錦織圭(ATPランキング5位、9月26日付け)が、日本唯一のATPワールドテニスツアー公式戦・楽天ジャパンオープンに、今年も帰ってくる。2012年、2014年に続く3回目の優勝を目指す錦織は、母国開催の大会への思いを次のように語る。

「特に最初の優勝の時は、すごく自分を成長させてくれたと感じた。精神的に、日本でやるというプレッシャーの中で打ち勝って優勝できた。地元でやれるうれしさがあったり、待ってくれていたファンがたくさんいたり、日本ならではの環境なので、自分の存在をしっかり示せるようにプレーしたい」

 夏のハードコートシーズンは超過密スケジュールだったにもかかわらず、錦織はリオ五輪で初めて銅メダルを獲得し、96年ぶりに日本男子テニス選手としてメダルを持ち帰った。さらに、夏のピークに見据えていたUS(全米)オープンではベスト4に入り、全グランドスラムを通じても2年ぶりの準決勝進出となって、トッププレーヤーとしての意地を見せた。

「欲を言えば、もうちょっと他のグランドスラムでも、ベスト4や決勝に行けるぐらい頑張りたかった。USオープンであれだけいいテニスができてベスト4まで行けたので、徐々にレベルアップはしているなと感じる」

 9月中旬の男子テニス国別対抗戦・デビスカップ終了後、つかの間の休養を取り、疲労の回復を図りながら、9月29日まではトレーニング中心のメニューで、かなり自分を追い込んで体づくりをしたという。

「疲れはどうしても溜まっていました。アメリカにいる方が気はラクですし、休まる気持ちはあったけど、日本でしっかり休養を取った。精神的にはリフレッシュできた。今週しっかり練習して、いいトレーニングもできた。必然的に体も強くなっていると思います」

 当初ジャパンオープンで、錦織にとって一番の強敵になるはずだったディフェンディングチャンピオンのスタン・ワウリンカ(3位、スイス)は、大会直前に背中のケガで急きょ出場を取りやめた。さらに、今まで錦織が一度も勝てていないファン マルチン・デルポトロ(64位、アルゼンチン)は、ワイルドカード(大会推薦枠)を受けて出場予定だったが、体調不良でキャンセルとなった。

「デルポがいないのはちょっと助かりましたけど」と錦織が思わず表情を崩す場面も見られたが、ATPツアーのグレード500の大会だけあって、ガエル・モンフィス(8位、フランス)、トーマス・ベルディヒ(9位、チェコ)、マリン・チリッチ(11位、クロアチア)、ダビド・ゴフィン(14位、ベルギー)、ニック・キリオス(15位、オーストラリア)など、今シーズン好調な選手達が東京に集う。

「やっぱり500になると、トップ10、20、30の選手ばかりなので、1回戦からタフなドローになることもあり、タフな大会には変わりない。250の大会より緊張感があって、決勝まで先を見て戦うというのはなかなか難しいので、1試合ずつ戦いたい」(錦織)

 初戦はニコラス・アルマグロ(48位、スペイン)に決まった。その後の対戦相手をランク順で想定すると、2回戦でマルティン・クリザン(33位、ロシア)、準々決勝で第5シードのゴフィン、準決勝で第4シードのチリッチと当たる。

 そして、順当にいけば、最後に錦織の前に立ちはだかるのが、2010年ジャパンオープンで準優勝したことがあり、アクロバティックなテニスで観客を魅了する第2シードのモンフィスだ。30歳になった彼は、今季ベストテニスを披露し、USオープンでは初めてベスト4に入って、今までになかった強さを発揮した。また、今季の錦織との激戦も記憶に新しい。マスターズ1000・マイアミ大会準々決勝では5回のマッチポイントを、リオ五輪準々決勝では3回のマッチポイントを握りながら錦織にひっくり返されて、いずれも敗れたが、彼の攻撃的なテニスが光った試合でもあった。有明でのプレーは3年ぶりになるが、もし錦織と再戦となれば、好試合が期待できる。
 また、16年シーズンも終盤、ATPツアー最終戦となる成績上位8人だけが出場を許されるワールドツアーファイナルズ(ロンドン開催)の出場権争いは佳境に入っている。現在錦織はその出場権を争うRace to Londonにおいて、4315ポイントで5番目の好位置につけている。すでにノバク・ジョコビッチ(1位)、アンディ・マリー(2位)、ワウリンカの3人が出場を確定させているため、残り5枠を争う。

 ジャパンオープンと翌週のマスターズ1000・上海大会で、もし錦織が好成績を収めることができれば、ツアーファイナルズの出場権を3年連続で確保できるかもしれない。

「楽天と上海をしっかり戦いたい。(その次に出場予定の)バーゼル(大会)をよくスキップしているので、そこも戦えるように体を調整しながらいきたい」

 今回のジャパンオープンではワウリンカの欠場により繰り上がって、錦織は初めて第1シードが付いた。もちろん日本男子選手としては初めての栄誉だ。グレード500の大会では3回目の第1シードで、15年アカプルコ大会では準優勝、15年バルセロナ大会では優勝を飾った。「しっかり準備はできています」と語る錦織が、トップシードとして優勝争いの中心的存在になり、そのプレーにファンの視線が釘付けとなる1週間になりそうだ。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi