香港に芽生える民主を、恐怖で摘み取ろうとする中国共産党。写真は2014年10月、香港民主運動「雨傘革命」で、民主化支持者により占拠された中心地(Studio Incendo/flickr)

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 9月4日の香港立法議会選挙を終えて、2人の政治家は記者会見を開き、選挙の前後で脅迫や尾行などの圧力を受けていたことを明かした。中国共産党は、本土と同じように、脅しにより香港政府を操作しようとしている。

 自由党の周永勤氏は、中央人民政府駐香港特別行政区連絡弁公室(中聯弁)から、今回の選挙で立候補の辞退を告げられた。また、深センで周氏本人や家族、友人の情報に詳しい「3人の北京人」から、行動を制限する圧力を受けた。これにより、周氏は投票が終わるまで香港を離れざるをえなくなった。

 無所属で“本土派”(注)の朱凱迪(エディー・チュー)氏に対しては、立候補を表明した時点で脅迫が始まった。選挙に勝利してからは、何者かから常時、尾行されるようになった。言い知れぬ恐怖を感じた朱氏は、家に帰ることもできず、毎日場所を変えて寝泊りしているという。

香港選挙にからみ「圧力がないことのほうが不自然」

 中国共産党の内情に詳しい筆者の友人によると、こうした本土からの圧力を受けないことのほうが不自然だという。政治の舞台に突然躍り出た朱氏について、党は十分な情報を得ていなかった。朱氏の生活拠点、収入源、家族構成、家族関係や社会関係など、あらゆる情報を早急に集めようとしていた。

 周永勤氏が味わった恐怖は、朱氏がこれから直面すると予想される脅しの典型だ。周氏は長年にわたり政治に携わっているため、彼に関する資料はすでに当局のコンピューターに蓄積されている。そのため、党が何らかの目的のため周氏を動かそうと思えば、そのデータベースにある情報が脅しの武器となる。

一部の人にとって、脅しは日常茶飯事

 大部分の香港人にとって、今回、周氏と朱氏が体験したことは、身の毛もよだつような恐ろしいものだと思われるかもしれないが、実は似たような事件は日々発生しており、一部の香港人にとっては日常茶飯事となっている。例えば海外で活動している人権活動家、もしくは中国本土に近しい血縁者のいる香港の民主活動家、共産党の弾圧を受ける法輪功はみな、同様の体験をしているはずだ。

 

 民主主義国家や自由な社会に生きる人々にとっては、専制国家体制、特に共産党の国家統治体制について、想像することすら難しいだろう。

 筆者は、大学を卒業したころ、同年代の若者10人と共に中国の将来について話し合うサークルを作った。11人のメンバーは、それぞれ6つの違う大学の出身だった。政府の「敏感話題」を論議するため、ある田舎の人家から離れた野外でキャンプファイヤーを囲み意見交換した。

 当時、メンバーの1人の父親は省の教育庁長だった。一週間後、この父親は、我々のような危険人物と関わることは許さないと、友人を厳しく叱責したという。この時最も恐怖を感じたのは、父親がその夜のことを事細かに把握していたことだ。

 実際には、数年前から中国共産党がこうした操作手法を、しだいに香港全土に浸透させ始めている。朱氏と全ての本土派の人々は、本土からの恐怖の本質を十分認識し、この現実を直視する心構えをする必要がある。今回の事件は、まだほんの始まりに過ぎない。

注): 「本土派」とは、香港こそ自らの祖国であり、共産党の支配する大陸は別なものだと考え、中国共産党の政策に批判的な立場をとり、香港がより多い自治権を持つべきだと主張する新しい政治勢力であり、2014年の民主化を求める大規模デモ「雨傘運動」の失敗で、反中・反政府を掲げる民主派の手ぬるい対応に失望した若年層が中核を占める。

(翻訳編集・島津彰浩)