賢者が指南!  お悩み別「手帳上手になる3分レッスン」

手帳を使いこなせない3人のビジネスマンの「お悩み」に対し、3人の「手帳賢者」が解決策を誌上指導。これさえやれば、誰でも今すぐ「手帳上手」に。

■【ケース1】「3日坊主」で続かない

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相談者
井上陽介さん(仮名)
大手食品加工メーカーに勤める37歳。本社勤務だが、地方出張も多い。過去5回以上、有名著者による「コンセプト手帳」を購入するも、いつも3日坊主。

[お悩み]挫折してしまうのはどうして?
ビジネススキルを上げたくて、過去何度も「時間術」や「目標管理」を謳った「コンセプト手帳」を買ってきました。でも、どちらかといえば自分はものぐさな性格。「毎日手帳を見直す」「毎週目標を棚卸しする」「TO DOリストを翌週に繰り越す」など、かなり時間がかかる手帳が多く、いつも途中で面倒くさくなって、最後まで機能を使いこなせないまま終わります。これは自分のビジネスマンとしてのスキルが問題なんでしょうか。それとも、「コンセプト手帳」の選び方の問題でしょうか。

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教えてくれた先生
小宮一慶さん
コンサルタント、非常勤取締役、監査役として企業経営の助言を行うほか、講演などでビジネスマンに必要な基本スキルについて指南する。

[診断]制作者の目標達成度と手間の少なさが肝
手帳を使いこなすことでスキルアップが狙える「コンセプト手帳」は理にかなったツールです。ただし、どんなものでもいいわけではありません。特に、井上さんが言うような「時間がかかる手帳」は、あまりおすすめしません。手帳に多くの時間を取られるようでは本末転倒だからです。まずは、手帳の制作者がどれほど目標達成しているか、ビジネスマンとして尊敬できるかを見て、その中で手間の少ないものを選びましょう。時間がコントロールできる人は、目標もお金もコントロールできます。

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▼[指導1]まずは型にはめよう

「毎日○○をする」などルールの多い手帳は煩雑に見えるかもしれませんが、手帳初心者こそある程度ルールが決まった手帳を使うべき。はじめからフリースタイルだと、選択肢が多すぎて持て余してしまうからです。ゴルフのスイングと同じで、「最初は型にはまってみる」のが上達への近道。たとえば私が作った手帳には「今日の気づき」「今日の数字」という欄がありますが、1つでもニュース記事を読めばどちらもすぐに埋められます。「面倒くさい」という最初の数日の拒否反応を超えれば誰でも続けられますよ。

▼[指導2]「手間なし」が一番

毎日目標を立てたり、TO DOリストの作成が義務になっていたりすると大変ですが、どんなに忙しい人でも毎月1度であれば数分間を手帳のために使うことはできるでしょう。「散歩のついでに富士山に登った人はいない」というのが私の好きな言葉。それと同じで、「なんとなく」日々を過ごしていて「いつの間にか」大きな目標を達成することはできません。自分がどうなりたいのか、どんな人生にしたいのか、確認する意味でも月に1度程度の振り返りと目標設定をする手帳を選んではいかがでしょうか。目標さえ明確なら、何者にもなることができます。

▼[指導3]書き込みで愛着を醸成

井上さんが手帳を書き続けられないのは、もしかしたら手帳に愛着がわく前に使うことを諦めているからかもしれません。忙しい時期に手帳を買い替えているなら時期を改め、年末など、ある程度まとまった時間が取れるタイミングにしてみましょう。そして、必要なことをすべて書き込んだ状態で使いはじめてはいかがでしょうか。たとえば私の手帳には、「その年に何があったか」を書き込む過去年表があります。結婚記念日や子どもの誕生日を書き込んでいくと、自然に愛着がわいてきます。自分の「気持ち」の部分も大切にしてください。

▼[まとめ]過去を見直し未来をつくるのが手帳の役目

過去の記録とスケジュール管理、目標管理が手帳の大きな役割です。「コンセプト手帳」はそれにひと手間加えるだけで、学習習慣が身についたり、目標意識が高まったりする優れもの。「手帳も続けられない自分はダメだ」と落ち込まず、「手帳が合わなかった」くらいに考えましょう。そして、また別の手帳にトライしてください。合わなければすぐ買い替えればいいのです。井上さんが来年、一歩でも目標の方向に歩みを進められることをお祈りしています!

