階にすることで改善が図られた。より良い環境にしていくために、現場で戦う者たちが声を上げることは必要なことだ。

 今回はリオで戦った選手たちも発信していた。誰もがしきりに言っていたのは「バスケを盛り上げたい、バスケの楽しさを伝えたい」という心からの言葉だった。

 FIBAから制裁を受けたことで女子代表は変化を遂げた。『男子トップリーグの分裂』が主な理由で「国際大会出場停止の制裁を受けた女子はとばっちりを食らった」との見方をされていたが、決してそうではない。女子選手たちは自分が身を置くバスケ界で起きていることを知らずに他人事ととらえ、小さな世界観の中で生きていた。しかし、制裁を解除するために動いている人たちがいることを知り、日本のトップ選手として責任感と自覚が芽生えた選手たちは、これまで以上に「日本のバスケを世界で見せよう」という気概でリオのコートで走り続けた。

 吉田も大神に続いて主張する。自ら完全燃焼した五輪後の目標を見つけるべく、自身に言い聞かせるように気持ちを奮い立たせていた。

「本当であればメダルを獲ってメジャースポーツにして開幕を迎えたかったけれど、それができなかった。オリンピックが終わった今だからこそ、もっと各チームが切磋琢磨してレベルを上げていかなければならないので、今シーズンは大事な年になります」

 競技力向上とリーグの活性化はリンクしている。今、日本の女子はアンダーカテゴリーを含め、世界で競争力を発揮する面白い時代になってきた。日本国内に留まらない視野を持ち、環境改善を図るのはまさしく今なのである。選手たちはコートで努力を続けている。今度はリーグが変化を遂げる番だ。

小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko