夏場のキャンペーン効果で客足も戻りつつあるマクドナルド

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 期限切れの鶏肉を「チキンナゲット」に使用していた問題や、「フライドポテト」への異物混入問題などから客離れを招き、2015年12月期連結営業損益で過去最大となる234億円の赤字を出すまで業績が落ち込んでいたマクドナルド(日本マクドナルドホールディングス)。しかし、今年に入り、ようやく復活の兆しを見せている。

 同社が9月6日に発表した8月の月次業績によれば、〈既存店売上高〉は前年同月比15.9%増、〈客数〉7.5%増、〈客単価〉7.9%増と、今年の1月以降8か月連続で3つの指標すべてが前年を上回った。そうした顕著な回復傾向から、今期は33億円の営業黒字を見込んでいる。

「まだ完全に元気を取り戻したとは言い難いが、お客様目線での地道な商品施策や店舗づくりをしてきたことが信頼回復に繋がったと思う」

 9月上旬、外食企業の業界団体の会合に姿を見せた同社の某役員は、こう言って安堵の表情を浮かべた。フードコンサルタントで「バーガー研究家」の肩書きを持つ白根智彦氏は、夏場以降にマックが見せている“怒涛の攻め”を評価する。

「7月よりスマホ向けゲーム『ポケモンGO』とコラボしたり、8月のオリンピック期間中に単価の高い『必勝バーガー』を出したりと、立て続けに話題を集めた結果が業績回復に寄与しているのでしょう。

 9月に入ってからも、『ビッグマック』などのハンバーガーとドリンク類で400円という新たな昼のバリューセットを設定。10月には日本進出45周年キャンペーンとして、『テキサスバーガー』など過去に人気の高かった4商品を限定復活させることを発表しています。

 こうした次々と繰り出すキャンペーン効果でブランドイメージも回復しているのか、店から足が遠のいていた若者や子連れのファミリー層などが徐々に戻ってきている印象を受けます」(白根氏)

 その一方で、定番メニューのブラッシュアップや、顧客ニーズに合わせた息の長い新商品開発を行わない限り真のV字回復は望めないと指摘する声も根強い。経済誌『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏がいう。

「マックが低迷している間に、モスバーガーやフレッシュネスバーガーなど日本発のバーガーチェーンはあらゆる世代に受け入れられる高品質なメニューを数多く開発していますし、シェイクシャックをはじめ海外で人気の“グルメバーガー”も続々と日本進出を果たしています。

 そんなライバルひしめく状況下で、マックもいつまでもアメリカ本部の“出先機関”として、定番メニューや過去に売り出した商品だけを扱っていては消費者に飽きられます。少子高齢化がますます進む日本において、今後は高齢者の味覚に合ったオリジナルメニューを開発するなど、新たな展開を模索しなければ厳しいでしょう」

 米国主導からの脱却という点では、転機となり得る可能性はある。昨年12月、日本マクドナルドホールディングスの筆頭株主である米マクドナルドが持ち株の売却を検討していると報じられたからだ。売却比率は33%分に及び、1000億円規模になるとの観測まで出た。

 ところが、それから10か月が経とうとしている現在まで、売却先は決まっていない。当初は国内外の投資ファンドや大手商社の名も取りざたされていたが、どこまで交渉が進んでいるかも不明なままだ。前出の日本マクドナルド役員でさえ「米国本社には守秘義務があり、われわれ日本の役員にも一切報告はない」と話す。

 市場関係者からはこんな噂話が聞こえてくる。

「マックの株価は個人投資家が下支えしているので、業績が良くても悪くても高値圏のまま。そのうえ米本社が提示している額が強気で、なかなか交渉が成立しない。

 ただ、いくら収益が落ち込み不採算店を閉鎖しているとはいえ、日本のマックはまだ3000店を有する巨大チェーン。振るわない資源分野より食料事業を強化したい商社にとっても、まだ資本参加を諦めたわけではないだろう」

 当然、米本社の占有比率が下がれば、日本独自のオリジナルメニューを提供できる裁量も増すことになる。いずれにせよ、マックが完全復活を遂げるためには、“マッククオリティ”のさらなる向上が不可欠だ。