連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第26週「花山、常子に礼を言う」第155回 9月30日(金)放送より。 
脚本:西田征史 演出:大原拓


この回ほど、宇多田ヒカルの「花束を君に」が強く響いた回もない。
花山のあとがきをもらってから2日後、常子(高畑充希)が出社すると、三枝子(奥貫薫)から電話で花山(唐沢寿明)が亡くなったことが告げられる。
「花束を君に」がかかるのはその後だ。いつも以上に厳かな気持ちになった。
宇多田ヒカルは亡き母のことをこの歌に託したようだが、1話からじつにみごとにこのドラマのラストを暗示していたことになる。

急ぎ花山家へ駆けつける常子と美子(杉咲花)。
激しい動揺を抑えて儀礼的な会話のみの常子。こんなときほかに言葉もないのはリアルといえばリアル。

2ヶ月後、「あなたの暮し」が権威ある日本出版文化賞をとり、テレビ番組に常子が出演。司会者・沢静子役は阿川佐和子。彼女も、衣裳プランの黒澤和子、語りの壇ふみと並んで偉大なる父(作家・阿川弘之)をもった独身女性。壇と阿川は未婚、黒澤は離婚経験者だ。

緊張する常子は、花山の生前の言葉に従って、彼を宿らせるように肩に手をかける。ちょっとコミカルな音楽がかかり、みるみる常子が元気な顔に。そしてなんとか番組を乗り越えた。

花山のことや雑誌の理念や戦争の記憶など、当たり障りのない言葉を選んで語る常子。花山だったらもっとゴリゴリ自論を語るだろうが、そこが常子のいいところ。庶民感覚ってやつだ。
こんなとき、常子の花山への感謝や雑誌への思い入れを、オリジナルな言葉で語らせたいのが作家心ではないかと思うが、オリジナルというものはとかく好き嫌いが分れてしまうもの。強い自己主張を抑えて極めて一般化することが西田征史の持ち味で、それもこのドラマを高視聴率に導いた理由と思う。

極めて一般化のいい例は、花山の遺体に死がまだわからないほど幼い孫が「じいじ起きて、起きて」と声をかける場面。「子どもらしさ」と「悲しさ」のイメージの最大公約数を捉えている。
また、三枝子に手渡された花山の最後の原稿のなかに常子や鞠子、美子へのメッセージや編集部員の似顔絵が描いてあるという場面では、154回で「ありがとう」と言わせるだけでは足りず、155回でも「はじめて褒めてくれた」と常子に思わせる言葉や文章でも「ありがとう」を繰り返した。ここぞというところには念を入れる。とにかく「褒める」「ありがとう」という誰も間違えて捉えることのない言葉しか使わない。サブタイトル「花山、常子に礼を言う」をでき得る限り多くの視聴者に届けたい一心なのだろうか。これも高視聴率の要因と思う。

最終回もうまくまとめてくれるはず。
あと1回!
(木俣冬)