自閉症、ADHD、ディスレクシア…「発達障害児」の特性と、親の心構えを心理学者に聞いた

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最近では、出産前に出生前診断を受ける親も珍しくなくなりました。命の選別についてはさまざまな意見があることでしょう。

我が子が“発達障害”…「就学時健康診断」で親に突きつけられる現実

出生前診断では、特定の遺伝性疾患は診断できても、発達障害までは分からないといいます。我が子の特性は、親が受け止めてあげるしかありません。

しかし、実際に発達障害児をもつと、悩むことも多い様子。インターネットの掲示板にも、育児に行き詰まった方の切実な声が届けられています。

もしも、生まれてきた子どもが発達障害と診断されたら、親はどのような心構えで育てていけばいいのでしょうか。

そこで今回は、『発達障害の素顔』(講談社)著者で、乳幼児の心と脳の研究をする心理学者の山口真美さんに、発達障害とされる「自閉症」「ADHD」「ディスレクシア」について、お話を伺いました。

自閉症(自閉症スペクトラム障害)の特性と親の心構え

――自閉症の子は「人づきあいが苦手」と耳にしますが、実際はどんな特性があるのでしょうか。

山口真美さん(以下、山口):自閉症は先天性の脳障害です。他人とのコミュニケーションが困難だったり、社会性の障害があったり、行動や興味に強い固執やこだわりを見せたり、という特徴があります。

自閉症の子は赤ちゃんの頃から、人とのアイコンタクトや接触が少なく、親に対する愛着的な行動も少ない傾向があります。

3〜4歳で言葉の遅れや友達付き合いが苦手、同じことを繰り返すなどの特性が出てきますね。だから診断も大体3歳くらいからです。

――自閉症の子は「見える世界が特殊」と著書でも書かれていましたが?

山口:よく親御さんは「目を見てくれない」と言うのですが、実は自閉症児は視力がすごく発達していて、コントラストが強く出てしまう傾向にあります。

そのため、顔の中でも白と黒で構成された「目」は特に強い刺激に感じ、なかなか注目できないのです。

モノの見方も個性的で、一点集中して見る特性があります。相手の顔を見るときも、全体を見るのではなく、口などの部分に注目する傾向があります。

私たちとは『見える世界』が少し異なっているようです。

また、聴覚も特異的で、日常の環境音やあらゆる雑音がかなり大きな音として耳に入ってきてしまいます。

一方、人の声は聞き取りにくい傾向にあり、それが言葉の遅れに繋がっているのではと考えられています。

――自閉症の子を育てる親御さんはどのような心構えで育てていくといいのでしょうか?

山口:なるべく早く病気を見つけて、日常生活のルールを身につける訓練が必要です。

しかし、その訓練の仕方が難しいため、臨床心理士などのプロの助けを借りたり、色々な施設に相談して、親自身が育児のノウハウを身につけることが重要なポイントです。

自閉症の子は、特にお母さんとの関係が大切になってきます。

また、何に興味があるか、どんな能力があるかは個人で異なります。

成長してからも障害者枠である方が、その子にとって生きやすい場合もあります。何でも平均を求めることが良いとは限らないと思います。

ADHDの特性と親の心構え

――それでは、ADHDの子どもにはどんな特性があるのでしょうか。

山口:ADHDとは別名、注意欠陥多動性障害といいます。社交的なのですが、忘れっぽいといった不注意や動き回ることをコントロールできない多動、自分の感情や行動、発言を抑えられない衝動性もあります。

一番の問題は、就学したときにじっと座っていられないこと。幸い、ADHDは薬が効くので、学校での問題行動は少し抑えることができます。

――親としてはどんな心構えでいるといいでしょうか?

山口:学校の授業では集中力に欠ける一面がありますが、コンピュータやゲームには没頭しやすく、その集中力はすさまじいです。画面上の制限された環境ならば、他に気をとられないため、夢中になることができます。

そのため、その子の特性に合わせて勉強できる環境を整えてあげることも大事かもしれません。

また、安全面において、知らない人についていかないように注意してあげてほしいですね。

ディスレクシアの特性と親の心構え

――ディスレクシアとはどのような症状があるのでしょうか。

山口:ディスレクシアは知的機能に問題はないのですが、読み書きだけができない学習障害のひとつです。

俳優のトム・クルーズなどもこの障害をもっていることで有名ですね。視覚的なものが苦手か、聴覚的なことが苦手か、大体はどちらかに分かれるようで、小学校に入ってから気づくことが多いです。

――親は、どのように接してあげたらいいのでしょうか?

山口:まずは、できないことにはこだわらないことが大切です。読み書きが苦手なら文章を録音して聞くなど、色々なやり方があります。その子の苦手な部分を補える方法を教えてあげることが重要だと思います。

まとめ

山口さんのお話を聞いていて印象的だったのは、「発達障害は一つの個性の広がりで、私たちの中に存在する側面でもある」ということ。

診断はされなくても、人づきあいが苦手だったり、集中力に欠けていたり。特別ではなく、誰でも持ちうる部分でもあるということです。

「ただ、発達障害児を育てる立場になったなら、子どもの訓練も必要ですが、対応の仕方、意識的な教え方など親の訓練も必要になってきます」と山口さん。

ちょっと個性的な子たちなので、「心に余裕をもって、専門家に何でも頼ること」、「自分も子どもも追い詰めないこと」が重要だそうです。

その子にとって、どのような生き方が一番幸せなのか。個性をきちんと見極めながら、家族みんなで話し合っていけたらいいですね。

●山口真美さん:中央大学教授であり、乳幼児の心と脳の発達を研究する心理学者。

著書は『発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ』(講談社)のほか、『美人は得をするか 「顔」学入門』(集英社)、『赤ちゃんに学ぶ 「個性」はどこから来たのか (あなたの「個性」はどこからきたのか 赤ちゃんに学ぶ)』(講談社)、『自分の顔が好きですか?――「顔」の心理学』(岩波書店)、『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』(平凡社)など多数。