亀山早苗(かめやま・さなえ)/1960年生まれ。フリーライターとして、主に女性の生き方、恋愛、結婚、性の問題に取り組む。著書多数。今年8月刊の『人はなぜ不倫をするのか』が話題に(撮影/写真部・長谷川唯)

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 今年は不倫の「当たり年」。ベッキー騒動以来、タレントや政治家らの不倫が次々に取り沙汰された。不貞行為は民法に抵触する。どうして人はそれを止められないのか。長年、不倫事情を取材しているライターの亀山早苗さんに、不倫事情に興味津々のコラムニスト・石原壮一郎さんが迫る。

──不倫が世の中から消滅することはなさそうです。自分や配偶者が当事者になる可能性も否定しきれません。大人として、転ばぬ先の杖として、不倫の実情と心得を知っておきたいところ。不倫をテーマにした本を何冊も出している亀山さんですが、不倫を勧める意図はないんですよね。

亀山:もちろんです。ただ、人にはそれぞれ事情があるので、否定や非難をする気もありません。

──今年は不倫への風当たりが強まっています。一般の人たちも「ちょっと控えようか」という雰囲気なんでしょうか。

亀山:あのたたかれっぷりを見て、あらためて「あっ、バレたらたいへんなことになるんだ」と気づいた人はいるようです。でも、とくに控えてもいないし、減ってもいないでしょうね。一般人はネットやメディアで責められるわけじゃないし。

──責めるのは、自分の妻か夫、あるいは相手側のパートナーくらいですよね。

亀山:最近よくあるのが、妻が夫の不倫相手に電話をして「ちょっとお話があるんですけど」と呼び出すケース。「裁判をしてもいいんだけど、あなたも親御さんや会社に知られたら困るでしょ」と言って慰謝料を取るんです。最初は「300万円」と高めに要求して、最終的には100万円ぐらいが相場らしいですよ。ネットの発達で、慰謝料を要求できるという知識やノウハウが広まったんでしょう。不倫をする場合も、された場合も、とにかく女が我慢しなくなったということが、最近の顕著な傾向です。

──チャンスがあれば、我慢せずに飛び込む女性が多いということですね。うーん、ケ、ケシカラン。

亀山:なんだか顔がニヤけてますよ(笑)。とくに40代の女性が、セックスレスの夫とこのまま年を重ねていくことに我慢できなくて、不倫に走るケースが多いですね。彼女たち、いや相手の男性もですけど、けっしてセックスだけが目的ではありません。手をつないで歩いたり相手のことを考えたり、そういったプラトニックな要素と、今まで知らなかった激しい性的快感がほしいという欲求の両方が詰まっているんです。

──さらに、いけないことをしているという罪悪感もセットでついてくる。

亀山:毎日たくさん、相談のメールが届くんですけど、なかには「私はこんなにいけないことをしています」「妻(夫)に非はないのに、自分はひどい人間です」といった懺悔(ざんげ)もけっこうあります。ま、ノロケですよね。

──亀山さんの最新刊『人はなぜ不倫をするのか』では、ジェンダー研究の上野千鶴子さん、脳科学の池谷裕二さんのほか、心理学、性科学、動物行動学、宗教学、昆虫学、行動遺伝学の専門家計8人に「人が不倫をする理由」を尋ねています。なぜ、こういうアプローチを試みたんですか。

亀山:「そもそも」って突然思ったんですよね。人は当然不倫をするものと考えてきたけど、ベッキー騒動のときに、ふと「あれ? どうしてするのかな」と。「そもそも」を解き明かしたかったから、動物や遺伝のほうに向かったんです。根っからの文系だから頭から湯気が出そうでしたけど、すごくおもしろかったです。

──私も読んでいて、目からうろこがたくさん落ちました。学者のみなさんに話を聞いて、不倫に対するイメージは変わりましたか。

亀山:みなさんの個人的な意見はさておき、不倫を「ありえない行動」と否定した人はひとりもいませんでした。動物としてはそれが自然で、むしろ結婚制度に無理があるのかもしれない。不倫はいけない、一生ひとりの人しか愛しちゃいけないっていう決まりを守らせようなんて不自然ですよ。

──人間も動物の一種と考えると、そうかもしれませんね。アメリカだと、ほかに好きな人ができたらすぐ離婚、みたいな傾向もあるようですが。

亀山:アメリカ人みたいに本音だけで行動するのは、日本人には向いていないんでしょうね。日本人の結婚観もヘンだと思う。とりあえず家族という形をキープしようとする。キープしつつ、生々しいことはよそでしたい。本音と建前を使い分けている。車の両輪というか、両方ないとダメという人は、増えていくんじゃないでしょうか。

週刊朝日 2016年10月7日号より抜粋