『母になるのがおそろしい』作者・ヤマダカナンさんに聞いた、“子育て世代に伝えたいこと”

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「いつも心に余裕がなくて、私は全然いいお母さんじゃないかもしれない、こんな私が子どもを産んでよかったのかな?」

ママってこんなものなの? 産後、人生で初めて抱く10の感情【あるある】

母親としてプレッシャーの多い日々の中、そんな気持ちを抱えたことはありませんか?

今回は、コミックエッセイ『母になるのがおそろしい』(KADOKAWA)の作者ヤマダカナン先生に、インタビュー。

今では漫画家として活躍する一方、2人の男の子を育てる母親であるヤマダ先生ですが、幼少期の辛い経験や母親との確執、自分自身の母性のなさから、母になることを躊躇していたと言います。

そんなヤマダ先生が、今子育て世代に伝えたいこととは?

母親との確執で胸の奥にしまった感情

――コミックエッセイ『母になるのがおそろしい』の中では、幼少期からの母親との確執が描かれていますよね。ヤマダ先生が子どもを産む前に、母親に抱いていた感情ってどんなものだったのでしょうか?

ヤマダカナン先生(以下:ヤマダ):意外に思われるかもしれませんが、親元を離れてから子どもを産むまでは、母親に対してほとんど何も思っていなかったんです。

1年に1回会うか会わないかなので、そんなに母親に対してあれこれ考える機会もなくて。

というより、考えないようにしていたという方が正しいかもしれませんね。

幼少期も頭ごなしに怒鳴られたり、大人になってからも話してほしいことをごまかされたり嘘をつかれたりしていたので……。

「母親に対して今さら何かを思ったり、話したりしたところで、母親は変わらない。だったら私の意識を変えるしかないんだ」って、ある意味あきらめていました。

――自分の中にある母親へのマイナスな意識を閉じ込めていた、ということでしょうか?

ヤマダ:そうだと思います、思考を停止させていたというか。でもやっぱり、考えないようにしていても確実に影響はしているんですよね。

頭ごなしに怒られたり、自分のやりたいことをさせてもらえなかったり、話を聞いてもらえなかった経験からか、今でも自己肯定感の低さというのは自分自身で実感します。

だから子どもを産んで育てるという行為に対しても、「私なんかができるわけがない」って思っていました。

あと、産んだら母親みたいな子育てをしちゃうんじゃないかっていう不安も大きかったですね。私にとって母親のロールモデルは私の母親しかいないので、怖かったです。

出産をきっかけに過去の記憶が溢れ出す

――そんなことを考えつつ過ごしていたら、旦那様からの「そろそろ子どもが欲しいな」発言があったと……。

ヤマダ:そうそう、「ついに来たかぁ〜! やっぱりそうだよね〜」って感じでしたよ。子どもはいないならいなくてもいいやって思って過ごしていたので。

母親のような子育てをしてしまうのではないかという不安もそうですし、自分自身に母性がないということにも気がついていましたし。

――そんな中、子どもを出産されて、自分自身の母性に対してや、母親への感情って何か変化があったのでしょうか?

ヤマダ:母性というところでいうと、やはり妊娠中や産んですぐの段階でとくに変化は……。お腹の中に話しかけるとかも全然できなかったですね(笑)

34歳で産んだのですが、今まで母親ではなかった自分の34年間を否定したくなかったので、母性というものに翻弄されたくなかったというのもあります。

ただ母親に対する感情というところでいうと変化はありました。

なんというか……。自分が子どもを産んだことによって、母親が昔私に投げかけた言葉だったり、行動だったりにより疑問を強く持つようになりました。

――そうなんですか!? 子どもを産むことで親と和解したとかいう話はたびたび聞きますが……意外です!

ヤマダ:子どもを産んだことによって、自分だったら子どもに対してこうするなぁとか、思うことが多くなるわけじゃないですか。

そうなると、「じゃあなぜ母親は自分に対してそうしてくれなかったんだろう?」って思いが生まれてきて。そりゃ日々仕事に育児に大変だったのはわかるんですが……。でも、子どもには関係ないことですよね。

それは『母になるのがおそろしい』を描いている時もそうでした。

やっぱり、自分自身が子どもと接したり、幼少期のことを描いたりすることで嫌でも色々思い出すので、今まで自分の中に閉じ込めて、ごまかしていた感情が溢れ出してきちゃったんですよね。

その時期は、だいぶ夫に迷惑かけちゃいましたね(笑)めちゃくちゃ八つ当たりしていたんで。

母親のようになりたくない! じゃあどうすればいい?

――出産後の母親に対する感情の変化は、ヤマダ先生の子育てに対してどんな影響がありましたか?

ヤマダ:母親のことを色々と思い出すことによって、自分の子どもを育てる反面教師にできたというところはあります。

小さなとき、自分の意見を聞いてもらえなかったりしたことで自分を否定された気がして、それが自己肯定感の低さにつながっていると思うので、自分の子どもにはそういう思いをして欲しくない、それなら母親と逆のことをすればいいんだ!って。

子どもに寄り添うことを大事にしています。

頭ごなしに「もうテレビ見るのをやめなさい!」じゃなくて、「あと10分見たら終わりにしよう!」など、小さなことでもその時の子どもの意思を汲み取る話し方をするとか。

ほかには、〆切り前など理不尽に怒っちゃったら、あとからちゃんと子どもに謝ればいいや!みたいに自分に対してハードルを下げることによって、気持ちに余裕を持たせるようにしたりしています。

母親は絶対に謝らない人だったので、そこも反面教師にしてうまいことできているかなって(笑)

子どもの成長とともに母親になっていく

――自分自身の親との関わり方で子育てに悩んだり、自分の母性のなさに悩んだりしている人に対して、ヤマダ先生が『母になるのがおそろしい』という作品を通して伝えたいことは何でしょうか?

ヤマダ:世の中って、母性で溢れていると感じることがあるんです。

それは決して、母性を持った人が圧倒的に多いという意味ではなくて、母性を持った人の発信力が強いからだと思うんです。書籍もそうだし、身近なところでいうとSNSとか。

親との関係性が良くないとか、母性がないから子どもはいらないとか、そういうことって発信しづらくないですか? 世の中に出ている意見が少ないからマイノリティ感が出てしまっているけど、実はそういう人って多い気がするんですよ。

子どもをもうけることに選択肢があってもいいと思いますし、個人的には、母性は最初からあるものではなく、心の余裕と子どもの成長とともに育ってくるものだと思います。

誰もが母親初心者なので、だんだん母親になっていくものだと思うんですよね。

『母になるのがおそろしい』によって、少しでもマイノリティ感から来る孤独を和らげることができたらなと思っています。

――世の中には理想の母親像が溢れ、現在子どもを育てている人にとっても、これから子どもを産もうとする人にとっても、プレッシャーの多い現代。

今回インタビューしたヤマダカナン先生の『母になるのがおそろしい』(KADOKAWA)はそんな悩める母親、これから母親になる女性たちの心のつっかえを取り除いてくれる一冊です。

育児や出産に対する自分の気持ちに孤独感や自己嫌悪を感じたら……。そんな時にこそ手に取ってもらいたい作品です。