愛媛大学大学院医学系研究科の三宅吉博教授

写真拡大

乳業関係者の業界団体Jミルクは2016年9月30日、愛媛大学大学院医学系研究科疫学・予防医学講座の三宅吉博教授を講師に迎え、第44回メディアミルクセミナー「牛乳・乳製品摂取と周産期うつ症状との関連:九州・沖縄母子保健研究〜疫学研究によるエビデンス蓄積の重要性〜」を大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)で開催した。

セミナーでは、16年6月発行の学術誌「Nutrition Research」に掲載された論文――、妊娠中の牛乳摂取が産後うつ症状に予防効果があることを示唆するデータが得られたという研究成果が解説された。

研究成果は愛媛大学、国立保険医療科学院、東京大学、琉球大学の4機関からなる共同研究チームによるもの。三宅教授は愛媛大学で「疫学」――集団中に頻発する疾患の発生原因や予防を研究しており、共同研究チームをリードする立場にある。

産後女性の1割以上がかかる「産後うつ」

産後うつは出産後2〜4週間以降に発症する心の病気で、産後女性の10〜15%がかかるといわれている。不眠、食欲不振、体のだるさ、イライラといった症状に悩まされ、母親失格と自分を責めてしまう。ちなみに出産をした母親の約半数に見られるマタニティブルーは、出産後2〜5日以内に情緒不安定になるものの2週間程度で自然と消えていくため、病気とは見なされていない。

三宅教授と共同研究チームは、九州・沖縄の女性を対象に、妊娠中から子が8歳になるまで、食事歴質問調査票を通じて栄養情報の追跡調査を実施。その内容を分析したところ、産後3、4か月の女性1319人のうち8.2%に産後うつ症状が見られた。

次に1319人を「(妊娠時の牛乳摂取量が)最も少ない」「2番目に少ない」「3番目に少ない」「最も多い」の4グループに分けて、産後うつ症状との関連を見た。「最も少ない」の発症リスクを1とした場合、「2番目に少ない」が0.48、「3番目に少ない」が0.73、「最も多い」が0.51と、牛乳摂取の少ないグループよりも多いグループの方が産後うつリスクは低下する。

一方で三宅教授は「たった一つの研究でその真理は分からない。エビデンス(データ)を蓄積しなければ結論は出てこない。日本人を対象としたエビデンスは不足しており、今後も蓄積していく」と釘を刺し、今後も調査を進める意向を示した。