「臓器の移植に関する法律」とは?

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 2010年7月に改正臓器移植法が施行され、本人の意思が不明でも、家族の承諾で臓器の提供が可能となった。臓器移植を受けて命が救われた本人や家族が、臓器提供者の家族に面会できる方法はないか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 大事な孫娘が心臓の移植手術を受け、順調に回復に向かっています。ありがたいことです。そう思えば思うほど、一言だけでも臓器提供者のご家族に感謝の気持ちを伝えたいという気持ちが募っています。先方との面会などが許されないのは承知していますが、それでも会える方法はないものでしょうか。

【回答】
 臓器移植は、脳死した人からの場合はまず、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止したかを判定(いわゆる脳死判定)し、次に遺体から臓器を摘出。そして、必要とする人に移植するものですが、この一連の流れの手続きを定めているのが「臓器の移植に関する法律」です。

 同法第10条では、脳死判定、臓器摘出、移植術などに関与する医師に、こうした作業の記録を残すことを義務付けています。例えば臓器摘出をした医師は、摘出を受けた人の住所氏名、性別、生年月日など、その人の特定ができる情報を記録し、5年間保存されます。また、一定の条件下で記録の閲覧についても規定しています。

 移植手術を受けた側は、移植術をした医師の記録を、正当な拒否理由がない限り、閲覧できることになっています。しかし、移植術をした医師が記録する事項の中に臓器提供者の氏名等はありませんから、提供者を知ることはできません。その決まり以外に厚労大臣の許可を受けて、摘出臓器を必要としている患者を探し、その間を取り持つ非営利のあっせん機関は、臓器提供者を知っています。

 ただし、臓器移植法により、職務上知りえた人の秘密を正当な理由なく漏らしてはならないと守秘義務を負っています。違反すると50万円以下の罰金の刑事罰を受けます。臓器提供者側のプライバシー保護の必要がありますから、臓器提供を受けた側が感謝の念を伝えたいというだけでは、秘密を話す正当な理由にはなりません。

 もちろん、臓器提供者サイドが積極的に公表することは可能です。その場合、提供を受けた人があなたのように感謝のみであればともかく、提供者が特定され、その死によって救われたことで負担に感じる人もいます。難しい問題ですが現在の制度では、あなたの希望はかなえられません。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年10月7日号