苦手とするガンバ大阪に4−0と大勝を収め、浦和レッズが2ndステージ優勝にあと一歩に迫った。川崎フロンターレとの上位対決をモノにし、2位に浮上したヴィッセル神戸との勝ち点差は5。早ければ、次節にも優勝が決定する。

 一方で浦和は、年間勝ち点争いでも首位に浮上。すでに出場を決めているチャンピオンシップでは、年間勝ち点1位チームとして決勝で待ち受けるシナリオも現実のものとなりつつある。

 開始早々に先制点を奪い、後半立ち上がりにも追加点。相手が退場者を出して数的優位を手にすると、リスクマネジメントに気を配りながらも機を見て圧力をかけ、さらに2点を追加。G大阪にまるで隙を与えない、まさに完璧とも言えるゲーム展開だった。

 浦和がG大阪を凌駕していたのは、まず単純に局面の攻防だ。球際の争いで上回り、鋭い出足でセカンドボールをことごとくモノにする。攻守の切り替えの速さも光り、各エリアで数的不利な状況に持ち込まれることはほとんどなかった。

 前線からのハイプレスで出し手の自由を奪い、くさびに対しても激しく対応。59分にはDF槙野智章のチャージで倒されたG大阪のMFアデミウソンが報復行為で退場になったが、なかなかボールを収められず思うどおりにならない展開に、イライラを募らせた結果だろう。槙野だけでなくDF遠藤航も、好調を維持していたFW長沢駿をほぼ完璧に封じ込めた。

 一方で、G大阪対策というものも、浦和はしっかりと用意していた。昨年のチャンピオンシップ、天皇杯決勝を含め公式戦で4連敗中と、浦和はG大阪に負け続けてきた過去がある。何が原因で、どこを修正するべきか――。この日の浦和は、準備してきたものを完璧にピッチで体現していたと言えるだろう。

 攻め込みながらもミスからボールを奪われ、カウンターから失点するというのが、これまでのパターン。しかし、今回の対戦ではボールロストも少なく、たとえ奪われても素早いプレスとトランジションを実践し、カウンターからピンチを招く場面はほとんどなかった。

「そういったところは、今週のトレーニングでしっかりと準備をしてきた。大事なのは、自分たちが狙いとする戦い方を選手たちが規律を持って実行すること。今日の浦和レッズは規律という部分で、非常に高いレベルにあったと思う」

 ペトロヴィッチ監督も選手たちのパフォーマンスに賛辞を送るほどの出来だった。闘う意識で相手に勝り、チームとしての秩序も備わっていた浦和が快勝を収めたのは、ある意味で当然の成り行きだった。

 加えて浦和は、戦略的なたしかな武器も忍ばせていた。それはシャドーのMF武藤雄樹、ウイングバックのMF駒井善成、ストッパーのDF森脇良太による「右サイドの連携」だ。この日の4得点はすべて、右サイドが起点になって生まれたものである。

 より目立っていたのは、1得点・1アシストの武藤であり、キレ味鋭い突破で相手を翻弄した駒井だっただろう。しかし、彼らのパフォーマンスを引き出したのは、一見、無秩序に感じられた森脇のポジショニングにあったと思う。

 ストッパーでありながら、攻撃時にはまるでもうひとりのウイングバックのように高いポジションに顔を出す。このリスクを負った森脇の位置取りが、G大阪の最終ラインのバランスを崩していたのである。

 たとえば、駒井がサイドでボールを受ければ、通常は相手の左サイドハーフ(MF大森晃太郎)と左サイドバック(DF藤春廣輝)の2枚に囲まれる状況となる。しかし、森脇が高い位置を取ることで、サイドハーフがここをケアせざるを得ず、駒井はサイドバックと1対1の状況に持ち込むことができる。あるいはドリブル突破が難しい場合、駒井には森脇へのパスという選択肢も生まれてくる。やみくもに仕掛けて奪われるリスクを回避し、ボールを大事にする戦いが可能となっていたのだ。

 何度も右サイドを切り裂いた駒井は、その要因を次のように説明する。

「前半は大森(晃太郎)君が中にいて、仕掛けるのが難しいなと思ったけど、うまくモリ君(森脇)がサポートしてくれたので、無理せずにモリ君につないだり、武藤君とか(柏木)陽介さんにつないだりしながら、空いたところで藤春さんとの1対1に持ち込めたのがよかった」

 この3人が絡み、お手本のようなサイドの崩しを見せたのは、先制点の場面だった。森脇がサイドに展開し、駒井が藤春との1対1に持ち込む。大森が戻り1対2の状況になった瞬間、駒井は中央の柏木に横パスを通す。藤春がサイドに引きつけられたことによって生じたエリア内のスペースに飛び出した武藤が柏木からのパスを引き出すと、中に折り返し、FW興梠慎三がスルーしたボールを、ファーで待ち受けていたMF高木俊幸が押し込むだけのシュートを突き刺した。

「前半から右サイドでいい距離感でボールを回せていたし、わりと自由にプレーできていた。1点目は狙いどおり。みんなのイメージが一致していたと思うし、練習でやって来た形があれだけきれいに決まると嬉しい」

 アシストを決めた武藤も自画自賛する、完璧な崩しだった。

 この先制点だけでなく、駒井のタメから森脇が飛び出して右サイドを崩し、MF宇賀神友弥の3点目を演出した形も鮮やかで、多彩なコンビネーションでG大阪の左サイドを翻弄し続けた。

 右サイドの連携について問うと、森脇は胸を張って答えた。

「ドリブルもあるし、パスでも崩せる。駒井と武藤とで今日はいいトライアングルが形成できていた。二等辺三角形じゃなくて、正三角形のポジションを取るのが大事。崩しのバリエーションが増えているから、相手に絞らせない状況が生まれている。それが今のレッズの強みですね」

 自在な崩しを実現する「右の正三角形」が、浦和の快進撃にさらなる勢いをもたらしていきそうだ。

原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei