2-0で勝利したハンブルク戦後の一コマ。原口はヘルタ・ベルリンでは、チームプレーヤーとして確固たる地位を築いた。(C) Getty Images

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 上位争いをしながらも終盤に失速してしまった昨季のヘルタ・ベルリンだったが、今季はバイエルン・ミュンヘンに敗れたものの6節終了時点で2位につけ好調だ。
 
 下位に低迷するハンブルクをホームに迎えた10月1日の6節でも、原口元気は先発出場を果たし、そのポジションを確固たるものにしている。しかしチームは2-0と勝利を収めたものの、ゴールは決められなかった。
 
「自分がやるべき守備やボールをつなぐところは問題なくやれている。もちろんそれは昨シーズンも出来ていたことだから、今シーズンはその先の一個、何かやることを目指しているんで……。それが出来ないと悔しいですね」
 
 欧州でプレーする日本代表選手のほとんどが、試合出場から遠ざかるなか、順調にチームからの信頼を掴み、成長を遂げているように見える原口ではあるが、「現実は試行錯誤の毎日だ」と話す、その理由について考えてみた。
 
 この春、インタビューした際には、「まずは出場機会を得るために、自分の得意なプレーでなくチームのために仕事ができることを示さなくちゃいけない」と話していた。その意識の変化が、彼の存在価値を示す結果となったのだ。確かに自身の最大の武器でもあるドリブルを披露する場面は少なくなったが、攻守に渡る献身的なプレーで評価を高めた。
 
 浦和レッズ時代に見せた奔放で強引なプレーは影をひそめ、組織の一コマとして、機能する姿は原口の新たな可能性を見せてくれた、そんな“仕事”を果たしたにからこそ、代表でのボランチ起用にもつながったのだろう。そのうえで、当時から、「その先にあるストライカーとしての役割を果たすことを諦めたわけじゃない」と話し、点取り屋としての活躍を虎視眈々と見据えていたのも事実だ。
 
 そして迎えた今季も左アウトサイドで先発起用が続いている。
 
 しかし、9月24日のフランクフルト戦では、ほとんどパスが来ず、逆サイドで展開される攻撃を見守ることしかできなかった。
 
「ボランチに対してパスを要求はしているけれど、『左足は使えないから』と言われてしまう。それでもあきらめずに要求し続けるしかない」
 
 このフランクフルト戦は、3-3の引き分けに終わっている。チーム内には内容の修正以上に「勝っているんだから、このままで良い」という空気も漂うだろう。だから、原口の要求はすんなり受け入れてもらえないかもしれない。しかし、それでも……、「言い続けるしかない」と原口は言うのだ。
 
 ストライカー、点取り屋としての評価を上げるには、ゴールを決め続けることはもちろん、常にゴールの匂いをさせなくてはならない。身体能力に長けた欧州でプレーするゴールゲッターたちのほとんどが、自分のゴールのことだけを考えてプレーする。たとえそれが傲慢に映ったとしても、「ゴールを決める選手だから」と周囲は認識し、「よし決めてくれ!」とばかりに自然とボールが集まってくる。
 
けれど、日本人選手にはそんな点取り屋ほどのフィジカルの強さがない。一芸名人のような欧州の選手たちに比べると、出来ることが多い日本人選手の多様性は、ひとつの武器だ。指揮官はそんな汗もかける日本人選手を起用することで、チーム内のバランスを保ち、円滑に試合が進むことに期待を寄せる。
 
 結果、たとえFW登録であっても、MFのような仕事が求められ、それをこなすことで、ポジションを手に入れる。昨季の原口はこの時点まで来ていたはずだ。
 
 そして今、そこから先のストライカーとしての存在価値を示したいとは願っているが、指揮官を含めて周囲の原口に対する認識はなかなか変えられないのではないだろうか? ゴールから離れた場所での仕事を余儀なくされ、いわゆる美味しいところは生粋のストライカーが決めてしまう。そういう空しさを原口は今、感じているかもしれない。