靴職人の仕事に魅せられる「べっぴんさん」3話

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第1週「想いをこめた特別な品」第3回 10月5日(水)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎


3話はざっとこんな感じ


解体してしまったお父さんの靴を靴屋に直してもらうため、すみれ(子役・渡邊このみ)は禁止されていた町場へ行くが、その帰り、潔(大八木凱斗)とはぐれてしまう。

技ってスゴイ


3話はなんといっても、靴屋・麻田(市村正親)の仕事っぷりに尽きる。
解体した靴を直すところは見られなかったすみれだが、迷子になった後、もう1回、靴屋に戻って、姉・ゆりの靴のかかとを壊してしまい(すみれってば壊してばっかり!)、それを直す作業をこっそり見る。

ドラマ開始から8分20秒。音楽とともに、ミシンを一定のリズムでかけ、いろんな作業を行う市村正親。
ふっとい針と糸を靴に刺していく。
9分45秒。眼鏡を外して、あーとのびをして立ち上がる。そこまで約1分25秒ほどの作業に、すみれ共々魅入られてしまった。

さらにシナモンティーをすみれにごちそうしながら話すことが含蓄ありまくり。

「ゆりお嬢さんの足は甲が低いんです」とひとりひとりに特徴に合わせて靴をつくっている職人の矜持をまず語り、それをわかってくれたすみれの母(菅野美穂)に対して「想いをこめて丁寧な仕事で返さな」と思っていることを語る。
極めつけはこれ。
「誰かて最初からうまくいきませんわ。自分かてそうです。そやけど想いをこめたら伝わるんです。それが一番大事な事なんです。上手に作るということより、誰かどんな想いをこめて作るのか。それが一番大事なんです。そんなこんなしとるうちにいつの間にかうまくなるもんなんです」

大きな舞台で、後方の観客にまで伝わる芝居をていねいにやってきたベテラン市村正親の身体表現と台詞術が、長いこと職人ひとすじで生きている男の姿を鮮やかに見せた。

もうこれですみれは魔法をかけられたようなもの。この先の生き方がこの言葉で決定!

靴屋の仕事場もすてき。最初に靴屋に入ったとき、そこにあるものに注目してしまうすみれの気持ちがカメラワークによく出ていた。

もうひとりの業師は、執事・忠さん役の曽我廼家文童。やたらと転ぶ設定らしいが、今日もハデにひっくり返っていた。その動きのキレは長く松竹新喜劇で腕を磨いてきた役者って感じだ。

忠さん「わたしは誰?」
坂東家の使用人たち「忠さんや!」
このボケとツッコミもNHK大阪(BK)ならではの芸だなあと思う。

捻り技も


朝ドラヒロインは高いところがお好き。櫓に上ったり(とと姉ちゃん)、木に登ったり(あさが来た)、屋根に登ったり(花子とアン)などなど。「べっぴんさん」はすみれが高い丘の上から戦争で荒廃した神戸の街を見下ろし涙するところからはじまる。主にヒロインの元気さの表現であった高いところが、今回はちょっと違って、ヒロインの生きる世界をまず俯瞰させる意味をもっていた。
さらに、すみれの家は高台(山?)にあり、危険だから行くなと言われている庶民の暮らす町場に行くには坂をくだらなくてはならない。すみれの暮らす上流の世界と、靴屋や使用人たちの住む世界を、明確に坂の上と下に分けている。もちろん神戸がそういう土地のつくりだからできることだ。
そういえば「あまちゃん」の制作スタッフはまずロケ地の一番高いところにあがってその土地の全体を掴んだと語っていたことを思い出した。

事件は、起った回の次の回で解決パターンも朝ドラ名物。今回も2話ですみれが街へ冒険に行き、3話のうちに「一件落着」とナレーションしかけたが、長い間をとったあと「と思いきや・・・」と入り、お父さん(生瀬勝久)の怒りを4話へ引っ張り、話のぶち切れ感を軽減した。

3回まで観た印象は、構成がしっかりして見やすく、職人の仕事を大事に描いてくれそうでディテール好きにはツボりそう。
(木俣冬)