コンビニ業界に詳しいライターの日比谷新太さんが、業界の裏事情を徹底レポートする当シリーズ。前回の廃棄弁当の話題に続いて、今回は“コンビニパンの現状”について徹底解説。一年を通じて売上が安定しているイメージがあるコンビニパンですが、実は季節によって売れ行きに大きな差があるようなんです。

コンビニパンはPB商品が主力に

コンビニエンスストアの全体売上うち、約20〜40%のシェアを握る食料品。今回はそれらのなかでも、定番中の定番ともいえるパンにクローズアップしたいと思います。

コンビニに並ぶパンですが、その品揃えはスーパーなどの他の小売店とは異なり、各チェーンが商品企画・生産を手掛けるPB(プライベートブランド)商品の構成比が高い傾向にあります。実際、某コンビニチェーンにおけるPB商品とNB(ナショナルブランド)商品との販売数構成比を調べてみたところ、約9割がPB商品となっていました。

PB商品が多く販売される理由は、ズバリ「粗利率が高い」からです。一般的なNBパンの粗利率は30%に達すれば良い方で、大半の商品が20%後半。ところがPB商品の粗利率は30〜35%程度と、かなりの差があるのです。

また、PB商品の扱いが多くなるもう一つの理由として挙げられるのが、新商品を常に投入し続けなければならないという、コンビニならではの事情があります。

皆さんもご存知の通り、コンビニは商品回転率がとても高い業態です。お菓子・飲料・おにぎりなど、新しい商品がどんどん登場し、そのいっぽうで売れない商品は、売場からすぐに消えていきます。

パンも同様で、新規商品を毎週発売することで、お客さまに飽きを与えない売場つくりを目指しています。具体的にはメロンパン、カレーパン、クリームパンといった定番商品で売上を底支えし、そこに毎週登場する新規商品を大きく拡販することで、売上全体の拡大を狙います。

ある週においては、パン全体の販売順位上位20アイテムのうち、当週と前週に発売された新規商品が7アイテムもランクインしていました。逆に、もし新規商品が販売不振であった場合は、かなりのダメージを被ります。このように、パンに関しても新規商品を絶えず投入する必要があり、それを自らのチェーンが手掛けるPB商品でまかなっているわけです。

季節によって販売数は大きく変化

最近ではパンを主食としたライフスタイルを送る方も多く、それだけにパンの売上は一年を通じて比較的安定しているのでは……そう思われている方は多いのかもしれません。

ところが実際のところ、パン売上は季節によって大きく変化します。より厳密にいうと、気温の影響を大きく受ける商品なのです。

上表は、昨年のパン平均販売数と月別平均最高気温をグラフにまとめたものです。気温が上昇する夏場に向けて販売数が下がっていき、秋・冬・春と売上が伸びていく傾向です。特に春の時季は、大きなパン売上のピークがやってくるので、新規商品の大量投入や大型のキャンペーンなど、各社ともパンの販売を強化します。

これはコンビニに限った話ではありません。パンメーカーの最有力企業である山崎製パンも、この動向を踏まえたうえで、毎年この時季に「ヤマザキ春のパン祭り」を開催しているわけです。

いっぽう夏場はパンの売上が低迷するとともに、パン内部のシェアも変化します。パンが売れない夏場でも、比較的売れ行きがいいのは惣菜パン。特に香辛料等が強めのカレーパンなどは、売上が大きく下がらないため、相対的にそれらのシェアが上がっていくのです。

 

文/日比谷 新太(ひびや・あらた)

日本のコンビニエンスストア事情に詳しいライター。お仕事の依頼はコチラ→のメールまで: u2_gnr_1025@yahoo.co.jp

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出典元:まぐまぐニュース!