『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』(shizu/講談社)

写真拡大

発達障害の子どもを伸ばす親子関係とは?

 子どもの発達障害は大きく3つにわけられる。ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)は、空気が読めない、寡黙or多弁、こだわりが強い、音や光、肌触り、感覚(刺激)に鋭敏or鈍感といった一見矛盾する多様な特徴がある。ADHD(注意欠陥多動性障害)は主に、活発で落ち着きがなく突発的な行動が多い多動・衝動傾向、注意散漫で片付けが苦手で忘れ物が多い不注意、感情のコントロールが難しいのが特徴。LD(学習障害)は、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算するといった特定の能力の習得が困難なことが多い。

 自分の子どもがこのいずれかの診断を受けたら、いったいどうすればいいのか? 今回、紹介する本はそんな悩みを持つ親御さんにお薦めしたい3冊だが、たとえ子どもが発達障害でなくても子育てがうまくいかず悩んでいるすべての親に読んでほしい本でもある。

 1冊目は『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』(講談社)だ。著者のshizuさんは3歳で自閉症と診断された息子さんをABA(応用行動分析)の療育法をベースに育て、言語能力と社会性を飛躍的に伸ばした経験を持つ。本書では、shizuさんが実践してきた子どもへの言葉かけや行動で効果があったものをまとめて紹介している。

 ABAを利用した働きかけを行うときののポイントは、まず子どもも親も「一緒にいると楽しい」と思えるいい親子関係を築くこと。そしてひとつの課題を細かくわけてスモールステップで成功体験を重ねる、ほめ言葉を上手に使う、できない課題は手助けをしてあげる、必ず成功体験で終わらせるといったことがあげられる。どれも子育ての基本と言えるものばかりだが、子どもの悪いところやできないことが目について叱ってばかりいる人は、自分自身が子育ての悪循環を招いていることに気づかされるだろう。

 そういう人に一番役に立つのは、子どもの叱り方や問題行動への対処法について詳しく説明している部分だ。「〜しちゃだめ」「〜しなさい」といった否定形や命令形の言葉をかけるのは、まったくの逆効果。肯定的な言葉をかけて「〜しよう」「〜してね」と言い換えるだけで、子どもは行動に移しやすくなる。

 子どもの問題行動はすべて目的があるため、それに合わせた対応をしなければエスカレートする可能性がある。体をやさしくトントン叩きながら1、2、3…と数を数える癇癪のしずめ方や、物を投げるなどの許しがたい行為をした時のクールダウンの仕方なども、イラスト付きで説明された事例があって具体的でわかりやすい。

 2冊目の『発達障害の子の「イライラ」コントロール術』(有光興記/講談社)は、イライラしてキレやすく学校や家庭で問題を起こしてしまう子どもへの対処法を知ることができる。友達とケンカばかりしている男子、勉強で他の子に負けると嫌がらせをする女子、突然キレて暴力的になる男子、勉強ができない苛立ちから家出を繰り返す女子……。こういったタイプの子には、ASD、ADHD、LDいずれかの傾向があることが多いため、その特性に合わせた対応が必要なのだ。しかしそれよりも先に取り組むべきは実は「親のイライラ対策」。そう言われて耳が痛くなる人も多いと思うが、それが実践できれば問題の大半は解決するといっても過言ではないだろう。子どものイライラをおさえるための第一歩は「親が子どもの話を聞くこと。ただそれだけです」というアドバイスは簡単なようで難しいことかもしれないが、常に忘れず肝に銘じておきたい言葉だ。親が子どもの悩みや苦しみを共有する一番の理解者であるために、何度も繰り返し読みたい本である。

15歳が大きな壁。それまでに身につけさせたい「ライフスキル」

 3冊目に紹介したいのは『15歳までに始めたい! 発達障害の子のライフスキル・トレーニング』(梅永雄二/講談社)だ。発達障害の子どもが社会で自立して生きていくためには、正しい生活習慣や一般常識の「ライフスキル」が必要になる。小・中学生の頃までは保護者や先生のサポートでなんとかなっていたことも、高校に入ると行動範囲が広がり主体的な行動が一気に増える。そのため、ライフスキルが身についていない子どもは周りに迷惑をかけたりトラブルに遭いやすくなったりするからだ。

 たとえば身だしなみを整える、部屋の片付けや持ち物の管理をする、金銭管理をする、自分に合った進路選択をする、外出した時は予定の場所に時間通りに移動する、対人関係の基本を身につける、法的トラブルや危険を避けるといったことができなければ、トレーニングする必要がある。「ライフスキル・チェックリスト」もあるので、事前にチェックするとやるべきことが明確になるだろう。

 本書では10種類のライフスキルのトレーニング法を、ASD、ADHD、LDそれぞれのタイプ別対策法もまじえて順序立てて説明しているためわかりやすい。部屋の片付け方ひとつとっても、LDの子で読み書きが苦手なら写真や絵や色で分類する、ASDの子は視覚的な情報が有効で文字情報も役立つ、ADHDの子には分類を示すだけでなくこまめに声かけする、といった具合である。ひとつ注意したいのは、完璧を目指さずにできることからひとつずつ取り組んで、最低限できればいいと親が割り切ること。そして困った時は家族や友人や先生など、人に頼ることも覚えさせることだ。

 長年、発達障害の人の就労支援活動を続けてきた著者の梅永雄二氏によると、「仕事がうまくいかない」という相談よりも多いのが「仕事以外の部分で困っている」という声だという。遅刻が多く服装も乱れがちで、体調不良を上司に伝えることもできないといった生活面での悩みをうまく解決できずに、安定して働けなくなる人が多いのだ。

 ライフスキルのトレーニングは、子どもが小さいうちからできるものもある。生活面での悩みが少なければ少ないほど、高校、大学、社会人へと成長していく過程で起こる問題も少なくなる。

 ここで紹介した3冊はどれもすべての子どもたちに応用できるものばかりだ。発達障害の子どもを持つ親だけでなく、子育ての仕方や親子関係に悩んでいる人、子どもの生活習慣や対人関係で悩んでいる人にもきっと参考になるだろう。

文=樺山美夏