 

■【ケース2】字が汚くて読めない

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相談者
西川修一さん
プレジデント編集部の編集者。元探偵という意外な経歴の49歳。文字に自信がないため、パソコンの普及を心の底から喜んでいる。手帳やノートに書いた文字は、他人のみならず本人でも解読不能なことがあるのに強気を貫く。

[お悩み]走り書きが癖になり、もはや解読不能の危機!
長い記者生活で、急いで書くことが癖になってしまいました。「自分さえ読めればいい」と思っていたのですが、最近は「何が書いてあるんだ?」と悩むこともしばしば。せっかくノートを取っても、解読に時間がかかるようでは意味がありません。とはいえ、もともと文字に自信があったわけでもなく、40歳を過ぎた今では“美しい文字が書ける自分”も想像できません。あまり時間をかけずに文字を更生させる方法があれば……!!
 

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教えてくれた先生
青山浩之さん
書家。横浜国立大学教授。書写・書道教育の研究、教員育成などに取り組むかたわら、「美文字研究家」としてメディアにも多数出演する。『青山浩之 美文字の鉄則』『クセ字が直る 美文字レッスン帳』など、著書多数。

[診断]少しの心がけで文字は劇的に変わります
ノートを拝見しましたが“文字の中がつぶれている”“勝手に文字を崩している”“文字が蛇行している”と、3大悪筆要素がすべて揃っています。でも、少し意識を変えるだけで文字は劇的に読みやすくなります。取材中は難しいかもしれませんが、普段文字を書くときは手首を机の上に固定してください。指先が自由に動き、安定した字がスムーズに書けるようになります。指を曲げ伸ばししながら、グルグルと円を書く練習を!
 

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▼[指導1]ピタ・カク・ピトの法則

走り書きが癖になっている人は特に、自分流に文字を崩してしまい、「止め」や「折れ」をいい加減にしていることが多いもの。ピタ=ヨコ画の書き終わりはペン先をしっかり止める。カク=線を折る箇所は一度ペン先を止め、方向を変えてしっかり角を作る。ピト=他の線とくっつく部分はきっちりくっつける。この3点に気を付けるだけで、漢字も平仮名も落ち着いて見えるようになります。それができるようになったら、一度筆順もおさらいするといいでしょう。筆順通りに書けばペン運びが自然になり、文字の形を整えやすくなります。原則は「上から下」「左から右」です。

▼[指導2]すき間均等法

文字を構成する線と線との間にできるすき間、隣り合うすき間の大きさは、文字の印象を左右します。文字を書いたり見たりするとき、人は黒い線だけでなく、そのまわりの空間も見ているからです。隣り合うすき間の大きさのバラつきを均等にするだけで、文字はバランスよく美しく見えるようになります。西川さんのように文字の中がつぶれてしまっている人は、ぜひ「すき間」を意識してください。方眼紙を使って書くと、線の位置を確かめやすく、すき間を均等に書きやすいので、練習にも便利。普段使うノートを変えてみると、簡単に意識が変わるかもしれませんよ。

▼[指導3]中心線串刺し法

西川さんのように文字列が蛇行していると、見た人に不安定な印象を与えます。逆に、文字の外形を揃え、それらの中心線を串刺しするように並べれば、行がまっすぐ整って見えます。つまり、文字の並べ方を変えるだけで、見た目の印象が大きく変わるということです。また、西川さんは平仮名を漢字よりも大きく書く癖があるので、全体のバランスが非常に悪い状態です。子どもっぽい印象を与えるので、ビジネスの場では特にマイナスです。漢字と比べて画数の少ない平仮名は、漢字よりも一回り小さく書くよう意識すると、さらにバランスがよくなります。

▼[まとめ]文字を練習して脳内文字をリセット

「脳内文字」とは、文字を書く前に頭の中でイメージする文字のこと。教科書のお手本で文字を覚えたばかりの小学生の頃は、脳内文字も新鮮です。しかし、年齢があがるとともにわざと字を崩して個性を出したり、速く多くの文字を書くようになるため雑になったりします。こういった積み重ねで、脳内のイメージも崩れ、正しい字の形が思い出せなくなるというわけです。悪筆に悩んでいる人は、少し時間をつくって美しい文字を書く練習をし、脳内文字をリセットしましょう。

 

