米国ワイオミング州のジャクソンホールで行なわれた毎年恒例の年次シンポジウム。今年は、黒田日銀総裁が日本の金融緩和について講演しました。一方、同じく金融緩和の真っただ中にあるECBからは、金融緩和の悪影響に言及するコメントが飛び出したのです。

今月の知りたがりテーマ●金融緩和に限界はあるのか?

8月 27 日、米国のジャクソンホールで各国中央銀行メンバーが集まり、講演や討論会が行なわれました。そこでは、FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長の発言はもちろんですが、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の発言にも各国の注目が集まりました。

そこで黒田氏は、「マイナス金利引き下げの限界までにはかなりの距離がある」と述べたのです。そして、必要に応じてマイナス金利を深掘りする考えを示唆しました。日銀がマイナス金利幅をさらに拡大すると考えているマーケット関係者は少なかったので、意外感があったようです。

こうした発言の裏側で、ECB(欧州中央銀行)のクーレ理事は、日銀とは異なったスタンスを明らかにし、マーケット関係者の間でちょっとした話題となりました。

クーレ理事は、黒田総裁と違ってマイナス金利政策に限界が近づいていることを強調したのです。もうひとつは、中央銀行が国債を買い続ける量的緩和策によって、潜在的な経済成長率と連動するといわれる自然利子率が低下する副作用を訴えました。

つまり、量的緩和を続けることは、国のお金の巡りを滞らせて、景気に悪影響を及ぼしかねないと訴えたのです。

クーレ理事のこの発言と画像は、当日のECBサイトのトップに大きく強調するかのように出ていました。これだけ強調しているところをみると、ECBは現在続けている金融緩和の方向性を大きく変更する可能性があります。そうなると、ユーロ/円相場も大きく動くかもしれません。

中央銀行のコメントとしては、総裁や議長の記者会見ばかりに目が向かいがちです。しかし、サイトも立派なひとつのコミュニケーションツール。何を前面に出しているかを見るのは、相場予測においてとても重要です。英語は苦手と諦めず、一度、各国の中央銀行サイトを観察してみてはいかがでしょうか。

Masumi Sai 崔 真淑
Good News and Companies代表
神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。現在は、日経CNBC経済解説部のコメンテーターとしても活躍している。