遥かなるツール・ド・フランス 
〜片山右京とTeamUKYOの挑戦〜
【連載・第93回】

 ツール・ド・フランスで通算8度のステージ優勝を成し遂げ、世界選手権・個人タイムトライアル(TT)は4度制覇。今年8月のリオ五輪でも個人TTで金メダルを獲得したファビアン・カンチェラーラが日本にやってくる。世界最高峰のパンチャーを相手に、TeamUKYOはどんな戦いを挑むのか?


 10月、日本のサイクルロードレース界は1年のうちで、もっとも大きな盛り上がりを見せる。国内シリーズ戦のJプロツアーがシーズン終盤に差し掛かり、チーム総合と個人総合のタイトル争いが熾烈になることに加え、大きな国際的イベントも開催される。

 アジア唯一のワンデー超級レース「ジャパンカップ」と、ツール・ド・フランスを運営する主催者A.S.O.がさいたま市と共催する「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」だ。

 今年のジャパンカップは、10月22日に栃木・宇都宮駅前の大通りを封鎖してクリテリウムが、23日には森林公園に舞台を移してロードレースが開催される。ワールドツアーチーム勢からは、トレック・セガフレード(アメリカ)、BMC・レーシングチーム(アメリカ)、キャノンデール・ドラパック(アメリカ)、ランプレ・メリダ(イタリア)、オリカ・バイクエクスチェンジ(オーストラリア)、チーム・スカイ(イギリス)の6チーム、プロコンチネンタル勢からはNIPPO・ヴィーニファンティーニ(日本/イタリア)、チーム・ノボノルディスク(アメリカ)という錚々たるラインナップが顔を揃える。

 特に今年の大きな注目は、土曜のクリテリウムレースに参戦するトレック・セガフレードのファビアン・カンチェラーラ(スイス)だ。35歳のカンチェラーラは、これをもって引退レースとすることをすでに公言しているだけに、世界中から大きな注目を集めることは必至だ。昨年のクリテリウムでは別府史之(トレック・セガフレード)が優勝し、会場を埋めた日本のファンをおおいに喜ばせた。

 日曜のロードレースでは、2015年=バウク・モレマ(オランダ)、2014年=ネイサン・ハース(オーストラリア)、2013年=ジャック・バウアー(ニュージーランド)、2012年=イヴァン・バッソ(イタリア)と、名だたる顔ぶれが優勝者に名を連ねており、これを見るだけでもジャパンカップのレベルの高さは容易に推し測ることができる。

 TeamUKYOは、昨年のレースで畑中勇介が新城幸也(あらしろ・ゆきや)に次ぐ日本人2番手フィニッシュで10位に入っている。今年はそれ以上の結果を目指したい、とチーム代表の片山右京は強い意気込みを見せている。

「ワールドツアーチームから参戦する有名選手たちの胸を借りて走るのが精一杯のところで、普通は無理でしょ、と思われるかもしれないけど、ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)だって絶対に勝てないと思われていたところから優勝を勝ち取ることができました。だから、どこまで勝負できるかは別としても、走る以上は当然、狙っていきます」

 TeamUKYOの選手ラインナップはまだ決まっていないが、おそらく、TOJを制したオスカル・プジョルやベンジャミン・プラデス、スプリント力に定評のあるジョン・アベラストゥリたちはメンバーに入ってくるものと思われる。

「具体的にはまだ決めていませんが、TOJのときみたいにオスカルはすでにジャパンカップに向けて集中しているし、土曜のクリテではジョンだってスプリント能力を発揮してくれるでしょう。カンチェラーラの引退レースだからといって、一歩引いてご祝儀にするのではなく、しっかりと実力を出して空気を読まないくらいの勝負をするのが礼儀だと思うんですよ。逆に、しっかりとチームとしての動きを取りながら挑んでいかないと、おそらくまったく歯が立たない。ジャパンカップというのは、それくらいレベルの高いレースです」

 宇都宮のジャパンカップから1週間後には、今年で4回目を迎える「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」が10月29日に開催される。出場選手は、今年のツール・ド・フランスで総合優勝を果たしたチーム・スカイのクリス・フルーム(イギリス)をはじめ、ポイント賞を獲得したティンコフのペーター・サガン(スロバキア)、第4ステージで勝利を挙げたエティックス・クイックステップのマルセル・キッテル(ドイツ)など、スーパースターの名前がずらりと並ぶ。10月の自転車イベントとしてすっかり定着した感のあるこのレースは、今年もファンには見逃せないものになりそうだ。

 これらの大きなイベントと平行して、10月はJプロツアーも大詰めを迎える。9日には輪島ロードレース(輪翔旗)、翌週の15日と16日は南魚沼で2日連続開催のロードレース。ジャパンカップを挟んで、10月最終週は大分で29日にクリテリウム、30日に年間最終戦のロードレースが開催される。

 TeamUKYOは現在、チームランキングで首位の宇都宮ブリッツェンに対して僅差の2番手につけている。それだけに、これらのレースも取りこぼすことなくしっかりと抑え切って、首位の座を奪還したいところだ。

 また、視野をアジアに向けると、現在のUCIアジアツアーでTeamUKYOはシングルポジションにつけ、アジア総合4位を射程圏内におさめて他のアジア各チームとランキングを争っている。

「アジアがグローバルになってきて、レースのレベルもどんどん上がってきているけど、僕たちの目標はアジアじゃない。だから、次はUCIのヨーロッパシリーズでトップ10やトップ3を目指し、ワールドツアーのジュニアチームみたいところと戦いながら、そこで選手が加入したり移籍したり、ということができるくらいになるのが、僕たちの目指す場所への本当の入り口なんだと思います。でも、3年前はこんな話もできるようなレベルではなかったですから(笑)。

 この状態を具現化してきてくれたのは、選手たちです。だから、毎年しっかりと10パーセントずつでも進歩できているのは、今後に向けた好材料ではあると思っています」

(次回に続く) 
連載『遥かなるツール・ド・フランス』は毎月下旬に掲載予定

西村章●構成・文 text by Nishimura Akira