フィギュアスケートのジャパンオープンは、宇野昌磨、宮原知子らを擁した日本が2年連続8度目の優勝を飾った。今季は2018年平昌五輪のプレシーズン。この大会の前に行なわれた国際B級大会に出場してきた日本勢の仕上がりは上々のようだ。

 シニア参戦2季目となる宇野は、まだ完璧には習得していない4回転フリップを国内で初めて成功させた。宇野はすでに昨季の最終戦となった4月のチームチャレンジカップで、国際スケート連盟の公認大会では世界で初めてこの4回転フリップを成功させている。この偉業は世界ギネス記録にも認定され、宇野にとって2種類目の4回転ジャンプが今季の戦いの中で大きな武器となることは間違いない。

「昨年の大会同様に、いい演技をして優勝できて嬉しい。4回転フリップの成功は嬉しい以上にホッとした気持ちです。今季はたくさんの試合で1回でも多く(4回転フリップを)成功させられるように練習でしっかり取り組みたい。ギネスの記録に残れて嬉しいです。今後は記憶にも残れる選手になれるように頑張っていきます」

 フリー『ブエノスアイレス午前零時』の冒頭で跳んだ4回転フリップは見事なジャンプだった。回転速度もキレも申し分なし。GOE(出来栄え点)で2点の加点がついたほどだ。

 2つ目の4回転トーループでは転倒してしまったが、その後に跳んだすべてのジャンプでGOE加点がつく質の高さを見せつけた。技術点で109.55点をマークするなど、非公認ながら自己ベストを上回る198.55点を叩き出して、世界王者ハビエル・フェルナンデスに6.35点差をつけて男子トップに立った。

「練習よりも悪かったわけでも練習以上でもなかった出来でした。4回転トーループの失敗はありましたが、ちゃんと回った転倒だったので今後につながるミスです。4回転フリップはいいジャンプができて成功することができました。曲の最後までジャンプがきれいに跳べたことはよかったですが、プログラム後半のつなぎがジャンプ、ジャンプだけになってしまい、つなぎの表現力が少なかったと感じました。ジャンプができてきたので、次のステップに入っていきたいです」

 今夏は米国シカゴで約2週間の強化合宿を行ない、自分の限界の幅を広げる練習に取り組んできた。体力をつけるとともに、ジャンプ強化の一環として4回転トーループだけでフリープログラムの通し練習を繰り返した。過酷なトレーニングを耐え抜いて心身ともにレベルアップを図ったことが、実戦での成果に繋がっていることが分かる戦いぶりだ。

 同時期にカナダで開かれたオータム・クラシックで、五輪王者の羽生結弦が世界初の4回転ループに成功させるなど、日本男子2人が4回転時代の先導役になっている。羽生の背中を追いかける宇野は、どこまでも謙虚に、そして人一倍の意欲も持って、群雄割拠の男子シングル界で大きな目標を掲げて戦っていく覚悟だ。

「ゆず君はいまでもずっとあこがれの選手で、でもいつかは超えたい選手です。これからも日本男子を引っ張っていくのはゆず君で、僕はついて行って、いつか追い越せたらいいです。4回転についてはフリップとトーループの完成度がだいぶ上がってきているので、フリップに不安がなくなってきたらループにも取り組んでいきたいと思っていますが、まだいつになるかは分かりません」

 滑るごとにひと味もふた味も魅力が増し、多彩なジャンプ構成を見せてくれる宇野の今季が楽しみだ。

 女子も負けてはいない。全日本女王の宮原知子は、持ち味の安定感あるジャンプを見せて、非公認ながら自己ベストをわずかに上回る143.39点を出す演技を見せた。

 今季のフリー『惑星〜スターウォーズ』は、曲調に大きな変化がない4つのパートからなり、より表現力が問われるプログラムになっている。宇宙をイメージしたテーマも壮大で「平和と愛」。メリハリのある演技を出せるかどうかが腕の見せどころになる。宮原自身は「まだ滑り込んでいない感じがある」と、グランプリ(GP)大会初戦のスケートカナダまで、表現力に力を入れていくという。

「フリーを試合で滑るのは、この大会で2度目ですが、自分の滑りはできたので、今季のいいスタートは切れました。まだ緊張すると練習ほどいい演技ができていないので、緊張したときでもジャンプをしっかり跳んで、表現面で自分の思いが伝わるような大きな演技ができるような練習をしていきたいです」

 今季の目標は「進化」すること。ショートプログラム(SP)でもフリーでも新しい世界観を出していきたいと意欲を見せていた。

 その宮原を脅かす存在として注目されるのが、今季シニアデビューを果たす樋口新葉である。3週間前にイタリアで行なわれたロンバルディア杯で初優勝を飾って、初のシニアシーズンを幸先よくスタートさせた15歳。だが、昨季の世界選手権トップ5が勢ぞろいしたジャパンオープンでは、少々気後れもあったようで、本来の実力を発揮できなかった。得点源のジャンプで2つのミスを出し、演技構成点では最下位の59.82点。116.99点で5位の成績に終わった。

 冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループは成功させたが、中盤の同じ連続ジャンプが単独の1回転ルッツになるなど、技術点が伸び悩んだ。それでも、自分の強みであるスピードはシニア勢にも引けを取らないことが分かり、表現力もついてきていることを実感していた。

「チーム戦は初めてだったのですごく緊張したんですけど、シーズン前半にしてはまあまあの演技ができたと思います。今回は大きく手足を使うことができたし、ジャッジや観客に笑顔を見せて顔の表現もできたのはよかったです。今季はGPシリーズで安定した演技ができるように、練習から大きなミスをしないようにしていきたいです」

 今大会では世界のトップ選手からオーラを感じたというが、本格参戦するシニアでの戦いは「わくわくして楽しみ」と言う。度胸のある樋口の活躍も大いに期待したいところだ。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha