WEEKLY TOUR REPORT
■米ツアー・トピックス

 2015−2016シーズン最終戦のツアー選手権(9月22日〜25日/ジョージア州)を5位でフィニッシュした松山英樹(24歳)。PGAツアー本格参戦3年目となる今季、ツアー1勝、フェデックスカップ・ランキング13位、そして賞金ランキング9位(獲得賞金は約4億1900万円)と、自己最高の成績をマークしてシーズンを終えた。

「(1試合)勝てたのはよかったと思うけれど、いい1年だったという思いはないですね。もう少し自分が思ったプレーができるようにしたい。自分の納得できるプレーができて、結果がシードぎりぎりでも、それは仕方がないと思えるからです」

 キャリアハイの結果を踏まえれば、なんとも不思議な"総括"だった。しかし、今シーズンを悔しそうに振り返る松山の顔をじっと見ていたが、どうやらそれが、今の松山の本音のようだ。

 世界の強豪30人が集まった大会で5位。そんなことより、「自分が納得できるプレーがしたい」――それが最優先なのである。

 松山の言う納得できるプレーというのは、「自分が納得できるショット、パットを打つ」ということだ。ただ、今季はそれがほとんどできなかった。ゆえに、最後まで不満な表情を見せていた。

「今季はずっとショットが悪かった。自分が納得できるショットが打てたのは1回だけで、それは(4位に終わった)全米プロ選手権。その前は、いつかわからない。優勝した(2月のウェイスト・マネジメント・)フェニックスオープンも、パットがよかったから。今週は、ショットが最後までどうにもならなかった。こんなショットじゃあ、(次戦の日本オープンも)憂鬱ですね。林から(打つことになる)ばかりですよ」

 とはいえ、今年1年の松山の成績を振り返ると、実はショットの精度の高さが際立っていた。ティーショットのスコアへの貢献度を表すストロークゲインは.527でツアー17位。ティーからグリーンまでのショット全体では1.315と、これはツアー6位という高さである。

 逆にパットの貢献度は、マイナス.025で103位。この数字を見れば、明らかにショットはいいけれども、パットが入らないという図式だ。しかしながら、松山本人の感触はまったく違って、とても不思議な回答だった。

「そんな感じはしないんですよね。パットが足を引っ張っているというのは、シーズン途中くらいだけ。スタッツ(成績)で見るほど、そんなに悪いのかなぁと思う。自分はショットのほうが足を引っ張っている感じがするんだけど......」

 おそらく、松山の中ではショットへの感触、狙ったとおりの球筋で思ったとおりのショットが打てることへの意識というか、気持ちが非常に強いのだ。そのため、たとえ結果的にショットがよくてピンに絡んだとしても、自らが思ったショットでなければ満足しない。彼の言葉を借りれば、「たまたまです」ということになる。

 では今季、上達したと思える部分はあったのか? 我々メディアが問うと、松山は「ないです。考えたこともない」と、その質問をバッサリ。

 これは、ショット不振の苛立ちからくるものではないだろうか。周囲から見れば、成長の跡は随所に見られた。最終戦でスコアを作ったのは、小技だった。特にバンカーショットが冴えて、初日、最終日はすべてバンカーから1パットで収めた。その点は、松山も満足していた。

「(ショットが)悪いなりにまとめられた。パッティングとバンカーショットがいいと、スコアがここまで伸びるのかなと思った。こうやって、拾っていけるのもありかな、とも思う。でも、(普段から)これぐらいスコアを伸ばしていかないといけない」

 松山の"小技"は、大いに評価していいと思う。調子の悪いときに、いかにスコアを作っていくかは、長いシーズンを戦ううえではとても重要なこと。この小技があったからこそ、今季の好成績につながった。それは、松山自身が一番感じているに違いない。

 今季は1勝を含めて、ベスト10位入りが8回。優勝争いに加わることは、PGAツアーでも常連となり、外国人記者に囲まれることも日常的になった。結果だけを見ている彼らは、松山の不満顔をなかなか理解できない。

 外国人記者が「ショットがいいのと、スコアがいいのとどっちがいい?」と聞くと、松山は「どっちもいいのが最高だなと思う」と言って笑う。

 そんな松山のことを、アメリカのゴルフメディアは「"ハイヤー・スタンダード(基準が高い)"なのだろう」と言う。確かにショットに苛立ちを見せる松山を見ていると、「もう少し気楽にやればいいのに......」と私も感じたことがあった。が、必死で自分のゴルフを追い続ける彼の姿を見ていると、きっと今は自分のショットを求め続ける時なのだろう、と思う。

 シーズンの最後に見えた光明と言えば、パッティングが復調したことだ。

「全米プロのショットと、今週のパットがあれば勝てるとは思う」

 それが、いつかスタンダードとなれば、もうひとつ上のレベルの"松山英樹"が誕生するかもしれない。来季に向けてそんな大きな期待を抱いた、松山のPGAツアーシーズン3年目の終わりだった。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN