【日本代表レポート】メディアとのハネムーンが終わったハリルホジッチ監督

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ハリルホジッチ監督の表情がサッと変わった。「(監督が言っていることは)言い訳にしか聞こえない。それをどう打開してくれるかを言ってほしい」という記者の質問に、記者会見場に緊張が走る。固い表情のまま、監督は答え続けた。「その意見は尊重しますけど、その意見を言う能力があなたにあるのか」「フットボールの知識をしっかり身につけてほしい」という挑発的な言葉を挟みつつ、自分が就任して以来「新しいことがたくさん見られた」と自己評価した。

メディアが厳しい意見をぶつけるようになったきっかけが9月のUAE戦であったことは間違いない。ホームでの大事な初戦に敗れ、記者会見では「責任はすべて代表監督にある」と言いつつも、その前に「なぜこの選手を選んでしまったのか、自分でも疑問に思っている。しかし、他に良い選手がいなかったのが理由」と受け答えし、まるで他人事のように聞こえたというのもあるだろう。先発メンバーに代表初出場となる大島僚太を選んだり、交代策が実らなかったというのも監督への不信感を募らせたのではないか。

もっとも、それ以前にも火種はあった。ハリルホジッチ監督は就任以降、選手とメディアとの接触を制限。試合前日の選手への記者の質問を1問に制限したり、あるいはスタッフが話している選手を急かしに来たりという場面もあった。また、試合から試合までの間にメディアが1人の選手と話せるのは1回だけ。1日数人ずつがミックスゾーンに現れ、大勢の人間が囲むので他社との差別化を図ることもままならない。UAE戦で負けたことで、そこまでの不満が噴出し始めたとも言えるだろう。

「言い訳に聞こえる」という質問の後に、ハリルホジッチ監督は一度穏やかになったように見えた。そしていつもユーモアたっぷりの質問をする記者が手を上げると、うれしそうに記者のほうを見やった。だが、その記者の質問も、もしイラク戦、オーストラリア戦で負けた場合「けじめをとってくれるのか」というものだった。

笑顔だった監督は、通訳の言葉を聞いて表情が固まった。そして「笑えない質問もありましたね」と話し始める。この時点でハリルホジッチ監督は、もうメディアとは対立関係になっていることがハッキリとわかったことだろう。メディアはこれから先、監督が少しでも隙を見せると「辞めろ」と声を大にして言うだろう。「次に期待しよう」と言えるほどの余裕はもうないのだ。それほど今回の予選は厳しく、そして難しいという認識が広まっている。この日、2人の記者が投げかけた質問は、その認識の象徴と言えるだろう。

だが、これは監督が選手に求めている「競争」と同じではないか。選手に対して監督が厳しく要求するのと同じことが、メディアから監督に求められるのだ。これを乗り切れば、さらに強くなると信じるしかないかもしれない。幸いなことに、この会見は途中で質問が打ちきられなかった。このまま「すべて説明する」という姿勢を貫いてくれれば、まだ最悪の関係にはならないことだろう。

【日本蹴球合同会社/森雅史】