2、3、4の数字に注目「べっぴんさん」1話

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第1週「想いをこめた特別な品」第1回 10月3日(月)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎


今度の朝ドラ(95作目)は、神戸が舞台。裕福な家庭でおっとり育ったヒロインすみれ(芳根京子)が、戦争によって自立を余儀なくされ、ついには日本初の総合子供用品の会社をつくる。
「ものづくり」の心を大事にしたドラマになりそうだ。

第1回は、すみれがけっこう繁盛している会社の社長の次女として生まれたこと。言いたいことをうまく言えない不器用なところがあること。でも、はじめての刺繍がうまくできなくても頑張って再トライしようとする芯の強さをもっていること。お母さん(菅野美穂)は病気で入院していることなどが描かれた。

レビュー第1回は、キーになる3つの数字をあげておきたい。

べっぴんさんの「2」


ドラマのキーワードは「べっぴん」。
ヒロインの父親役・生瀬勝久が1話で早くも2回「べっぴん」と発する。
〈「生き方の美しいヒロインの姿」と「特別な品物」という、ふたつの意味を込めました〉と三鬼一希プロデューサーは「NHKドラマ・ガイド」で語っている。
「別嬪」と「別品」、ふたつの意味をもったこの言葉、もうひとつダブルの意味がありそう。決め台詞も兼ねたタイトルを狙ったのではなかろうか。
いままでの朝ドラには「じぇじぇじぇ」(あまちゃん)「びっくりぽんや」(あさが来た)「どおしたもんじゃろのう」(とと姉ちゃん)など、流行らせたい決め台詞が出てきたが、「べっぴんや!」「べっぴんだね!」みたいにふだん使える言葉がそのまま作品タイトルになるとは、なんてお得な! 

べっぴんさんの3


ふたつの意味をもった言葉を2回使った1話、時代は3つ盛り込んだ。
まず、昭和20年、終戦直後。赤ん坊を背負って涙するすみれ。
それから、時間が飛んで、昭和44年、すみれの会社の創業20周年記念パーティー。
最後に、昭和9年、すみれの少女時代。
この3つの時代を抑えておけばOKとガイドしてくれる親切設計である。

ここで名台詞


「人生とは自らが生きるところはどこか、探す旅だと思っています」
「自分の大切なものはなにか 譲れないものは何か」
「彼女達はただただお母さんと赤ちゃんたちを思い
ひと針ひと針縫い続けました
その心が多くの人たちを幸せに導いたのです」

すみれの姉の夫役・高良健吾が語るいい台詞が続いたあと、時代は昭和9年へ。

べっぴんさんの4


すみれのお母さん(菅野美穂)は手芸が得意なようで、可愛らしい四葉のクローバーの刺繍をすみれに見せて
「勇気、愛情、信頼、希望 それが全部そろうと幸せになれるの」と語りかける。
この4つの要素と、すみれと先述の3人の仲間(土村芳、百田夏菜子、谷村美月)が重なって見えた。
このへん、セーラームーンとかプリキュアとかまどかマギカとか集団少女アニメを意識しているのだろうか。

こんな感じで2、3、4の数字で1回目はわかりやすく観ることができた。
兵庫県出身のアーティスト・清川あさみによるタイトルバックとミスチルの歌「ヒカリノアトリエ」もいい感じで、神戸のお金持ちのおうちやべっぴんなお洋服やお母さんの刺繍の容れ物の内枠を虹色の刺繍糸で囲んであるのもすてき。
生瀬が演じるいらちそうなお父さんも、いいアクセントになっていて楽しい。
だが、すみれの学校で生徒が読んでいる「ゆず」という読み物はネットで検索すると、国民学校国語教科書『初等科國語六』のものだとわかり、内容は戦争に関するもので、キラキラのなかにやや影を描いているのだった。

最後にキアリスってなに?


「キアリス」というのがすみれとパーティー会場で並んでいる女性達(土村芳、百田夏菜子、谷村美月)がつくった会社。すみれと仲間、明美(谷村)、良子(百田)、君枝(土村)の名まえからとった造語。
モデルは神戸の老舗のベビー用品会社ファミリア。ただ、その名まえはオフィシャルの記事ではあまり出てこない。
制作発表でのプロデューサーのコメントは〈戦後、神戸で赤ちゃんの服、子ども服を専門に開業した、坂野惇子(ばんのあつこ)さんという方をモデルに、その家族と仲間たちがチーム一丸となって、子ども服作りにまい進し、やがてその子ども服の輪が、日本全国に広がっていく様子を描いていきたいと思っております。〉で、公式サイトでは〈「べっぴんさん」の原作はありません。脚本家・渡辺 千穂さんのオリジナル作品です。本作は実在の人物をモデルとしますが、激動の時代を生きた女性たちの人生の物語として大胆に再構成し、フィクションとしてお届けします。〉となっている。ガイドブックでも会社やモデルの紹介記事はない。
前作「とと姉ちゃん」が実在の会社の広告番組ともとられかねない内容だった分、今回は少々控えめか。

心ときめく娯楽作にしていただきたいです。
(木俣冬)