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一度関係を持ったデリヘル嬢から「妊娠した」と連絡があったーー。果たして女性は本当に妊娠したのか、それとも美人局か。今後の対応に悩んでいる男性から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿がありました。

男性が利用したのは、「デリバリーヘルス」という実際の性行為(本番行為)が禁止された派遣型の風俗サービスです。投稿によると、「(部屋に来た)女の子は20代前半の女性で、私のことを『タイプ』だと話し、キスや前戯のあと自ら避妊具無しで性行為をしてきました」といいます。

その後、帰り際に渡された連絡先に、1度だけ連絡をしたそうです。そして、利用した1ヵ月後のこと。彼女から「妊娠した」「明日病院に行ってくる」とSNSでメッセージが届いたのです。彼は、「怖い」と感じたため返信はしなかったそうですが、それから数日して、またもや女性から「病院に行ってみます。ほんとごめんなさい。自分でなんとかできるので大丈夫です」と連絡がきたそうです。

男性は、「話の信憑性がわからず、今後どのような対応をすれば良いのかわかりません」「私の方からなにかアクションを起こした方が良いのでしょうか」と質問しています。また、詐欺の可能性も考えているようで、「今後脅迫や金銭面の請求がある際はどう対応すれば良いのでしょうか」とも心配しています。

後のトラブルを防ぐために、男性はどうすべきでしょうか。水野順一弁護士に聞きました。

● 実際に妊娠していた場合、養育費や認知を求められる可能性あり

まず現状では、男性はデリヘル嬢から「病院に行く」としか伝えられておらず、妊娠が確認できたのかどうかわかりません。たとえ妊娠していたとしても、産みたいのか堕胎したいのか不明です。また具体的な金銭の請求や、子どもの認知などの請求もありません。この段階で、男性が自分から行動を起こす必要はないと考えます。

仮に、デリヘル嬢が実際には妊娠しておらず、男性を騙したり脅したりしてお金をせしめようと考えている場合、相手を不安に陥れ、それに付け込んでお金を払わないといけないと思わせるように仕向けるでしょう。そのような場合、自分から連絡を取ったりすると付け込まれる隙を与えることにもなりかねません。

とはいえ、何もせず静観することのリスクが全くないとは言えません。

静観するリスクとしては、デリヘル嬢が実際に妊娠していた場合に、何らかの責任を追及される可能性が考えられます。具体的には、デリヘル嬢が子どもを産むと決めた場合、出産費用の負担などを求められる可能性がありますし、生まれた子どもを認知するよう要求されることも考えられます。

認知すると養育費の支払い義務も発生します。自分の子どもで間違いないというのであれば、自分の招いた事態ですので、認知に応じ、子どもが成人するまで養育費を支払うべきです。

ただ、デリヘル嬢という仕事上、不特定多数の男性に性的なサービスをおこなっているのは間違いなく、また今回のケースをみると気軽に本番行為(性行為)を行っているようですので、他の男性とも本番行為をしていそうな印象を受けます。簡単に、認知に応じることはリスキーかもしれません。

今は、DNA鑑定を比較的低額で行っている業者もありますので、認知するにあたっては、まず検査をしてみることを考えてもいいでしょう。認知を求めて、家庭裁判所に「認知調停」を申立てられた場合にも、調停中にDNA鑑定を行うのが一般的です。

● 中絶を決めた場合も、堕胎費用や慰謝料を請求されるかも

デリヘル嬢が子どもを産まないと決めた場合には、堕胎費用の負担や病院に提出するための同意書にサインするよう要求される可能性があります。なお、母体保護法(旧優生保護法)により、妊娠22週以上経過した場合には堕胎できません。また、デリヘル嬢が産みたいのに男性が反対したため仕方なく堕胎せざるをえなくなったような場合などには慰謝料を請求されることも考えられます。

もしもデリヘル嬢から、金銭を請求された場合には、まず何のために金銭を請求するのか確認しましょう。出産費用や堕胎費用ということであれば、病院の領収書など客観的な裏付けとなる資料があるはずなので、それを提出してもらうべきです。

慰謝料ということであれば、何に対する慰謝料なのか確認し、金額的に妥当なものかどうか検討する必要があるでしょう。何の資料もなく請求だけしてくる場合には詐欺の可能性も考えられます。また自分の子どもなのか疑わしい時には、前述したようにDNA鑑定など親子関係が確認できる資料がないかぎり支払わないほうが安全でしょう。

堕胎の際には、病院が胎児の組織片などを取っておくということは通常ないので、後でDNA鑑定により親子関係を確認するのが困難です。できれば検査用の組織片などを確保したいところですが、病院が応じてくれるかはわかりません。

● 店から損害賠償、性病、美人局...「本番」には様々なリスクあり

デリヘル嬢が所属する店から、禁止されている本番行為をしたことや、それにより従業員であるデリヘル嬢が妊娠し働けなくなったことで損害を受けたなどとして、損害賠償の請求をされる可能性は否定できません。

しかし今回のケースでは、従業員であるデリヘル嬢が自分から進んで本番行為に及んでいる以上、店の請求が認められることは通常ないと思われます。

なお、お金を払って本番行為をすることは「売春行為」であり(売春防止法2条『この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう』)、違法です(同法3条『何人も、売春をし、またはその相手方となってはならない』)。

売春の相手方となった者に対しては罰則がないため、違法でないと誤解している方もいますが、違法ではあるけれども処罰されないというだけにすぎません。

また、不特定多数の男性に性的行為を行っている女性と、避妊もなしで本番行為をすることは、HIVや他の性病に感染する危険性もあります。今回のケースがそうなのかは不明ですが、いわゆる美人局に遭い、詐欺や恐喝などのトラブルに巻き込まれることもあります。



【取材協力弁護士】
水野 順一(みずの・じゅんいち)弁護士
中央大学法学部法律学科卒。2004年弁護士登録。2010年なります法律事務所開設。共著書3冊。地域に密着した法的サービスを目指しています。離婚等男女問題、相続、借金、交通事故など一般民事事件及び刑事事件を取り扱っています。最近では、離婚等の男女問題を多く取り扱っております。
事務所名:なります法律事務所
事務所URL:http://www.narimasu-law.net