関連画像

写真拡大

ゆとりある老後を送るため、夫婦で必要な生活費は「30〜34万円」。日本生命保険によるアンケート調査(2016年9月公表「敬老の日と老後・相続」)の結果によれば、調査対象1万271人の3分の1にあたる37.3%がそのように考えているそうだ。

元気で働き続けたり、不動産収入があったりする人は例外として、大半の人は、老後は年金と預貯金にたよって生活する。しかし、預貯金は生活費に使いたくないのも本音だろう。ゆとりある老後を送るために、年金はどの程度もらえるのだろうか。また不足分に備え、現役世代は何ができるのだろうか。蝦名和広税理士に聞いた。

●結局、どんな人が有利なの?

結論から言えば、「月額30〜34万円」の年金をもらえるような夫婦とは、長年にわたって夫婦そろって正社員として働いてきた会社員や公務員の夫婦くらいです。

日本の公的年金は、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の「2階建て」だと言われます。「国民年金」が、20歳以上60歳未満の日本人すべてが加入するのに対し、「厚生年金」は、企業の正社員や公務員などのみが加入するものです。

つまり「2階建て」になるのは、会社員や公務員のみ。フリーランスや自営業の人は、1階にあたる国民年金のみとなるのです。国民年金(基礎年金)の支払い額も受け取り額も定額ですが、厚生年金は、月給に対して保険料率が異なり、支払う金額も受け取る額も異なります。

厚生労働省の発表によれば、平成28年度の平均支給額は次のようになっています。ちなみに「国民年金」とは支払う時の名称で、受給する時には「基礎年金」となります。

・基礎年金のみ:月額約6万5000円

・基礎年金+厚生年金:月額平均15万6000円

これをもとに試算すると、夫婦ともに基礎年金、厚生年金の両方がもらえる家庭では、「ゆとりある老後」が実現することが多いようです。

・夫婦ともに正社員:月額平均31万2000円

では、専業主婦世帯はどうなるのでしょうか。

【夫は会社員、妻は専業主婦・田中夫妻の場合】

妻が専業主婦であっても、年金はもらえます。たとえば、夫が40年間会社員だった田中さん(仮称)の例を検討します。田中さんの現役時代の平均標準報酬〈賞与含む〉は月額換算で42.8万円でした。妻は結婚以来、専業主婦です。

それを基に試算すると、

・平均月額22万円(基礎年金・厚生年金)

の年金がもらえることになります。

夫婦で「月額30〜34万円」の年金収入を得るためには、多くの家庭で、国民年金(基礎年金)に上乗せをする必要があります。会社員が加入できる「厚生年金」や「企業年金」のほか、「国民年金基金」、個人型「確定拠出年金」などの「私的年金」があげられます。

●大卒後、正社員を続けてきた夫婦の場合

では、具体的に検討をしていきましょう。

前述したように、基礎年金の受給だけでは夫婦で「月額30〜34万円」には到底、届きませんが、厚生年金の額によっては、届くこともあります。

例えば、夫婦そろって、新卒で22歳から定年60歳まで継続して勤務(正社員)をした山田さん(仮称)の例を検討してみましょう。

【共働きの正社員・山田夫妻の場合】

・夫:現役時代の平均年収700万円(うち賞与150万円)

   →65歳時点の年金:月額約19万円

・妻:現役時代の平均年収は400万円(うち賞与100万円)

   →65歳時点の年金:月額約13万円

山田さん夫妻は合計で、32万円の年金受給(基礎年金・厚生年金)となります。アンケート調査の「ゆとりある老後を送るため、夫婦で必要な生活費」に届きます。

しかし、山田さんのような例は、少ないでしょう。妻が専業主婦だったり、パートやフリーランスなどで厚生年金をもらえない場合には、夫婦で受け取る年金額は上記の金額を下回ってしまうのが実情です。

●「確定拠出年金」への加入

しかし、増やすこともできます。現役世代が検討するべき方法として、「確定拠出年金」の活用があげられます。

確定拠出年金は、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せして給付を受ける「私的年金」の一つです。加入者自らが運用し、掛金とその運用益との合計額をもとに将来の給付金額が決定される仕組みのものです。掛金全額が所得控除となり、所得税・住民税の節税、運用益は非課税といった税制上のメリットもあります。

前述した、平均的な専業主婦世帯を想定がどう増やせるか、検討してみます。

【夫は会社員、妻は専業主婦・田中夫妻の場合】

田中さんの現役時代の平均標準報酬〈賞与含む〉は月額換算で42.8万円。それを基に試算すると、夫婦あわせて平均月額22万円となりました(基礎年金・厚生年金)。

夫婦で必要な生活費である月30万円に近づけるために、やるべきは2点です。

・30歳から60歳まで確定拠出年金に加入

・掛金2万3000円、運用利率3%と仮定

その結果が次の運用成績となります。

・積立元金と運用益で合計約1,340万円

・60歳以降、5年〜20年の間で取崩して受給

・仮に20年で取崩した場合は月額約5万5000円

22万円+5万5000円で、27万5000円が入ってくるとの試算結果が出ました。

●自営業者の場合は?

自営業者の場合、国民年金のみの受給となります。前述の厚生労働省の発表によれば、国民年金の老齢基礎年金は、月額約6万5000円ですから「ゆとりある老後」には届かないでしょう。そこで、自営業者はより私的年金を活用する必要があります。

中でも、自営業者に確定拠出年金を勧めたい理由が、掛け金額が多くなる点です。厚生年金の加入者の場合、確定拠出年金の掛金は上限でも2万3000円ですが、自営業者は6万8000円までかけることができます。

【自営業者・鈴木夫妻の場合】

・30歳から60歳まで確定拠出年金に加入

・掛金上限の6万8000円、運用利率3%と仮定

その結果として、

・積立元金と運用益で合計約3,960万円

・60歳以降20年間で取崩した場合、月額約16万円

基礎年金の6万5000円×2人で13万円。これに16万円を足せば、29万円となりますね。

上記の試算結果はあくまでシミュレーションであり、運用結果によっては大きく運用益がでたり、またはその逆で損失がでてしまうことも考えられますが、月30万円に近づけることは可能といえるでしょう。

●「確定拠出年金」など「私的年金」の活用を

なお、上記のシミュレーションは現時点の情報をもとに試算しています。現在、若い世代の方々が年金を受給する時代、この金額であるとは言い切れません。しかし、目安にはなるでしょうし、私的年金の必要性は変わらないはずです。

今後も法改正や、多様な制度が創設されていくことになると思います。私的年金を活用することで、年金の受け取り額は増えていきますし、確定拠出年金のように節税できる制度もあり、積極的な活用をしていくべきでしょう。

自分が老後の何年間に、いくらの年金を受取りたいのか、また、そのためにこういった制度をどのように活用していくか、皆さんも一度検討してみてはいかがでしょうか?

【取材協力税理士】

蝦名 和広(えびな・かずひろ)税理士

特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はクレー射撃、一児のパパ。

事務所名 : 税理士・社会保険労務士・海事代理士・行政書士 蝦名事務所

事務所URL:http://office-ebina.com

(弁護士ドットコムニュース)