『発達障害 うちの子、人づきあいだいじょーぶ!?』(かなしろにゃんこ。/講談社)

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 ADHDやアスペルガー症候群などの脳機能の障害といえば、発達障害。近年では、大人になってから診断が下る“大人の発達障害”が注目を集めています。その症状は、注意欠陥や学習障害、空気が読めないなどさまざまですが、そうした症状のために「人づきあいが苦手」と感じている人が多いそうです。一般社団法人 日本発達障害ネットワークが当事者や保護者3000人を対象におこなった調査でも、55.5%の人が「周りとの人間関係に悩んでいる」と回答しました。なかには、職場での人間関係の悪化が原因でうつ病になってしまい、二次障害を発症してしまうこともあるそうです。

 7月に発売された『発達障害 うちの子、人づきあいだいじょーぶ!?』(講談社)は、ADHDと診断された息子を持つ漫画家・かなしろにゃんこ。さんが、発達障害の当事者や自助グループ、支援団体に直接取材をおこなったコミックエッセイ。発達障害当事者や彼らと生活をともにしている、発達障害のない人(定型発達)のさまざまな“人づきあいの形”が紹介されています。

 6章に登場するのは、定型発達の坂本タケシさん(30歳)とアスペルガー症候群と診断されている藤田エミさん(23歳)のカップル。エミさんには「感覚過敏」という発達障害の症状が顕著に表れているらしく、五感のうち、痛覚を除くすべてが超敏感なのだとか。

・スーツの素材が苦手なので、就活時は面接の直前にトイレでスーツに着替えていた→触覚過敏
・トイレのニオイがキツすぎて倒れる→嗅覚過敏
・子供の声がキャーキャー聞こえるとパニックになる→聴覚過敏
・カメラのフラッシュや強い日差しが目に入ると頭が真っ白になる→視覚過敏

 坂本さんいわく「感覚過敏のデパート」なエミさん。デート中に手をつなごうとしても振りほどかれてしまったときに「タケシのことキライなわけじゃなくって 誰かに手を触られると気分が悪くなるの」と告げられ、驚きとともに彼女を「支えてやりたいと思うようになった」と語っています。

 しかし、その後もパニックを起こし、体調不良が続くエミさんへの接し方がわからなくなり、別れを考えたこともあったとか。それでも交際が続いた理由は、もちろん好きという気持ちもありますが、それ以外にエミさんの発達障害のなかに“おもしろさ”を見いだしたからでした。ひとつは、彼女の生活をどう助ければいいのかを考えることのおもしろさ。

・苦手な音をカットするノイズキャンセリングイヤホンを教えてあげる
・明朝体やゴシック体など、角のある書体が読めないエミさんのために文章の部分を別の書体に変換する

「ただ見ているだけじゃなくて オレにできることでひとつずつ 2人で解決できればと思うんです」と、坂本さん。なんとも頼もしいお言葉です!

 また、味覚過敏によってミネラルウォーターの銘柄を言い当てられる、というエミさんの特技に感動し、「空気が読めない」という特徴に関しては「裏表がない」という長所として捉えているそう。買い物に行き、坂本さんが購入を迷っている服が似合っていなければ「ヘン! 似合ってない!」と、一刀両断。

「ストレートな表現に傷つくこともあるけど 正直で本心しか言わないのでホントは逆に つきあいやすかったりするんですよ」

 発達障害の症状を短所と思ってしまえばそれまでですが、坂本さんのように見方をひとつ変えるだけで、お互いの負担が軽減される。これは、発達障害当事者に限らず一般的な人づきあいにも通じるテクニックではないでしょうか。

 同書では、坂本さん、藤田さんカップル以外にも、発達障害当事者の狸穴猫さんが提案する“人間関係の悩みを解決する方法”や、夫の発達障害への理解を深めようと努力する川上さんの妻など、さまざまなケースを紹介しています。

 人間関係に悩みを抱える多くの人々に手に取ってほしい一冊です。

文=谷口京子(清談社)