■【ケース3】しっくりくる手帳がない

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相談者
石原摩可さん
WEBサイトやアプリの開発を手がける「ゆめみ」に新卒で入社。現在31歳。社外打ち合わせが多く、サイト更新などの関係で深夜対応もちらほら。手帳をほぼ使わないので、妻の誕生日をアラートしてくれるSNSに日々感謝。

[お悩み]そろそろ手帳デビューしたいです
仕事の打ち合わせや納期は社内のスケジューラー、プライベートの飲み会などはSNSのイベントで管理し、それ以外はすべて記憶頼みです。手帳は毎年会社でもらっていますが、ほとんど書き込まないから持ち歩かなくなる……の繰り返し。“紙にメモをして、終わったら捨てる”スタイルが定着してしまいました。でも、最近うっかり歯医者の予約を忘れてから、記憶力が心配です。来年からは手帳でスケジュール管理したい!!

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教えてくれた先生
岩田 徹さん
東京大学大学院工学系研究科修了。A.T.カーニー、ローランド・ベルガーにてコンサルティング業務に従事。その後、ヒトの知性および創造性、組織における創造性の開発をテーマにアイディアポイントを起業し、現在に至る。

[診断]手帳を使わない人は仕事仲間として迷惑!
記憶頼みだと、自分に何かあったときにまわりに迷惑をかけることになるので、一刻も早く手帳を使う習慣づけをおすすめします。ただし、今の石原さんはまったく手帳にこだわりがなく、正直使い方もよくわかっていない状態。これでは自分に合う手帳が見つからなくても当然です。まずは「今年はどんな1年にしたいか」「どんな働き方をしたいか」を考えること。そのうえで自分に必要な手帳の機能を精査していきましょう。
 

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▼[指導1]やる気が出る手帳選びを

以下に挙げたのが、手帳を選ぶ際の基本的なポイント。たとえば打ち合わせなどのアポイントが多いなら、書き込むスペースが広い、比較的サイズの大きな手帳がいい。月をまたぐような長いスパンの仕事が多いなら、1カ月の流れと1週間の流れを両方俯瞰できたほうがいい、など仕事のスタイルに合わせて総合的に判断してください。ちなみに私は付せんや家族写真を持ち歩きたいので、ポケットが必要。余白はそこまで重視しません。最終的には、「その手帳を持っているとやる気が出る」ことが重要だと思っています。そういった意味ではデザインも大切ですよ。

【手帳を選ぶ際のポイント】
●サイズ
●縦書き/横書き
●年間/月間/週間/日
●余白の広さ
●ポケットの大きさ
●表紙(デザイン)
●その他、紙質など

▼[指導2]スケジューラーに合わせよ

社内のスケジューラーと手帳、スマホなど、複数のツールでスケジュール管理している人は、すべての時間の流れを統一するのが得策。石原さんのように社内のスケジューラーをメーンで使っているなら、そのソフトにほかのものを合わせたほうがいいでしょう。そのほうが、自分の手帳と見比べたときにも瞬時に内容を同期できるからです。私も社内のソフトに合わせて縦書きの手帳を使っています。“日曜はじまりか月曜はじまりか”というポイントも、特にこだわりがなければスケジュールソフトに合わせてしまいましょう。視覚的な“把握しやすさ”を意識してください。

▼[指導3]全機能を試してみよう

石原さんはまだ手帳初心者なので、ある程度手帳に備わった機能を“試してみる”のも大切なこと。私は20年近い手帳生活の中で自分に必要な機能をある程度把握しているつもりですが、それでも毎年手帳を買うと、一度はすべての機能を試してみます。そうすることで、改めて「TO DOリストはいらないな」「ここに余白があると便利」などと確認することができます。また、仕事のキャリアによって必要な機能もサイズも変わってくるので、あまり早いうちに「自分にはこれが一番!」と決め付けないほうがいいでしょう。

▼[まとめ]トライアンドエラーで理想の手帳生活を

「こんな1年にしたい」という視点から手帳を選んでいれば、それに対して自分の手帳のどこが使いやすく、どこが使いにくかったかがフィードバックされます。また、工夫しながら使っていくうちに、自分のスタイルも出てきます。まずは意識的に手帳を選び、翌年はそこでの気づきを反映してまた別のものを選んでみましょう。ちなみに私は毎年違う手帳を使いますが、暫定1位は「陰山手帳」です。ある程度ルールのある手帳のほうが、手帳習慣が身につくのでは?

(大高志帆=構成 岡本 凛=撮影)