今年も「秋分」が過ぎ、いよいよ本格的な実りの秋、収穫の秋、そして食欲の秋本番となりました。まだまだ蒸し暑さは残る地域があるものの七十二候では本日から「水始涸(みず はじめてかる)」。金色に実り輝く稲穂を刈る風景があちらこちらで見られるこのごろ。つやつやの新米のおいしさに、収穫を祝う祭りに、金木犀の香りに、心ざわめく時季がやってきました。


美(うま)し国・日本。収穫の秋を迎え“新米前線”北上中!

一年を72の小さな季節に分ける暦・七十二候。本日10月3日から7日までは、その第四十八候「水始涸」となります。
「みず はじめて かる」の「涸(か)る」とは、水が尽きてなくなること。収穫時期を迎えた田んぼの水を落とし、干し、稲刈りに備える時節となったことを表します。
すでに南から日本各地の田んぼは金色に輝き、秋風に稲穂がさわさわとそよぐ実りの秋が訪れています。8月頃から九州・沖縄から始まった“新米全線”もゆっくり北上中で、刈り入れが終わった新米が店頭に並ぶようになりました。
さて、この新米。入手後は(お米は空気に触れると酸化が進むので)蓋のある容器に入れて涼しく暗い場所で保管するのがベター。研いだあとはできれば2時間ほど長めに水につけたうえ、いつもより水加減少なめに炊けば、よりいっそうおいしく新米をいただけるようです。


収穫を祝う秋祭の一つ、北野天満宮「ずいき祭」も開催中

田畑での一年間の努力が報われるこの時期は、全国各地で収穫を祝う秋祭りが行われ始めます。天照大神に新穀を捧げる伊勢神宮の「神嘗祭」。米をはじめ大豆・柿・栗などを盛り飾った百味の御食(おんじき)が捧げられる談山神社の「嘉吉祭」。日本版ハロウィンともいえる「十日夜(とおかんや)」もまた、田の神を祀る行事です。
そんな五穀豊饒に感謝する秋祭りの先陣をきるのが、京都・北野天満宮の秋季大祭「ずいき祭」でしょうか。
「ずいき」とは、里芋の葉の柄のことで、皮をむいて揚げと一緒に炊いたり、白和えなどに調理して、しゃきしゃきした食感を楽しむ食材。皮をはいで乾燥させた干ずいき「いもがら」は保存食にもなり、加藤清正が熊本城築城の際に籠城に備え、畳の床をこの「いもがら」で作ったと伝えられています。
毎年10月1日〜5日まで行われる「ずいき祭」は、菅原道真公が大宰府で彫った木像を祀り、収穫された穀物や野菜を供えて感謝を捧げたことが始まりだとか。なかでも見所なのが、屋根をずいきで葺き、色とりどりの穀類や野菜をはじめ湯葉や麩などの乾物類で作った「ずいき神輿」。4日の「還幸祭」で、このカラフルな「ずいき神輿」が巡行する様子は、秋の京都の風物詩。道中、神輿は花街・上七軒の町並みを通り、芸子さんや舞子さんらが見物に集うのだとか。平安時代から伝わる収穫の祭りの5日間は露店も連なり、夜遅くまで華やかに賑わうのです。


すっと明澄な秋の空気に、ほのかにたゆたう「金木犀」の香り

曼珠沙華が命を燃やしつくしたようにしおれてしまうと、いっそう明澄さを増した秋の大気に、すっと甘やかな香りが漂ってきます。その正体を探してあたりを見回すと、いつの間にかオレンジ色の小花を咲かせた「金木犀」の樹木が、年に一度、この時期だけの芳香を放ちたたずんでいます。
中国原産の常緑性樹木である金木犀。中国では丹桂、金桂、桂花と呼ばれ、学名は「香りのする花」という意味合いから。また、白い花を咲かせるのは「銀木犀(ぎんもくせい)」。金銀並べて庭先に仲良く植えているのもよく見られますね。
また、金木犀の花をつけ込んで熟成させたお酒が「桂花陳酒」。調味料としてお粥に入れたり、お菓子の香りづけなどに利用されているのが、花の砂糖漬け「桂花糖」。直径5ミリ程の小さな小さな金木犀の花ですが、中国ではその香りゆえ、様々に用いられています。
思い起こせば数年前、はじめて体験した懐石料理の席でふるまわれた一献に浮かべられていたのも、金木犀の花びら。ほのかな香りをまとった日本酒で始まった一夜の夢のようなおもてなしの記憶は、この花の香気を胸いっぱいに吸い込むたび鮮明に甦ります。
一雨ごとに秋から冬へ、今年も残すところ3カ月をきった「水始涸」の時節となりました。