◆ヤバイぞ、アジア最終予選2〜杉山茂樹×浅田真樹(前編)

浅田:W杯アジア最終予選は心配していた通りの展開になりました。ただ、1、2戦は苦労するとは思っていたし、UAEとの引き分けは十分あり得ると思っていたけど、負ける可能性はそんなに高くないと思っていました。ましてや1点先制してから逆転されるというのは、確率的に相当低いというか、いくら「危ない、危ない」とは言っていても、そこまでは想定してなかった。

杉山:面構えからして向こうのほうが上だったね。図々しいというか、そんなに弱いつもりでやってない。日本は負け方が悪いんですよ。同じ1−2で負けても、「もう1回やったら絶対勝てる」という1−2と、「次もヤバいよ」という1−2があるんだけど、明らかに後者なんです。だから、ただ負けただけの問題ではない。

 タイ戦もダメでした。僕はタイがもう少し強いかと思っていたけど、弱かった。ちょっとうまいんだけど虚弱体質で、3人で行けば潰れちゃうみたいなサッカーだから、負ける恐れはなかった。そんな最も戦いやすい相手に、2点しか取れない。しかも1発、思いっきり危ないシーンがあったでしょう。あれが入っていたら大事件。日本サッカー界は今頃、お通夜ですよ。誰も言わないけど、GK西川周作の大殊勲です。

浅田:現地で見た日本戦の2試合だけじゃなくて、各チームが2試合ずつやったのをざっくりテレビで見た印象で言うと、今回、グループBでW杯に行けそうなのは、僕はオーストラリア、日本、UAEの3カ国じゃないかと思いました。そこからサウジアラビアがちょっと落ちて、イラク、タイはさらにもうちょっと落ちるかな、という感じ。ただしそれほど全体の力の差はないから、取りこぼす可能性は十分にある。だから上の3カ国の直接対決はもちろん重要だけれど、逆に言うとそれ以外の国にいかに取りこぼさないでいくかというのがカギになってくるのかなというイメージです。

杉山:UAEに負けたわけじゃないですか。でも全体の順位で言うと、日本が3位でUAEが4位。日本より上に2ついることが問題で、2位までに入るということを考えると、UAEが1位だったら何も問題はないんだけど、UAEに負けたのにUAEが自分たちより下にいるということで、簡単な話ではなくなってきた。

浅田:3強の直接対決で、日本がホームで負けているというのは、後々響いてくる可能性はありますね。単純に直接対決でいえば、2節でオーストラリアはUAEに勝っているから、オーストラリア2勝、UAE1勝1敗、日本1敗。日本が次にオーストラリアに勝てばみんな1勝1敗になるけど、日本が負ければ日本2敗、オーストラリア2勝、UAE1勝1敗と、そこで完全に1歩遅れることになる。だからオーストラリア戦の意味がでかくなっちゃいました。

杉山:もしオーストラリアにアウェーで負けて、UAEとのアウェーも危なそうだという話になってくると、完璧に3番手ムードが漂ってくるでしょう。で、僕はサウジアラビアもそんなに捨てたものではないと思うんですよ。力的にはUAEとサウジはそんなに変わらない。試合を見たけど、昔のように変に引くことはないし、オーソドックスなサッカーをやってくる。監督はファン・マルバイクでしょう。いちおうオランダのW杯準優勝監督ですから、そんなに引いてくるわけがないんです。そんなチームがただ弱々しく散っていくとも思えない。

浅田:第3戦はイラク戦。僕はこの10月の2試合は、日本はわりと戦いやすいと思っていましたし、それは今も変わりません。イラクも力は間違いなくあるんです。個々のタレントもいるし、強いチームなんだけど、やっぱり国の置かれた状況とかがあって、ホーム&アウェーになると力が出せない。2007年のアジアカップで優勝したし、去年のアジアカップでも3位になっているし、U‐23だって3位になってオリンピックに出ている。ああいう集中開催の大会では力を出せるんだけど、ホーム&アウェーになるとそれが発揮できない。そういう意味では戦いやすい相手だと思うので、ここでやられるようだと話にならないんですけど。

杉山:イラクはちょっとひ弱なところがあるけど、元来いいサッカーする国です。勝てないけど清涼感のあるサッカーをしていて、見た後、「いい感じだよね、このチーム。頑張れよ、弱いけど」という。

浅田:イラクはそんなに極端に引いて守ることはしない。わりとガップリ組んでくると思うので、そういう意味でも日本はやりやすいと思います。

杉山:そう。ただ、それに負けたら本当に弱いということになる。

浅田:だからイラク戦の勝利は前提として、やはり勝負はオーストラリアですよね。アウェーのオーストラリア戦が戦いやすいと言っていたのは、最悪そこは引き分けでオッケーという発想でよかったからなのですが、ちょっと今の状況を見ると、負けは問題外ですけど、引き分けでもオッケーではない、という感じになってきました。

杉山:まだティム・ケーヒルとかが出ているぐらいだから、オーストラリアも一時の勢いはないんだけど、監督はいいですよ。アンジェ・ポステコグルーが落ち着いたサッカーを見せている。日本とオーストラリアではどちらの戦力が上かということも確かに重要ですが、僕が言いたいのはサッカーの質の問題です。オーストラリアのサッカーの質は明らかに日本よりいいです。向こうのメンバーとこっちのメンバー比べて「ちょっとこっちのほうがいいんじゃない?」と思っても、サッカーはそれだけでは決まらない。工夫すればそんなものはすぐ逆転できるわけで、その危険はありますよ。

浅田:オーストラリアがどう出てくるかは、日本の現状を測る上でのバロメーターにもなります。オーストラリアが、「やっぱり日本は強いし、自分たちは2連勝してるのだから、そんなに無理する必要ないや」と、最悪引き分けでオッケーみたいな戦いをしてくるのか、「全然、日本は怖くない」と圧倒しようとしてくるのか。今までのオーストラリアは、日本相手にはわりと慎重に戦ってきたじゃないですか。そんなにガッツリこない。

杉山:そうそう。傾向として2対1ぐらいの試合をやるよね。力に差があっても、2対1ぐらいで収めようとする。

浅田:特に日本でやる時なんかは、わりと守って、「0−0でオッケーです」みたいな試合をしていた。そのオーストラリがどう出てくるか。「怖くねえぞ」と向かってきておかしくない状況ですよね。事実、UAEなんかも、アジアカップで対戦したときよりは明らかに「日本は怖くない」というスタンスで戦っていました。リードしてからは引きましたけど、それまでの戦いはまったくノーマルにやっていた。

 そういう意味で、ライバルたちは「日本、恐れるに足らず」というスタンスに基本的には変わってきている。結果とは別に、オーストラリアがどう出てくるかで、日本が今どう見られているかという立ち位置みたいなものが分かるのかなという気がします。
(つづく)

text by Sportiva