■ヤバイぞ、アジア最終予選2
〜杉山茂樹×浅田真樹(後編)

浅田:目先の勝敗は別にしても、日本がある時点から下降線に入っているのに対して、他の国が上昇傾向にあるということは、予選の1、2戦を見てもはっきりしたと思います。ハリルホジッチ的に言うと、そうなってしまう原因のひとつはコンディションのせいで、特に海外組は「シーズンが始まったばかりでコンディションが悪かった」と言っていましたが。

杉山:Jリーグ勢のコンディションも悪いと言っていた。シーズンが始まったばかりだから悪くて、シーズン半ばで悪いんだったら、いつがいいんだって(笑)。ハリルホジッチはさかんにコンディションがよくないと言います。でも、海外組が日本に来るのは大変かもしれないけど、中東のチームが日本に来るのだって大変ですよ。

 第三者が見て「こっちのほうが不利」などと言うのはいいけど、相手と天秤にもかけずに、すべてを自分たちのコンディションの話にすりかえて言うのは、僕から言わせたらダメな監督の象徴です。監督が言い訳をするのは商売みたいなものだけど、ハリルホジッチへの期待ということでいうと、その言い訳は代表監督として危ないんじゃないかという気はしました。

浅田:コンディションについていうと、海外組の選手が一部を除いて軒並み試合に出られていない。そんな状況で本当にコンディションが上がっていくのかという問題もあります。

杉山:まともに試合に出ていないということは、その時点でわかっている話ですよね。それでも招集して起用するからには、コンディションのせいにはできないはずです。コンディションが悪いなら使わなければいい、というだけの話だから。でもそれを使わざるを得ないというのは、本来はコンディションの問題ではなくて、他に代わる選手がいないということでしょう。そしてそれはこれまで新戦力をテストしてこなかった監督の責任だということになる。

浅田:なんかジーコのときに似ているんですよね。海外組がいるんだけど、あまりクラブでは試合に出られない。それなのに日本代表にくると優遇されて、無条件で出てしまう、みたいな。ああいうのは見ていてもしらけるし、もし国内組の選手たちもそういうことを感じるようになったら、チームとして結構ヤバいですよ。

杉山:特にいま具合が悪いのは、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司といった、これまで何となく不動のレギュラーっぽかった選手がまったく試合に出られなくなったこと。今シーズンは清武弘嗣がたぶん一番レベルの高いスペインに行って、彼も出たり出なかったりしているわけだけど、それでも清武のほうが出場率は高いぐらいでしょう。

 その清武は4−2−3−1の3の左のポジションを原口元気や宇佐美貴史と争っている。宇佐美もほとんどクラブでは試合に出てないけれども、一方で右と中央の本田と香川は不動。そのヒエラルキーが確かにジーコ時代にちょっと似ている。

浅田:むしろイキのいい選手をごちゃごちゃ競わせといて、こっちは安泰なのかよ、と。UAE戦に負けた後、大島僚太のプレーに関して、監督からも他の選手からもネガティブな反応が出ていたでしょう。本当なら「ミスなんか気にしなくていいから思い切ってやれよ」と言われるべき若い選手が一番虐げられている。

杉山:なんで代表デビュー戦があの試合なの、というハリルホジッチの大失敗でしょう。以前にも大島は代表に選ばれているけど、使っていない。そもそもPKを取られたのは大島だけど、あのシーンは、FWがひとりでキープしているところへ3人も集まっていって相手の思うツボになり、最後に尻拭いのように引っ掛けざるを得なかったわけでしょう。

浅田:さらにさかのぼれば、長谷部誠のとんでもないミスパスから始まったわけだし。

杉山:絶対に代表のレベルに達してないミスです。そんな長谷部や吉田麻也のことは棚に上げて、全部、悪いのは大島だという話になっている。一番叩きやすいからね。そんなことをやっていたら若い選手は伸びませんよ。

浅田:同じメンバーでずっと戦ってきた悪しき慣習みたいなものが出てしまっているし、そこに対して誰も何も言えなくなっている。もちろんある選手を全否定することはないし、やっぱり本田は必要だという意見はあってもいいけど、例えばタイ戦を見ていても、どう考えても本田のところで攻撃がスピードダウンするし、今までだったらボールをキープできたところで簡単に取られてしまっていた。「本田おかしいよね」という話が出てこないのは不健全ですよね。

杉山:身体の動きでいうと、本田は後半の25分ぐらいからはもうどうにもならなくて、動きがドタドタになっていた。そもそもポジショニングがおかしい。一番動けない選手が"オレ様サッカー"をやっている哀れなチームに見えました。長谷部もタイ戦ではあり得ない奪われ方を5回ぐらいしていた。その瞬間、ピッチのあちこちで起きる選手の反応が「あり得ない」というものでした。以前は1試合で1〜2回だったそんなミスが、4〜5回に増えている。代表チームというのは別に永遠の集団ではなくて、常に新陳代謝するもの。入口があれば出口もあるわけで、いつ外すかという出口をいつも考えておかないといけない。

浅田:ジーコ時代にも言われていたことだけど、もう少し海外組と国内組を、ターンオーバーとまでは言わなくても、使い分けるような発想があっていいのかもしれませんね。中東での試合は海外組中心で、その前の日本での試合には彼らを呼ばないで国内組中心でやるとか。

杉山:右肩下がりの話は選手自身の問題だけど、それとは別に監督の問題もあります。選手が右肩下がりだったら、監督がそれを救わなければならないんだけど、監督にそんな感じがしない。むしろオーストラリアのほうが、ちょっと世代交代が遅れているのを監督が救っているところがある。だから必要以上に力が落ちてないんです。

浅田:確かにハリルホジッチが就任して1年半になるけど、積み上がったものが何もない感はすごくあります。

杉山:この人は何をしたいのかというのがわからない。何度も言うけど、サッカーの質がよくなっていないし、采配にも結構、首をかしげるところがあります。なんでタイみたいな相手に浅野拓磨を使うんだろう。浅野のよさは特別な技術にあるわけじゃなくて、スピードでしょう。10メートルぐらいはないとその速さは生きないんだけど、あの試合で10メートル走る領域はないわけじゃないですか。しかもセンターフォワードで使うのは、ちょっと違うと思う。

 もちろんこういったことはハリルホジッチだけの問題ではなくて、トータル4年間のビジョンが何もない強化委員会の問題でもあるのですが、もし監督を交代するなら、このイラク戦、オーストラリア戦の後というのはひとつのタイミングになると思います。オーストラリアに敗れたら、当然そういう声が出てくるでしょう。11月のサウジアラビア戦は暫定監督でもいいし、新監督を選ぶ時間は十分ありますから。

text by Sportiva