本日10月2日は、「十(とお)」「二(ふ)」の語呂あわせで「豆腐の日」。1993年豆腐の更なる普及を願い、「日本豆腐協会」により制定されました。安くて栄養豊富な豆腐はまさに庶民の味方。夏の冷奴から冬の湯豆腐や鍋物、味噌汁の具から中華に韓国料理、沖縄料理、さまざまに変化しながらこれほど一年を通して食卓に登場する食材も少ないのではないでしょうか。今や豆腐は「TOFU」となって、ヘルシーな食品として世界でも大人気です。


腐ってないのになぜ豆「腐」?名前を取り違えた説はホント?

豆腐の発祥は中国といわれており、一説では前漢時代の劉安(BC179年〜BC122年)が発明した、と明の李時珍(1518年〜1593年)によって薬学書「本草綱目」に記されていますが、それを実証する証拠は見つかっていません。
日本には、奈良時代に唐から帰った学者や僧侶により伝えられたといわれています。文献にあらわれるのは平安時代の末期、春日大社の神主の日記中に「春近唐符一種」とあり、この「唐符」(とうふ)が豆腐の当て字の記載として最古のものといわれています。はっきりと「豆腐」という言葉が記されるのは鎌倉時代の日蓮の書簡中にまで時代が下ります。
ところでどうして「豆腐」は、大豆を腐らせた発酵食品ではないのに「腐」と名がついているのでしょう? そんな疑問を持つ人が多いせいか、中国から豆腐が伝わった当時、納豆もしくは味噌と豆腐とを取り違えて覚えられたのではないか、という俗説がとなえられるようになりました。本当は「豆を腐らせたもの」=豆腐が納豆、味噌、「豆を箱に納めて絞ったもの」=納豆が豆腐なのではないか、名前が入れ替わってしまったのではないか、というわけです。
しかし、中国では古代から「腐」を「組織を分解して脆くする」「食べものを細かく粥状にする」といった意味でも使っていました。本来消化がしにくい食物である大豆をひき潰し、どろどろにして作る豆腐は、まさにそれにあてはまります。たとえば魚のすり身も「魚腐」といいます。
一方、梅棹忠夫氏による説では、南北朝時代(5〜6世紀)、北方遊牧民族の乳製品であるチーズ状の保存食(カード)が中国(中原)に持ち込まれた際、不遜尊大な漢民族は野蛮な遊牧民の食物であることから意図的に卑しめて「乳腐」と名づけ、やがてその製法を大豆を用いて作るようになった際、そのまま「腐」の字を当てて「豆腐」としたのだろう、としています。
どちらの説にしても、豆腐は日本で納豆や味噌と間違われて、そう呼ばれるようになったというわけではなく、発祥地の中国でも最初から「豆腐」と呼ばれていたことに間違いないのです。
さて、そんな中国の代表的な料理といえばやはり麻婆豆腐。日本人も大好きですよね。
日本には有名中華料理店の陳健民氏が伝えたとも言われますが、中国で生まれたのは清の時代、四川省の首都、成都(三国志の「蜀」の国の首都として有名ですね)の陳興盛飯舖を営む陳森富の奥さんが作る豆腐料理が美味しいと評判になりました。奥さんにはあばた(麻点)があって陳麻婆と呼ばれて親しまれていたので陳麻婆の作る豆腐料理で陳麻婆豆腐と呼ばれるようになりました。
ちなみに本場では日本とはちがい、たっぷりの油を熱々に熱して作ります。葱ではなく葉ニンニク(青蒜・チンスァン)、豚挽き肉ではなく牛ひき肉を使い、仕上げに花椒をこれでもかとぶちこみます。食べるとぴりぴりとしびれて、これが病みつきに。ご飯にかけて食べるのが美味しい日本のマイルドな麻婆豆腐もたまりませんが、刺激的な本場の麻婆豆腐もやはり絶品。最近は日本では本場の麻婆豆腐を提供してくれる店も増えているようです。

