花を買うことをとくべつなことなんて思っちゃいけない。なんでもない日にこそ買うのがいい。からりと晴れた日はもちろん、灰色の空だったり、小雨が降っていたり。そんなどんよりした天気の日にこそ、花を買いに行こう。花も私たちと同じ生き物。ちょっと部屋に飾るだけで、日が差し込むように、その場がパッと明るくなるのだ。選ぶときは直感で。「これがすてきだな。」そう思えたものが、そのとき、もっともあなたにふさわしい花だ。こんなふうに花と触れ合うことができたのなら、きっと、毎日がとくべつな日になる。

 01.
VOGEL
(フォーゲル)

看板のない、緑に縁取られた扉をどきどきしながら開けると、どこか異国のアンティークショップに入り込んだかと思った。『VOGEL』の入り口には、鳥かごがぶら下がっていて、花に負けじとカナリアが美声を響かせていた。ひととおり花を眺めてから、しゃがみこんで剪定をしている店主に話しかけると、秋アジサイを教えてくれた。アジサイは、梅雨だけのものじゃないんですね。そう言うと、秋はくすんだ色がとてもきれいなんですと教えてくれた。よく見ると、店内には、見たことのない鮮やかな色の花が並んでいた。枝を斜めに切ったら、中の白い綿も取ってくださいね。スパンスパンと、切れ味のいいハサミで枝を切り落としながら、水揚げのやり方まで教えてくれた。その日は足取り軽く、家路へと急いだ。

VOGEL
住所:東京都渋谷区代官山町7-8 ドッケン代官山ハイツ101
電話:03-3476-3302
営業時間:10:00〜19:00
不定休

 02.
THE LITTLE SHOP OF FLOWERS
(ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ)

原宿のキャットストリートは昔と変わらず洋服屋さんが軒を連ねていて、たくさんの人が行き交っていた。ふと顔を横に向けると、ウインドーいっぱいに鮮やかな花があった。引き寄せられるように店内へ入ると、洋服屋さんに併設された花屋さんで、ドライフラワーを束ねたスワッグが天井からいくつもぶら下がっていた。『THE LITTLE SHOP OF FLOWERS』の〈THE LITTLE〉には、ちょっとした気持ちやお礼という意味が込められているそうだ。たしかに、見ていているだけで、感覚が研ぎ澄まされるような珍しい質感の花々は、いつもお世話になっている人たちへプレゼントしたくなるものばかりだ。この日は雨の日だった。入り口には、黄色のルドベキアがゆれていた。

THE LITTLE SHOP OF FLOWERS / CAT STREET
住所:東京都渋谷区神宮前5-17-9 1F
電話:03-6427-6003
営業時間:11:00〜19:00
休:木曜

03.
kusakanmuri
(くさかんむり)

友人が、珈琲屋さんをオープンするという。せっかくだから、花束でも持って、オープン日に駆けつけたい。できれば、飾ったときに、場になじむものがいい。いつも自然体で、まっすぐのびやかに生きる彼女だから、華々しくなりすぎない、普段の延長線上にあって、だけれど、少しだけとくべつな。そんな花がいいと思った。恵比寿と代官山の間。とおりから少し入ったところにひっそりたたずむ『kusakanmuri』。そこには、緑と白の世界が広がっていた。どうして、ほかの色はないのだろうか。理由を尋ねれば「都会の野原」がコンセプトとのことだった。子どものころに戻って、草花を摘むように、花束を作っていただいた。あんまりにも美しいからそれだけで泣きそうになった。

kusakanmuri
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-17-2
電話:03-6415-4193
営業時間:12:00〜19:00(土・日・祝は、18:00まで)
休:火曜

 04.
edenworks bedroom
(エデンワークス・ベッドルーム)

『edenworks bedroom』に並ぶ花たちは、どれもが自由に呼吸しているように見える。店主にそれについて尋ねたとき、こんな話をしてくれた。「たとえば、花を女性にたとえると、森のなかの花は、動物や虫たちにしか見られずに散っていきます。ですが、私たちの手で都会のまんなかに運ぶと、たくさんのひとの目に触れますよね。いまはSNSが充実しているから、きっと皆さん、綺麗だね綺麗だねって写真におさめるでしょう。そんなふうにして、世界が花や緑で溢れたらどんなに素敵だろうなと思うんです。」暮らしになにかを取り入れるには、個性を生かして自由な感覚が大切であると。なるほどなあと思った。購入した花を透明の袋に入れてくれたのも、歩いているときに、空気になじむようにとの計らいからだった。店主の感性が隅々まで行き届く、すてきな場所である。

edenworks bedroom
住所:東京都渋谷区元代々木町8-8 motoyoyogi leaf 2F
営業日:土・日曜(お休みの日もあるので、事前にHPで確認してください)
営業時間:13:00〜20:00

 05.
ふたつの月

休日の商店街。夕飯の買い出しついでにぶらり散歩していたら、なにやらひとだかりができていた。のぞきこんでみると、淡い色合いがうつくしい花々が並んでいた。そのなかに、スイカのように、白い模様の入った、ちいさくてまあるい植物を見つけた。その珍しい風貌が気になって店主に尋ねてみたら、スズメウリと教えてくれた。「これ、おもしろいんですよ。見守っていてください。」試しに買って、しばらく観察していたら、7日後、真っ赤に衣替えした。『ふたつの月』は、不定期で移動花屋を開催している。冷蔵庫に足りない野菜を買い足しに行くような感覚で、旬の草花を1本から求めたい。

ふたつの月
住所:移動花屋日程はホームページのNEWSをご確認ください。
問い合わせ:futatsunotsuki.hana@gmail.com

06.
Le Vésuve
(ル・ベスベ)

骨董通りを抜け、六本木通りを挟んだ路地裏にまで足を運ぶようになったのは、それはやっぱり『Le Vésuve』があるからで、花を好きになったいちばんのきっかけになった店だからだ。すてきな店というのは、そこで扱っている花はもちろんのこと、店主やスタッフ、それを支えるお客さん、すべてで成り立っているのだと思う。ル・ベスベこそ、まさにその代名詞とも言える場所で、愛に溢れた店内には、いまもっとも美しい花がぎっしり咲き誇る。日常の花だけでなく、ブーケやアレンジメントなど、暮らしのあらゆる場面に寄り添う花を提供してくれる。

Le Vésuve
住所:東京都港区南青山7-9-3
電話番号:03-5469-5438
営業時間:11:00〜18:00
休:火曜

ル・ベスべ代表の松岡龍守さんから、花は、何気なく観察することが大切であると教えてもらったことがある。まずは家の近くを散歩して、季節の草花を楽しむこと。それから、近くの花屋さんまで、すこしだけ足を伸ばしてみる。誰かのためでもいいし、自分のためでもいい。まずは1本買ってみて、ちいさないのちと対話することが大切であると。こちらで紹介していないところでも、家の近くに花屋さんがあれば、ぜひとも足を運んでもらいたいと思う。きっとすてきな出会いがあるだろう。