専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第73回

 ゴルフコースに行くと、人がボールを打った跡、すなわちディボット跡が無数にありますよね。あれは、アマチュアレベルで言うと、ターフを取った跡ではなく、ダフリの跡が多いんですけど......。まあ、どっちでもいいのですが、その部分は見事に芝生がはぎ取られ、地面が露出しています。そんなディボット跡にボールが入ってしまうと、実に難儀。精神的に参ってしまいます。

 これは、ディボット跡から打つのが下手だから「苦手」と言っているわけではありません。あまり飛びませんが、そこそこ叩かない程度に、ディボット跡からでも打てています。

 ここで疑問視しているのは、芝生のメンテナンス&保護の問題です。

 ディボット跡は、コースの"擦り傷"みたいなものです。砂をかけて目土(めつち)をすれば、数カ月先には芝が生えてきます。ゴルフとは、そういうものです。

 でも、人間の体に例えると、ディボット跡から打つのは、「転んで擦りむいた傷口に塩を擦り込む」ようなもの。なにも、傷つけられて養成中の芝生の上で、さらにボールを打つ必要があるのか、疑問です。

 もちろん、通常のラウンドではそんなことを考えることもなく、ディボット跡からバカスカ打っていますけど。ただ気になるのは、微妙なレイアウトのコースで、ディボット跡が集中している場合です。池の手前とか、ドッグレッグの曲がり角とか、ですね。

 特に多く見受けられるのは、グリーンまで残り160ヤード程度の池の手前です。乗せごろ、外しごろの距離で、みなさん果敢に挑戦したり、池の手前に刻んだりして、同じ場所から打つことが多いからでしょう。結果、そういうところはディボット跡密集地帯となって、いつまでも経ってもフェアウェーがきれいにならず、ハゲ山状態が続いています。

 このディボット跡"無間地獄"は、コース側、プレーヤー側にとっても、あまりよろしくない状態だと思います。「ありのままに打つ」のがルールとはいえ、ディボット跡の面積が芝生の面積を上回るって、ちょっと考えられません。

 この問題をどう処理するか。

 答えは簡単です。一時的にローカルルールで「スルーザグリーン、オール6インチ、リプレース」を適用するのです。さすれば、ディボットに入ったボールは、それを避けて打てるわけです。それでも治らない場合は、ローカルルールでそのディボット跡の多い箇所だけドロップエリアをこしらえて、そこから打つことにすればいいのです。

 一般的にディボット跡は、暑い季節なら芝がすぐに生えると言いますが、毎日誰かがディボット跡をこしらえているので、もはやイタチごっこです。しかも、ディボット跡をこしらえる人に限って、目土をおこたりがちです。自分もたまに目土を忘れることがありますから、人に注意するほど、品行方正ではありませんが......。

 あるゴルフ場では、暇なときにキャディーさんが総出で目土をするそうです。その頼みの綱のキャディーさんも、最近は数が減少中。そういうときは、シルバー人材センターから、時給500円ほどで目土のバイトを頼む場合があるそうです。目土をするのと、しないのとでは、芝生の戻りのスピードが全然違うらしいですから。

 というわけで、個人的にはディボット跡の上からは、あまり打ちたくないのです。昔の漫画で、ボールに蟻がまとわりついて、それを避けようとしたら、「ペナルティーを取られるぞ」と指摘され、泣く泣く蟻ごとボールを打った、なんてシーンがありました。それに近い感覚でしょうか。「今、痛んだ芝を養生しているの。そっとしてね」と訴えてきている芝生を、バシーンと打つわけですから。気持ちのいいもんじゃないです。

 また、以下のような、別の考え方もあります。

 かつて、長期取材でプロコーチに教わったときがありました。研修会ではプロ候補と何回もラウンドしました。その中には、のちに有名になった選手もいます。その研修会で、ディボット跡にボールが入ったら、コーチはボールを拾って、「芝生に置いて打て」というのです。

 理由を聞いたら、「フェアウェーから打っても、ろくなショットができないのに、ディボット跡から打つなんて、スイングが乱れるだけだ」というのです。

 そのコーチは元野球関係者ゆえ、"悪球打ち"に例えて説明してくれました。「野球なら、まずは直球のストライクを打たないと。悪球ばかり打っているとフォームが乱れるんだよ。そういうことは、もっとうまくなってからやりなさい」と。

 なるほど、一理あるな、と思いました。さまざまな意見がありますが、ビギナーが打つときは、ディボット跡を避けて打たせたほうがよさそうですね。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa