連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第26週「花山、常子に礼を言う」第153回 9月28日(水)放送より。 
脚本:西田征史 演出:大原拓


「その戦争は昭和十六年に始まり 昭和二十年に終わりました。
それは言語に絶する暮しでした。
あの忌まわしくて虚しかった 戦争の頃の『暮し』の記録を私たちは残したいのです。
あの頃まだ生まれていなかった人たちに戦争を知ってもらいたくて
貧しい一冊を残したいのです。
もう二度と戦争をしない世の中にしていくために
もう二度とだまされないように。
ペンをとり 私たちの元へ お届けください。」

花山(唐沢寿明)が病をおして、このように原稿募集文を書いた。
文章はモチーフになった「戦争中の暮しの記録」の53ページの「この日の後に生まれてくる人に」というタイトルのついた文章からアレンジしてあるようだ。そちらの署名は「編集者」となっている。
モチーフの本では「貧しい一冊」のところは、
「しかし、君がなんとおもうおうと、これが戦争なのだ。それを君に知ってもらいたくて、この貧しい一冊を、のこしてゆく。」
となっている。

戦争中、戦後すぐの筆舌に尽くせぬ庶民の貧しい暮しをつぶさに記録した一冊ということだろう。これまでの「暮しの手帖」(あなたの暮し)は、その貧しさに抗って豊かな暮しを求めた雑誌だった。それとはまったく逆なアプローチで、どストレートに「貧しい」と表現しているところに、作り手の戦争への強い思いが感じられる。

この体験談を募集した31号と、たくさんの投稿によって一冊まるごと戦争中の暮しの特集をした32号は共に表紙に「2世紀」の文字がある。
「2世紀」とは何なのか?
その答えはモチーフになった「暮しの手帖」にあった。

編集長の花森安治(言うまでもないが花山のモチーフになった人物)は、雑誌は100号で区切りをつけると考えていた。とはいえ100号で休刊するわけではなく、それまでを「1世紀」とし、101号めから「2世紀」とした。「とと姉ちゃん」の「あなたの暮し」もそれにならって30号で1世紀を終えたということだろう。「暮しの手帖」ファンを中心に、わかるひとだけわかる小ネタである。


もうひとつ小ネタ。
常子(高畑充希)の采配によって自宅勤務も可能になったらしい社員・寿美子役の趣里が、水谷豊と伊藤蘭のサラブレットだということは以前書いた。お母さん似の若干憂い顔でおっとりした見た目と、ゆっくり口調の重ね技で清楚さ倍増。たいへん好印象な彼女だが、主役を演じている「おとぎ話みたい」という短編映画(15年/山戸結希監督)では、猛然と早口で長いモノローグを語りまくるは、軽やかに踊りまくるは(一部振り付けもしている)、寿美子とはまるで違う快活さを発揮している。童顔だから、まだまだ朝ドラヒロインもやれそうな気がしないでもない。

さて、「あなたの暮し」は花山の渾身の企画(戦争中の暮し特集)によって発行部数が100万部を超えた。
あと3回!
(木俣冬)