陳麻婆豆腐店の麻婆豆腐

陳麻婆豆腐店の麻婆豆腐


東アジアの「豆腐」から世界の「TOFU」へ

1970年代、エスパーブームで日本中を熱狂させ、社会現象を巻き起こしたユリ・ゲラーも豆腐にほれ込んだ人物の一人。ネッシーなどのUMAやUFO、超能力などの超常現象を扱うオカルトドキュメンタリー番組を数多く手掛けた矢追純一氏が、若き日の無名時代のユリ・ゲラーを日本食のレストランに連れて行き、和食を初めて食べたユリ・ゲラーが特に感動したのが豆腐でした。「この白くて四角い美味しいものは何だ」と矢追氏に訊ね、「畑の肉といわれる大豆だけを原料にした豆腐というものだ。とても良質のたんぱく質を取ることができる」と教えられると大変驚き、「すごいじゃないか。こんなものがあるんなら肉はもう食べなくてもいいんじゃないか」と叫び、その瞬間からユリは一切肉食を断ちベジタリアンになってしまったのだとか(本人談)。実際、木綿豆腐一丁のタンパク質(20.4g)を他の食品で摂るとすれば豚肉のソテーなら100g以上、卵なら3〜4個、白米なら茶碗6杯分にあたります。
豆腐は、タンパク質や脂質など体の基礎的な栄養素だけではなく、健康を維持増進させるさまざまな栄養素も豊富。たとえば血圧やコレステロール値を下げるリノール酸や糖尿病の予防に役立つトリプシン阻害因子、脂肪の代謝を促すレシチン、老化防止に効果的なサポニン、腸内善玉細菌の活力源オリゴ糖などなど。
豆腐の効用が知られるにつれ、世界中でTOFUとして普及し、代表的なヘルシー食材としてもてはやされています。

ヘルシー食材の代表格

ヘルシー食材の代表格


絹・木綿・寄せ豆腐…だけではない・変幻自在の豆腐の変身

一般的には豆腐の種類といえば「木綿」と「絹ごし」。「木綿豆腐」は江戸時代から伝統的に作られている技法で、豆乳に熱いまま凝固剤(にがり)を投入して固めた後、容器の中で撹拌しながら寄せていき、固まったあとふたたびぼろぼろに崩してから型枠に入れて圧搾して固めます。この型枠に木綿の布をしいて水分を漉したので木綿豆腐。木綿豆腐の独特の食感は、この崩しと圧搾により生まれます。
では絹は漉し布が絹かというとそうではなく、絹の場合、あらかじめ凝固剤をそそいだ型枠に一気に熱い豆乳を注ぎ込み、型枠の中で凝固させます。崩しや圧搾を行なわないので、なめらかな食感となります。
日本各地には他にも、石川の堅豆腐などの堅い豆腐、木綿豆腐を作る過程で容器内で寄せて固めた時点で掬い上げてさました寄せ豆腐、若い大豆(エダマメ)を使用した緑の鮮やかな枝豆豆腐などなどさまざまな豆腐が。その上、高野(凍り)豆腐や油揚げ、がんもどき(ひょうず)、沖縄の豆腐ヨウなどの加工品を加えたら、バリエーションにも暇がありません。そんな変幻自在でどんな料理にもマッチしてしまう応用の広さが、米などの伝統的な和食材料の需要が落ち込む中、豆腐の需要は下がっていない理由かもしれませんね。
そういえば、夕方回ってくる豆腐の移動販売だけは、なつかしいラッパの音ともに今もちゃんと残っていますよね。
大島弓子の名作ネコ漫画「綿の国星」では、数箇所で豆腐屋のラッパの音が登場しますが、その擬音は「トーフィー」とかかれており、登場人物が「トーフィー? お豆腐屋さん!? 夕方?」とあわてる台詞があって、あのラッパを「トーフィー」と表現する作者のユーモアにくすっとなるシーンですが、実は実際、あのラッパは「トーフィー」と聞こえるために豆腐屋の呼び込みの音として採用されたのだそう。皆さんの地域にも豆腐屋さんは回ってきますか?

これからの季節は湯豆腐や鍋が美味しいですね

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